健保ニュース
健保ニュース 2025年10月中旬号
地域医療構想WGが初会合
厚労省 小児・周産期提供体制の論点提示
年度内に取りまとめ
厚生労働省は1日の小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ(WG、座長・田辺国昭東京大大学院教授)の初会合で、少子化などの社会環境の変化に合わせ、地域で必要な小児、周産期医療を確保するための論点を提示した。令和12年度からの第9次医療計画への反映に向け、今年度末をめどに一定の取りまとめを目指す。
WGは医療計画における小児、周産期医療提供体制確保に向けて専門的に議論することを目的に、「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」の下に設置された。
初会合では厚労省がそれぞれの提供体制の現状を説明し、論点を示した。
小児医療の現状と課題には、小児科を標榜する病院の減少や医療資源の地域差、小児入院患者の減少の一方、外来医療のニーズが高いことなどを挙げた
これを踏まえ、論点として小児1次医療を安心して受診できる環境を整備するため、内科医との連携や小児科診療所が少ない地域での病院小児科の一般診療への参画、オンライン診療などを組み合わせた医療提供体制維持の検討を掲げた。
また、地域の実情に応じた小児医療機関の役割分担と連携を推進するため、具体的な施設のあり方の見直しも提案した。
周産期医療については、ハイリスク妊産婦に対応するための周産期母子医療センターを基幹とした集約化と、妊婦健診や産後ケアを担う施設の役割分担の推進などに取り組んでいるが、出生数の減少に伴う分娩施設の減少が安全な提供体制に影響を及ぼす可能性があると指摘した。
また、安全な無痛分娩実施のための医療従事者らの連携体制の充実も重要だとした。
これを踏まえ、論点としてハイリスク以外の妊産婦も含めた周産期医療圏の柔軟な設定と、医療資源の集約、施設間の役割分担などを提起した。
小児と周産期いずれの論点にも構成員から異論はなかった。
健保連の伊藤悦郎常務理事は小児医療について、かかりつけ医機能報告制度により小児領域を担う医療機関や時間外診療の実態が来年度にはわかるようになるとして、「データを参考に、地域の実情に応じて検討すべきではないか」と述べた。
周産期医療に関しては、妊産婦が安心して出産できるよう、「医療資源を集約し、拠点病院の分娩体制や地域周産期母子医療センターの機能を強化しながら、地域で機能に応じた役割分担と連携を進めることが必要だ」と主張した。
今村知明構成員(奈良県立医科大教授)は出産数が減少する中での小児、周産期医療提供体制の検討を「撤退戦」と表現し、いかに混乱なく撤退(集約)するかが課題だとした。
その上で、「施策を打つタイミングが遅れると、先に(経営難で)医療機関が閉院に追い込まれる恐れがあり、急を要する事態だ」と指摘した。
佐藤好範構成員(日本小児科医会副会長)は小児疾患の特性を踏まえた検討を求めた。
また、打撲や捻挫など外傷の多さを踏まえ、小児医療提供体制の検討には「外因性の症状に対応できる医療機関との連携を考慮する必要がある」と述べた。
周産期ロードマップを作成
高知県などの取り組み聴取
この日の会合では、周産期医療関係者の地域での取り組みをヒアリングした。
宮地洋雄参考人(高知県健康政策部医療政策課企画監)は、県内の産婦人科医の減少を受け、将来を見据えた周産期医療体制を議論する検討会を設置し、ロードマップを作成して体制整備に取り組んでいることを説明した。
三浦清徳構成員(日本産科婦人科学会常務理事・長崎大教授)は長崎県内で分娩を停止した離島の周産期医療体制構築の事例を報告した。
アクセスに不便が生じても、周産期医療圏での分娩施設の集約、重点化は避けられないとして、学会や行政、住民などの関係者が一体となって取り組む必要があると指摘した。