HOME > けんぽれんの刊行物 > 健保ニュース > 健保ニュース 2025年8月下旬号

健保ニュース

健保ニュース 2025年8月下旬号

社人研・5年度社会保障費用統計
2年連続減少 給付費総額135兆円
コロナ対策費減が影響

国立社会保障・人口問題研究所(林玲子所長)は7月29日、令和5年度の社会保障費用統計を発表した。医療や年金、介護、福祉などの給付費を合わせた社会保障給付費の総額は135兆4928億円で、前年度に比べ1.9%減少した。統計開始以降、増加の一途をたどっていたが、初めて前年度を下回った4年度に続き、2年連続の減少となった。

社人研は、5年5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類に移行し、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)など対策にかかる費用が大幅に減ったことが総額の減少要因とみている。

社会保障費用統計は年金や医療保険、介護保険、雇用保険、生活保護、子育て支援など社会保障制度に関するその年度の収支(決算値)を、国際基準に則って集計したもの。

経済協力開発機構(OECD)基準による「社会支出」や、国際労働機関(ILO)基準による「社会保障給付費」と「社会保障財源」、欧州連合(EU)基準による「社会保障財源」を取りまとめている。


〔社会保障給付費〕

社会保障給付費を部門別にみると、「年金」が56兆3936億円(前年度比1.1%増)で最も高く、次いで「医療」が45兆5799億円(同6.5%減)、「福祉その他」が33兆5192億円(同0.3ポイント減)だった。福祉その他のうち、「介護対策」は11兆5915億円で、2.7%増加した。

医療については、新型コロナウイルス感染症対策に関する費用の大幅減で減ったものの、公的医療保険給付は増加した。

国内総生産(GDP)に占める社会保障給付費総額の割合は22.76%で、1.59ポイント減少した。医療は7.66%、年金は9.47%、福祉その他は5.63%、介護対策(再掲)は1.95%だった。

1人あたり社会保障給付費は108万9600円で、1.5%減だった。


〔社会保障財源〕

社会保障財源の総額は198兆77億円で、前年度から29.3%増加した。
 項目別にみると、社会保険料が80兆1101億円(前年度比3.7%増)、公費負担が57兆9681億円(同9.9%減)、資産収入が53兆6509億円(同827.9%増)、その他が6兆2787億円(同10.1%増)だった。

社会保険料の内訳は、被保険者拠出が42兆225億円(同3.3%増)、事業主拠出が38兆876億円(同4.0%増)だった。

公費負担のうち、国庫負担は38兆6784億円で、14.8%減少した。一方、他の公費負担は19兆2896億円で、2.0%増加した。

資産収入の大幅増は年金積立金の運用実績の伸びが要因で、総額の伸びにもつながった。
 社会保障給付費や施設整備費、管理費などに充てる財源である社会保障財源について、国際比較が可能な4年度の対GDP比をみると、日本は医療保険制度を運営するフランスやドイツ、主に税で社会保障を賄うスウェーデンより低い。

社会保険料拠出を比べると、事業主拠出は3か国より低いものの、被保険者拠出はドイツに次いで2番目に高かった。


〔社会支出〕

社会保障給付費に施設整備費などを含む社会支出の総額は139兆8561億円で、前年度から2.0%減少した。1人あたりの社会支出は112万4700円で、1.5%減少した。

政策分野別にみると、「保健」が59兆333億円(同4.9%減)で最も高く、次いで「高齢」が49兆3574億円(同1.0%増)、「家族」が11兆5122億円(同2.4%増)だった。

GDPに占める社会支出総額の割合は23.50%で、1.65ポイント減少した。政策分野別では、保健が9.92%、高齢が8.29%、家族が1.93%だった。

社会支出について国際比較可能な3年度の対GDP比をみると、日本はフランス、ドイツ、スウェーデンや、民間保険中心の米国より低かった。

けんぽれんの刊行物
KENPOREN Publication

2025年
2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年