企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ ~健康経営 事例紹介~」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

株式会社横浜銀行

各部横断の「健康経営推進連絡会」で従業員の健康維持・増進を推進

横浜銀行は、健康管理の取り組みを通じて全ての従業員が能力を十分に発揮できるよう、2018年4月に「横浜銀行健康宣言」を策定した。また、「健康経営推進連絡会」を立ち上げ、健康経営を実践するための具体的な施策を策定し、その実施状況を随時確認の上、適宜対応するなど、銀行と健保組合が一体となって取り組みを進め、「健康経営優良法人(ホワイト500)」に2年連続で認定された。同社の取り組みや健保組合とのコラボヘルスについて、横浜銀行執行役員・人財部長の窪田俊也さん、同人財部給与厚生グループ長の浅輪裕司さん、同健康管理センター保健師の和田浩子さん、横浜銀行健康保険組合常務理事の田沼聡さんに話を聞いた。

【株式会社横浜銀行】
設 立:1920年12月16日
本店所在地:神奈川県横浜市西区みなとみらい3丁目1番1号
頭 取:大矢 恭好
従業員数:4,622人(2019年3月31日現在)

──健康経営の取り組み


横浜銀行執行役員・人財部長
窪田 俊也 さん

窪田さん ▶

 2020 年は当行の創立100周年となります。当行は従来から、従業員を宝、財産として捉え、「人財」と呼んできましたが、従業員が前向きに働くためには、心も体も健康であることが重要です。そこで、100周年に向けた活動の一環として、健康経営優良法人の認定取得を目指し、18年に「横浜銀行健康宣言」を行い、本格的に健康経営の取り組みを開始しました。具体的には、限られた時間の中で1人ひとりが持てる能力を最大限に発揮できるよう、「フレックスタイム制」や「勤務間インターバル制度」、「時間単位年休」などを導入し、働き方改革を推進しています。また、健康でなければ良い仕事はできませんので、従来35歳、40歳と5歳区切りで実施していた人間ドックを、19年度からは35歳と40 歳以上の全員が毎年受診できるように見直しました。自分自身の健康に目を向ける機会を増やすことができたと思っています。


横浜銀行人財部給与厚生グループ長
浅輪 裕司 さん

浅輪さん ▶

 当行では人財部、健康管理センター、健保組合の3者が連携して健康管理を進めてきた経緯があり、体制は充実していると思います。例えば、健康経営に本格的に取り組む前から、定期健診には胃がんリスク検診(ABC検診)を組み込むなど、従業員の健康を考えた諸施策を実施してきました。

 そのため、健康経営の取り組みを開始した18年度には、受動喫煙防止対策の実施や神奈川県が提供する健康管理アプリ「マイME −BYOカルテ」の導入、19年度には40歳以上は原則全員人間ドックを受診するなど、さまざまな施策を健康管理センターと健保組合が連携することでスムーズに導入できたと思います。

 100周年に向けて、健康経営優良法人を目指すと決めたことで、健康経営を実践することになりましたが、健康に関する各種施策がよりきめ細かくなったのは非常にプラスになりました。


横浜銀行健康管理センター保健師
和田 浩子 さん

和田さん ▶

 健康管理センターは、関連会社も含めた従業員の健康を支援しています。毎年、健診受診率は100%を維持しており、従来から健診で有所見となった従業員を対象に、支店を巡回し、面談を実施しています。

 08年度からの特定保健指導は健保組合と連携して取り組んでいます。いわゆるリピーターが多くなってしまっていることが、現在の課題の1つです。この課題を健保組合と共有し、今後は特定保健指導受診率の向上と要指導者数の減少を目指していきたいです。

 初めて健康経営度調査の質問項目を見たときに、クリアしなければならない項目が多くあり、考えさせられました。そのため、これからより一層、従業員の心身の健康の維持・増進に向けた支援を行わなければならないという思いを強くしました。


横浜銀行健康保険組合常務理事
田沼 聡 さん

田沼さん ▶

 今年(20年)で健保組合も70周年となります。じつは、銀行側が健康経営に取り組むという発表を行う直前の17年に、健保組合では前期高齢者納付金が急上昇し、保険料率を大幅に引き上げなければならない危機的な状況にありました。保険料収入の6割以上を納付金等が占めるという状態に陥り、銀行側ときちんと協議をしながら進めていかなければならないと思いました。

 そこで、17年4月から、人財部・健保組合情報連絡会を新たに設置し、健保組合の運営や保健事業も含めた情報交換を行い、意思疎通を図っていくという取り組みをスタートさせました。ちょうど、第2期データヘルス計画を作成するタイミングとも重なっていたので、保健事業の実施方法についても協議しながら進めてきました。

 とくに、健診の実施管理や事後指導は健康管理センターが長く取り組んできた事業でもあり、データヘルス計画と上手に重ねていくことで効果を上げられないか、あるいは、健保組合で予算を確保することで、健康管理センターがより効果的な活動ができないか等について検討しました。

