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健保ニュース 2025年7月中旬号

健保連・第535回理事会
宮永会長 皆保険維持へ改革実現を
健保組合の価値高め、味方増やす

健保連は4日、第535回理事会を開き、令和6年度の事業報告や決算などを審議し、了承した。冒頭にあいさつした宮永俊一会長は「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に盛り込まれたOTC類似薬の保険給付のあり方の見直しなどの改革について、「国民皆保険制度を将来にわたり守るためには、着実に進めなければならない」と訴えた。また、改革の実現に向けて、健保組合は保険者機能を一層強化し、自らの価値を高める努力を続け、「応援してくれる味方を増やす必要がある」と述べた。(宮永会長の発言要旨は次の通り。)




昨今の世界の情勢は、政治、経済ともに、ますます混沌とした状況に置かれており、世界の分断が進む中で、将来の見通しに不透明感が強まっている。

特にヨーロッパでは、NATOの防衛費が増額する一方、ロシアのウクライナ侵攻に有効な解決策を見いだせず、先月カナダで行われたG7サミットでは首脳宣言の取りまとめが見送られるなどバラバラな状況だ。

一方、中東の情勢が緊迫さを増しており、イスラエルとイランは停戦したものの、予断を許さない状況だ。

そのような中で、米国のトランプ大統領が求める貿易協定の交渉期限は9日に迫っており、日本の経済と安全保障への影響も注視しなければならない。

このような状況で、我が国の将来を大きく左右する少子化問題は、一層深刻化していると言わざるを得ない。

厚生労働省が6月4日に発表した昨年の年間出生数は68万6000人で、初めて70万人を下回った。合計特殊出生率は1.15で、昨年の1.20からさらに低下し、統計を開始した昭和22年以降で最も低かった。

加速度的な少子化の進行と、それに伴う労働人口の減少は、経済規模の縮小や保険料収入の減少につながり、社会保障制度の基盤を徐々に弱めていく「静かなる有事」とも言われ、ますます深刻になっている。

政府は、少子化に歯止めをかけるため、「こども未来戦略「加速化プラン」」を策定し、児童手当の拡充などの経済的支援に加え、男性の育児休暇取得の促進といった働き方改革など幅広い対策を講じているが、出生率を反転させるには至っていない。

こうした中、8年度からは少子化対策の財源を確保するため、子ども・子育て支援金の徴収が始まる。子どもや子育て世帯を社会全体で応援する大切な仕組みであり、私たち、医療保険者もその一翼を担うことになる。

制度設計にあたっては、我々が強く主張してきた結果、被用者保険においては国から一律の率が示されることになったが、事務フローやシステム改修など未確定な部分も多い。現場の皆さんから心配の声が多く寄せられており、我々にできることを何とか進めていきたいと考えている。

なにより、支援金を負担する加入者や事業主への周知が十分に進んでいないことが、不安の要因になっている。

健保連としても、国に対し健保組合の意見、要望を伝え、早期に情報を提供するので、引き続き協力してほしい。

また、12月にマイナ保険証への完全移行が迫っている。各健保組合においても、様々な準備に取り組んでおり、協力に感謝する。現場の皆さんや事業主の尽力もあって、加入者の保険証のひも付け率や利用率なども徐々に上がってきている。

今後は資格確認書の一括交付など準備作業が本格化し、業務負荷も増すだろう。どのような施策も、定着するまでの過渡期には困難な課題を乗り越えなければならない。

マイナ保険証を使うことで自分の医療情報や健康情報が一目でわかり、より良い医療を受けられる仕組みを、国全体として進めていく必要がある。健保組合の皆さんには、円滑な移行へのステップとして、引き続き協力してほしい。

健保組合の財政状況について、令和7年度予算早期集計では、健保組合全体の経常収支差引額が約3800億円の赤字であり、赤字組合は全組合のおよそ8割に上る。平均保険料率は9.34%で過去最高を更新し、協会けんぽの平均保険料率である10%以上の組合は全体の約25%を占める。

適用拡大や賃上げの効果により保険料収入が増えているにもかかわらず、高齢者医療への拠出金の増大に追い付いておらず、健保組合は依然として厳しい財政状況にあると言わざるを得ない。

先月、閣議決定された「骨太の方針2025」では、現役世代の保険料負担を含む国民負担の軽減を実現するため、「OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し」や「新たな地域医療構想に向けた病床削減」「医療DXを通じた効率的で質の高い医療の実現」「現役世代に負担が偏りがちな構造の見直しによる応能負担の徹底」などの改革について、予算編成の過程で十分に検討し、早期に実現可能なものは来年度から実行するとされた。

万人に平等で温かい日本の国民皆保険制度を将来にわたって守るためには、こうした改革を着実に前に進めていかなければならない。そのためにも、私たち健保組合は保険者機能を一層強化し、自らの価値を高める努力を続けるとともに、応援してくれる味方を増やす必要がある。健保組合に最も距離が近い加入者や事業主をはじめ、労使関係団体、そして国民、世論にも私たちの思いを訴えていきたい。

また、先日閉会した通常国会では、パート勤務などの雇用形態で働く人に対する社会保険の適用拡大を盛り込んだ年金改革関連法が成立する一方、医師偏在対策などを含む医療法改正案は継続審議となった。どちらも健保組合関係者にとって重要なものだが、国会審議の行方が見通しづらい状況が続いている。

20日投開票の参院選は、我が国の政治の安定を左右する重要な選挙だが、我々の主張を国政に届け、改革の実現につなげるためにも極めて重要な意味を持つので、選挙の行方を注意深く見守りたい。

このたび、健保連は2025年から高齢化のピークとなる2040年ごろまでを想定し、加入者・国民が危機感を共有し、国民皆保険制度を守るため、全てのステークホルダーがそれぞれ取り組むべきことをまとめた「ポスト2025健康保険組合の提言」を策定した。

加入者・国民への「3つのお願い」、健保組合としての「4つの約束」と「5つのチャレンジ」という大きな取り組みを、組織を挙げて進めていく。私も先頭に立って取り組むので、理事各位には引き続き、理解、協力してほしい。

本日は、6年度の事業報告、決算などを中心に審議してもらう。健保連の執行機関として、活発な意見をお願いする。

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