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健保ニュース 2022年4月中旬号

松本理事が4年度診療報酬改定を総括
入院医療はメリハリある評価に
かかりつけ医報酬体系 次回改定の継続課題

中央社会保険医療協議会の支払側委員を務める健保連の松本真人理事は、本誌のインタビューに応じ、令和4年度の診療報酬改定について、「国民や健保組合の加入者に、より良い医療が提供できることを第一に考えて対応した」と言及した。入院医療は、急性期・回復期・慢性期それぞれが今回改定でメリハリある見直しが行われたと評価する一方、「かかりつけ医」関連の診療報酬体系を次回改定の継続課題に位置づけた。また、4年10月以降、診療報酬で対応する看護職員の処遇改善や5年度の毎年薬価改定への対応を重要視したほか、健保組合に向けたメッセージとして、医療機関のかかり方への工夫を期待した。


─中医協における令和4年度診療報酬改定の議論を振り返って。

昨年10月30日付で中医協の支払側委員に就任したが、新型コロナウイルス感染症禍のなかでの令和4年度診療報酬改定において、診療側は全体的に大きな見直しを避けたいように感じた。

一方、支払側は、「少子高齢化に伴い生産年齢人口が減少するなかで、団塊の世代が後期高齢者になっていく流れは変わるわけではない」というスタンスを念頭に置きながら、コロナ禍を経験して浮き彫りになった課題も解決し、国民や健保組合の加入者へ、より良い医療が効率的・効果的に提供されるために何をすべきかを第一に考えて対応した。


─令和4年度診療報酬改定率について。

支払側は、「令和4年度は診療報酬を引き上げる環境になく、国民の負担軽減につなげるべきであり、配分の見直しに主眼を置いたメリハリのある改定とする必要がある」と強く要請してきた。また、薬価等は、市場実勢価格の低下に伴う公定価格の引き下げ分について、「長期的に上昇し続ける負担の抑制のために還元されなければ、国民の理解は得られない」と主張した。残念ながら改定率を見る限りでは、前回改定より小幅ではあるものの、診療報酬が引き上げられ、われわれが望む通りになっているとは言い難く、満足はしていない。


─入院医療の見直しについて。

入院医療は急性期・回復期・慢性期それぞれにおいて、これまで以上に患者の状態と医療資源の投入量に見合った形に改定されたと受け止めている。

「急性期」については、一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」の評価項目から「心電図モニターの管理」が削除され、これまでより患者の状態に応じた指標になったと考える。

他方、「重症度、医療・看護必要度」の該当患者割合は、コロナ禍も踏まえて医療現場に配慮し、基準値が緩和された。もう少し厳しい基準値を設定して欲しかったのが正直なところだが、支払側と診療側の双方が委ねた公益委員による裁定なので受け入れた。次回改定に向けては今回改定後の状況を検証したうえで該当患者割合をどのように考えるかという形に議論をリセットしてスタートしたい。

急性期一般入院基本料の「重症度、医療・看護必要度」の評価方法について、今回、「急性期一般入院料1」を算定する200床以上の病院に「必要度Ⅱ」を要件化したが、これを拡大していく方向性は当然の流れだ。

新設した「急性期充実体制加算」は、メリハリのなかで重点的に評価した項目の代表だと受け止めている。高度かつ専門的な医療の実績や体制について、厳格な施設基準が設定されたことは、医療機能の分化・強化に向けた医療機関へのメッセージになる。

「回復期」は、本来求められている役割を果たすために頑張っている医療機関と、十分に役割を果たしているとは言えない医療機関の評価に差を付けたのが今回改定の趣旨と理解している。支払側が主張するメリハリのある評価に近づいたのではないか。

「慢性期」は、嚥下リハビリテーションを適切に行うことで、長期間の栄養点滴を可能な限り止めて、食事で栄養を摂ることができるようにしてもらうというメッセージが伝わる改定内容となった。


