健保ニュース
健保ニュース 2025年10月中旬号
医療保険制度改革の議論
厚労省が4つの視点
全世代型社保構築の推進など
社会保障審議会医療保険部会(部会長・田辺国昭東京大大学院教授)は2日、医療保険制度改革に関する今後の議論の進め方を確認した。厚生労働省は前回、前々回会合での意見を踏まえ、改革に向けた共通認識をまとめた上で、「全世代型社会保障の構築を一層進める」など4つの視点に立って議論することを提案し、了承された。
次回以降、個別の議論に入る見通し。個別の項目は現時点で未定だが、政府が6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に盛り込まれた検討事項などが想定される。
厚労省がこの日示した資料では、国民皆保険の実現による世界最高水準の平均寿命や高い保健医療水準といった成果を次世代に引き継ぐために、中長期的な視点で目指すべき方向性を踏まえた上で、社会経済の変化に応じた改革の積み重ねが必要だと指摘。特に、物価や賃金の上昇、医療需要の変化や人材確保、現役世代の負担の抑制努力の必要性などを踏まえた対応を喫緊の課題と位置づけた。
その上で、制度の見直しにあたっては、応能負担による所得再分配機能の強化や予防・健康づくりのさらなる後押し、セーフティーネット機能の確保、医療DXの推進など医療提供の効率化、社会保険の原理・原則を含め、制度をわかりやすく説明し、幅広い世代の納得感と制度の持続可能性を高める必要があるとした。
こうした共通認識に基づき、厚労省は議論に必要な視点として①世代内、世代間の公平をより確保し、全世代型社会保障の構築を一層進める②高度な医療を取り入れつつセーフティーネット機能を確保し、命を守る仕組みを持続可能とする③現役世代からの予防・健康づくりや出産などの次世代支援を進める④患者にとって必要な医療を提供しつつ、より効率的な給付とする──の4つを掲げた。
健保連の佐野雅宏会長代理は意見交換で、「全世代型社会保障の構築と現役世代の負担軽減は極めて重要なキーワードだ」と強調した上で、「4つの視点は検討課題などが網羅されており、異論はないが、具体的な項目、内容の検討を進めることが重要であり、4つの視点を踏まえた丁寧な議論をお願いしたい」と述べた。
前葉泰幸委員(全国市長会相談役、津市長)は国保の財政基盤の構造的な脆弱性に言及し、「(3つ目の視点に盛り込まれた)次世代支援の観点から、公費拡充を含め、国保の被保険者の負担軽減策を検討してほしい」と求めた。
村上陽子委員(連合副事務局長)の代理として出席した平山参考人は、具体的な論点を早期に提示するよう求めた上で、「社会保険の原理原則を尊重しながら、高齢者医療制度の抜本改革を含めて検討すべきだ」と強調した。
横本美津子委員(経団連社会保障委員会医療・介護改革部会長)の代理で出席した井上参考人は「人口構造の変化などを踏まえると、現役世代の負担抑制は極めて重要な課題だ」とし、「幅広い世代の納得感を得るためには、具体的な数値や選択肢を示しながら改革の必要性を説明すべきだ」と主張した。
中村さやか委員(上智大教授)は無価値・低価値医療について、費用対効果以前の問題として捉えるべきだとし、「優先順位としては無価値・低価値医療の見直しが一番最初であり、費用対効果が低いものを保険から外すのはその次の手になる」と述べた。