健保ニュース
健保ニュース 2025年10月下旬号
日本健康会議 宣言の達成状況
健康経営企業は13万社超に
健康づくり推進組合の認定制度新設
日本健康会議が14日、東京都内で開かれ、「健康づくりに取り組む5つの実行宣言2025」の達成状況を報告した。宣言3の「保険者とともに健康経営に取り組む企業等を15万社以上とする」については、大規模法人3400社、中小規模法人12万9189社の計13万2589社が該当し、達成率は88.4%だった。また、今年度から予防・健康づくりに関する指標の上位100組合を「予防・健康づくり推進優良組合」として厚生労働大臣が認定・表彰する仕組みが新たに設けられた。日本健康会議当日は上位15組合が招待され、健保組合は単一と総合それぞれ5組合が表彰された。
日本健康会議は保険者や経済界、医療界などが健康寿命の延伸と医療費の適正化を目的とした民間主導の活動体で、2015年に発足。この日報告された宣言は、21年に第2期の宣言として採択されたものになる。
小林健共同代表(日本商工会議所会頭)は冒頭のあいさつで、宣言ごとに達成率の高低が明確になっているため、「引き続き改善や課題解決に取り組む必要がある」と指摘するとともに、「少子高齢化と人口減少の中、社会保障制度の持続可能性を確保するためには一人ひとりの健康寿命の延伸にこれまで以上に取り組まなければならない」と述べた。
また、健康スコアリングレポートや健康経営優良法人などのコラボヘルスに関する日本健康会議の取り組みに触れ、「人手不足が深刻化する中、健康経営を通じた働きやすい環境整備は人材確保や定着に不可欠だ」とし、「日本健康会議は、車の両輪として取り組みを一層強化していく」と強調した。
宣言の達成状況は、全保険者を対象に今年8、9月に実施した「2025年度 保険者データヘルス全数調査」に基づき報告した。
宣言1「地域づくり・まちづくりを通じて、生活していく中で健康でいられる環境整備に取り組む自治体を1500市町村以上とする」は、249市町村が該当(達成率16.6%)。前年から20市町村、1.7ポイント増えたが依然として低迷している。
宣言2「47都道府県全てにおいて、保険者協議会を通じて、加入者および医療者と一緒に予防・健康づくりの活動に取り組む」は、5都道府県にとどまり(同10.6%)、1都道府県、2.2ポイント減。21年以降で初めて前年から減少した。
宣言3の健康経営企業は、大規模法人が412社、中小規模法人が1万1434社それぞれ増え、計1万1846社、7.9ポイント増となった。22、23年の過年度分の調査で、中小規模法人数に集計上の誤りが判明したため、訂正数値を基に、これまでの伸び率などを勘案し達成目標を24年から15万社に修正している。
宣言4「加入者や企業への予防・健康づくりや健康保険の大切さについて学ぶ場の提供、および上手な医療のかかり方を広める活動に取り組む、保険者を2000保険者以上とする」では、427保険者が該当(同21.4%)した。23保険者、1.2ポイント増えたが、目標値には遠く及んでいない。
宣言5「感染症の不安と共存する社会において、デジタル技術を活用した生涯を通じた新しい予防・健康づくりに取り組む保険者を2500保険者以上、医療機関・薬局を20万施設以上とする」については、123保険者(同4.9%)、21万2992医療機関・薬局(同106.5%)となった。保険者は103保険者、4.1ポイント、医療機関・薬局は3125施設、1.6ポイント増でいずれも増加している。医療機関・薬局が目標値を上回る一方で、保険者は1割にも満たない状態だ。
渡辺俊介・日本健康会議事務局長は宣言1、2、4が低迷している要因を「達成要件が不明瞭だった」と説明。宣言5の保険者の達成率の低さについて、マイナ保険証をはじめとするデジタルの活用には国民の意識改革が必要だとした。
その上で、「次回の宣言ではより具体的に取り組む必要があり、宣言のあり方も含めて検討していく」と話した。
来賓としてあいさつした福岡厚生労働相は、「高齢者人口がピークを迎える2040年ごろを見据え、健康寿命を延伸し、活力ある社会を作るための取り組みをしっかり進めていく必要がある」とし、「各界が連携して推進した成果を多くの関係者が共有することで、予防・健康づくりの機運が一層高まっていくことを期待する」と述べた。
また、今年度から創設された表彰制度について、「予防・健康づくりに取り組む保険者にとってインセンティブとなってほしい」と期待を寄せた。
古賀友一郎経済産業副大臣は健康経営優良法人認定制度が従業員だけでなく、その家族を含めてヘルスリテラシーを向上させ、国民全体の健康寿命の延伸につながる取り組みとなるよう一層の普及促進を図るとした。
加藤財務相は5つの宣言達成への「ラストスパート」を要望するとともに、次回以降の日本健康会議の活動展開について、保険者や各界が一致団結して取り組んでほしいと期待した。
予防・健康づくり推進
上位の10健保組合を表彰
厚労省は同日の日本健康会議で、加入者の健康課題に応じた保健事業に取り組み、予防・健康づくりの功績が顕著な健保組合などを「予防・健康づくり推進優良組合」として認定する制度の創設を発表するとともに、上位15組合(保険者種別単一・総合・共済ごとに上位5組合)を表彰した。
単一健保組合は▽山形銀行▽北國FHD▽明治安田生命▽KOA▽トクヤマ──、総合健保組合は▽しんくみ東海北陸▽愛知県信用金庫▽トヨタ関連部品▽三重県農協▽愛鉄連──が表彰された。
表彰後に総評した厚労省の江浪武志審議官(医療介護連携、データヘルス改革担当)は、保険者の予防・健康づくりの精力的な取り組みに謝意を示した上で、「認定制度が保険者のブランドになり、保険者にとって誇りとなるよう今後一層発展させていく」と述べた。