─外来医療の見直しについて。

支払側として、今回改定で、「かかりつけ医」関連の診療報酬体系の再構築を主張してきたが、残念ながら叶わなかった。

現在の「かかりつけ医」関連の診療報酬としては、「地域包括診療料」、「地域包括診療加算」、「機能強化加算」等があるが、名称だけでは患者からすると何が「かかりつけ医」に対する報酬なのかが理解できない。

今回は、「かかりつけ医」関連の診療報酬体系の大きな見直しが難しいなか、少なくとも現状の問題点を是正し、どういう評価になれば次回改定につながるのかという観点から主張した次第だ。結果として、「機能強化加算」の施設基準に様々な役割が書き込まれ、実績要件も追加された。

ただし、「かかりつけ医」と「紹介外来」は両輪で考えるべきだが、紹介状なしで病院を受診する場合の定額負担の見直しや、紹介受診重点医療機関の入院診療における評価の新設に比べると、スピード感にギャップがあるので、「かかりつけ医」の評価は次回改定に向けた大きなテーマの1つになると考えている。


─リフィル処方箋の導入について。

実際に「リフィル処方箋」を運用していくなかで、医師が処方権を持っているのは事実であり、どうしたら「リフィル処方箋」のスムーズな導入につながっていくのかを考えなければならない。「リフィル処方箋」は病態が安定している場合に使用できることを加入者に認識していただきながら、健保組合や健保連の活動のなかで地道にPRしていきたい。

小さく生まれたとしても、大切に育てて最終的に成果につなげていく必要があり、将来的には、大きな効果を期待したい。


─オンライン診療の見直しについて。

オンライン診療と対面診療では診療行為に差があるなか、診療報酬に差を設けることは必要だが、患者がオンライン診療を受けられる環境を整備する必要があるという判断のなかで、診療内容に見合った形の点数設定を主張した。

オンラインによる初診の点数については、新型コロナ感染拡大に伴う時限的・特例的な対応の214点と対面診療の288点の間で、どの水準が妥当なのかが争点になり、通常の議論と異なり、診療側が維持、支払側が引き上げという逆の主張が展開された。

ただ、公益裁定の結果、時間・距離要件や患者割合要件が外され、オンライン診療にかかる初診料の点数は251点となり、対面診療の87%という水準に決まった。

こうした見直しにより、オンライン診療という新たな診療形態が推進され、患者の利便性向上につながることを期待したい。


─不妊治療の保険適用について。

政府方針を踏まえ、学会などの意見を聴きながら慎重に設計されたという印象は持っている。

生殖補助医療の技術については、学会のガイドラインで推奨度が3段階に分けられたことを踏まえ、安全性や有効性が確立されている「推奨度A」と「推奨度B」を保険適用する一方、必ずしも十分に確立されているとは言えない「推奨度C」は保険適用せず、先進医療の枠組みを活用しながらデータを収集・検証することになった。また、倫理的な問題が残っている第三者の精子・卵子等を用いた生殖補助医療は、保険適用の対象外とされた。

対象患者の要件等は、今年3月までの地方自治体における助成金事業を踏襲しているので、スムーズに運用されると認識しているが、健保組合からすると、不妊治療の保険適用が組合財政にどのような影響を与えるかが非常に予測しづらい。不妊治療は現役世代の保険給付範囲の拡大なので、直接的に健保組合に関わる話になる。加入者の年齢・性別構成によって程度は異なると思うが、影響は大きいと考えている。


─調剤報酬の見直しについて。

薬局に対する評価を対物業務中心から対人業務中心へと転換すべきと主張し、そこに目を向けた改定が行われたが、まだ道半ばであり、最終的には薬局の対人業務が強化され、対物業務に終始する薬局が適正化されていく必要がある。