 1つの例として、銀行という業種柄、女性従業員のウエートが高いため、乳がんや子宮がんといった婦人科系疾患の対策が急務でした。そのため、健保側で婦人科検診の補助金を引き上げたり、乳がん早期発見のための自己触診モデルを購入し、健康管理センターで乳がんミニセミナーを開催したりしました。19年度は300人以上の参加があり、その成果もあって、若い世代の乳がん検診の受診者が増えてきました。

──健康経営推進連絡会の設置

浅輪さん ▶

 健康経営を実践するにあたって、CHO(健康管理最高責任者)をトップに、各部横断で構成する「健康経営推進連絡会」を立ち上げました。健保組合、健康管理センター、各部、従業員等から諸々の意見を吸い上げ、年度の方針を決め、みんなで健康経営に取り組もうとの発想で生まれたもので、健康経営の方向性や意思決定を行う場として、年2回ほど開催しています。

 連絡会は、健診の結果を受けて当年度の振り返りの実施と次年度の方針を決定、半年後に途中経過の確認と追加の施策の有無を確認する形で進めています。先ほど述べた「受動喫煙防止対策の実施」や「人間ドック制度の充実」、また19年度に実施した女性の健康相談窓口の設置等の施策は、この連絡会で意思決定され実践されたものです。

窪田さん ▶

 代表取締役のCHO を含め関連する人たちが一堂に集まり、さまざまな議論をした上で意思決定をするので、各種施策がスピード感をもって実践される仕組みになっています。健康経営を実践していく上で、今後も連絡会はしっかりと機能させていくことが大切になると考えています。

田沼さん ▶

 健保組合はデータヘルス計画等に基づいて活動しており、内容はホームページ上でも公開していますが、そうした活動を知らない人がほとんどです。そのため、連絡会で計画の説明や、健康スコアリングレポートの報告ができるので、非常にありがたいです。

 横浜銀行では喫煙率が比較的低い一方、飲酒や睡眠習慣が芳しくない等のデータがあるので、注意喚起を行う場としても活用しています。

──健康経営優良法人の認定

浅輪さん ▶

 20年はふたを開けてみなければ分からない部分もあり、心配もあったのですが、無事に2年連続で健康経営優良法人に認定され、素直にうれしいです。認定は励みになりますし、次は健康経営銘柄に選定されるよう一層進んでいければと思っています。

窪田さん ▶

 CHO を頂点に健康経営を実践するという意識と活動が認定につながったと思います。認定されることそのものが目的ではありませんが、取ると決めたことでプレッシャーもありましたし、しっかり取り組まなければならないとの思いを持ちながら進めてきました。そういう状況の中で各組織が連携し、さまざまな取り組みを行った結果が認定につながったと考えています。

和田さん ▶

 2年連続で認定され、私たちが取り組んできたことに対し評価をいただけたことは、大変うれしかったです。

田沼さん ▶

 素直に良かったと感じています。ただ、18年から横浜銀行が健康経営に本格的に取り組んでいることについて、詳しく知っている従業員はそれほど多くはありません。そうした意味では認定を受けた後、どう内外にアピールしていくのかが、次のわれわれの仕事です。そのため、銀行の100周年と健保組合の70周年に重ね、「健保組合は事業主の健康経営の取り組みを支えています」を今後のキャッチコピーにしていきたいと考えています。

──今後の目標とコラボヘルスの推進

窪田さん ▶

 健康経営の取り組みについては、従業員にきちんと理解してもらい、浸透させていくことが重要です。100周年を契機に、健康経営を一層推進するため、個人ポータルサイトなどを導入して、従業員に健康をより意識してもらいたいです。また、健康経営を進めていく上では、完全禁煙を進めることが必要であると思っています。

 健保組合にも助けてもらいながら一緒に取り組んでいき、従業員の健康をさらに増進していきたいと考えています。

浅輪さん ▶

 最終的には、従業員1人ひとりが「健康」を今以上に意識できる環境をつくることが目標です。やはり、健康を意識することで生活習慣や行動が変わってきますので、そのような場を整えていきたいです。そのために、現在、ウェアラブル端末や健康アプリの導入などを検討しています。

和田さん ▶

 健康管理センターは、日頃から近い距離で従業員の話を聞くことができます。拾い上げた生の声は連絡会等につなげ、より良い活動として従業員に還元していきたいです。そうすることで、21年も健康経営優良法人に認定されることを目指します。

田沼さん ▶

 より高い見地で、健保組合の存在や健康経営などを周知・徹底し、従業員の健康リテラシーの向上を目指すことが、データヘルス計画の究極の目標・課題だと認識しています。

 また、健保組合の中ではあまり議論がありませんが、SDGs(持続可能な開発目標)の概念を使いながら、健康や福祉などへの取り組みの重要性も広くアピールしていきたいです。

健康コラム
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