「調剤料」と「薬剤服用歴管理指導料」については、純粋な対物業務の「薬剤調整料」、純粋な対人業務の「服薬管理指導料」、これらの中間に位置する「調剤管理料」に再編された。ただし、業務の実態が変わらないにもかかわらず、細分化したらトータルの評価が上がってしまったということはあり得る。流れとしては必ずしも否定するものではないが、まだまだ不透明感は否めない。単なる暖簾の付け替えとならないように実態を検証し、次回改定につなげたい。

経営効率の高い大手チェーン薬局や敷地内薬局については、基本料が適正化されたので、この影響も注視していく。


─湿布薬の処方上限枚数の引き下げについて。

令和2年度に調剤された外用湿布薬の処方箋1枚における処方枚数の分布データから、湿布薬の処方上限枚数について、現行の「70枚」から「35枚」に引き下げるよう主張したが、「63枚」の見直しにとどまった。

残念な結果となったが、仮に湿布薬の処方枚数制限をさらに厳しくしても、上限枚数に張り付くだけであり、抜本的な改革には至らない。

したがって、健保連が本来主張している保険給付範囲から除外する方向性に切り替えていく議論に持っていかないと、医療費の適正化には向かわないだろう。

湿布薬以外の医薬品についても、保険給付範囲のあり方を真剣に検討すべきであり、実現するまで今後も主張し続けるテーマと考える。


─看護職員の処遇改善への対応について。

今年の10月以降、政府方針に基づいて診療報酬で対応する「看護職員の処遇改善」については、財源が令和4年度診療報酬改定率の0.2%分と決まっているので、今後、どういう形にするかの検討を中医協で進めていくこととなる。

処遇改善の対象となる看護職員等の賃金に、診療報酬として支払う金額が確実に反映されるための方法論について、既に実施されている介護報酬における加算の仕組みを確認したうえで、具体的な制度設計を検討すべきだ。


─令和5年度の毎年薬価改定への対応について。

平成28年12月の4大臣合意で決定された診療報酬改定のない年の薬価改定については、「薬価は毎年改定するものである」という受け止め方と、「あくまで特例的な中間年改定である」という受け止め方の違いがある。

そもそも、高額な医薬品が登場するなかで、国民皆保険制度の持続性を高めることや国民負担の抑制のために、毎年薬価改定の話が出てきたと認識している。しかし、市場実勢価格と薬価の乖離率にどこで線を引くかといったハードルの議論に終始していることには強い違和感を持っている。

昨年12月22日の中医協総会で合意された「令和4年度薬価制度改革の骨子」でも、毎年薬価改定のあり方について、引き続き検討することとされ、決着には至っていない。

3年度の毎年薬価改定では、既収載品目に適用する算定ルールについて、「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」は「加算」のみ適用されたが、5年度改定に向けては、それと対をなす「累積額控除」の適用について強く求めていく。

市場実勢価格に基づく薬価の引き下げを緩和する「調整幅」については、薬剤流通の安定化のために設けられていると承知している。医薬品の種類によってコストに幅が生じるのは当然と考えるが、調整幅は全ての医薬品で一律2%の設定となっている。まずは、市場実勢価格や乖離率のカテゴリー別分布の実態を明らかにすることが、具体的な検討に向けた第一歩だろう。


─医療提供体制改革とも関連する次回改定に向けた課題について。

医療提供体制は厚生労働省医政局の検討会で議論が進められているので、そこに左右される部分が大きいだろう。

入院医療は、急性期・回復期・慢性期それぞれについて今回改定でメリハリある見直しが行われたので、次回改定は地域医療構想の実現に向けた仕上げになる。外来医療は、残された課題が多く、特に「かかりつけ医」関連の診療報酬体系が重要であり、昨年9月に公表した政策提言が主張のベースとなる。


─健保組合に向けたメッセージについて。

国民皆保険制度を守っていくという大前提のなかで、医療保険財政が厳しくなっていることは否めない。

国民皆保険が永続するよう、健保連として医療費の適正化に向けて、診療報酬の設計や保険給付範囲のあり方等の検討に努力している。

健保組合の皆さんには、医療機関のかかり方などの広報活動の工夫を期待したい。

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