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企業・健保訪問シリーズ

昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。

企業・健保訪問シリーズ

佐久間特殊鋼株式会社

「物心両面の幸せ」追求し健保組合とともに健康経営推進

鉄にさまざまな元素を加え特性を付加した合金鋼である特殊鋼の販売・供給、加工を手掛ける佐久間特殊鋼株式会社は、「働く仲間全員の物心両面の幸せの追求」という経営スローガンのもと、2010年から会社方針に健康で安全な職場環境づくりを掲げてきた。加入する愛鉄連健康保険組合とも協力し、喫煙対策、ロコモ予防等に取り組み、健康経営優良法人(ホワイト500)にも2年連続で認定されている。同社のこれまでの取り組みについて、佐久間特殊鋼執行役員兼総務企画グループ長・可知正英さん、同グループ総務チーム長・森陽登美さん、愛鉄連健保組合常務理事・井﨑茂さん、同業務企画部健康管理課長・伊佐次久晃さんに話を聞いた。

【佐久間特殊鋼株式会社】
設 立:1951年4月
本 社:愛知県名古屋市緑区浦里5-250
代表取締役:佐久間 貞介
従業員数:167人(2018年12月末現在)

──企業理念とこれまでの健康づくりの取り組み


佐久間特殊鋼執行役員
兼総務企画グループ長
可知 正英 さん

可知さん ▶

 当社の企業理念の中に「すべてはあなたのために」という言葉があり、お客様のみならず、社員、取引先などステークホルダー全てが幸せになるような形で商売をしていくことを目指しています。それを実践するための経営スローガンとして、「働く仲間全員の物心両面の幸せの追求」を掲げました。社員自らが物心両面で充実していないと、良いアウトプットはできないということです。

 このため、今から10年ほど前の2010年から社員の健康に着目し、まずは理屈抜きで社員の健康を何とか維持させようと取り組んできました。その中で、ちょうど健康経営という考え方が経済産業省から打ち出され、「それならチャレンジしてみよう」と、健康経営優良法人認定を目指しました。

 われわれが今まで実施してきたことが正しかったのか、あるいはもう少し良い方向性があるのかを確認するため、健康経営度調査を羅針盤として活用させてもらった面もあります。


総務企画グループ
総務チーム長
森 陽登美 さん

森さん ▶

 具体的な取り組みとして、比較的早くから始めたのは、残業削減等の働き方の見直しと、勤務時間内の禁煙です。ただし、なかなか成果が上がりにくい分野でもあります。当社の喫煙率は、16年度で32.6%と、全国平均の18%と比べてかなり高かったのです。

 そこで、18年度からは勤務時間だけでなく昼休みも含めて完全禁煙とし、敷地内全面禁煙に踏み切りました。社内へのたばこの持ち込みも禁止しています。すると、たばこを吸わない時間が長くなり、やめやすくなった人が増えたのか、喫煙者数は17年の46人から18年は31人に減少しました。全社員の名刺に「全社禁煙宣言」のロゴを刷り込み、喫煙可能な得意先に出向く営業社員にも徹底しています。いろいろな抵抗はありましたが、現在の目標は「2025年に喫煙者ゼロ」です。

──健保組合の保健事業やサポートが魅力

森さん ▶

 当社は以前、協会けんぽに加入していましたが、08年12月に愛鉄連健保組合に加入しました。健保組合に移行した経緯は、愛鉄連健保組合が健康サポートに力を入れていたからです。健診の補助も充実していましたし、かなり早い時期からインフルエンザ予防接種の補助もありました。また、歯の健康は総合的な体の健康に影響があるということで、歯科健診も補助の対象となっています。

 健保組合への加入を決めるとき、当然保険料率のことも念頭にありましたが、それ以上に愛鉄連健保組合の取り組みに共感しました。今でもさまざまな面でサポートしてもらい、助かっています。

 健康経営に関する会合などに行くと、やはり単一健保組合が強い。事業所と健保組合がタッグを組んで、「保険料削減のためにもこういう施策を進めよう」と言えます。総合健保組合はそこが難しいところだと思いますが、愛鉄連健保組合は、単一健保組合にも負けないところがあると感じています。とくに、事業所別の「健康白書」では、当社の課題に気付かせてもらっています。


愛鉄連健保組合常務理事
井﨑 茂 さん

井﨑さん ▶

 3年ほど前から、健保組合で事業所別に健診データや生活習慣、レセプト等を分析し、同規模事業所内でのランキングを示した健康白書を各事業所に届けています。これを契機に、事業所内で健康経営への求心力を高めてもらいたいと考えました。

可知さん ▶

 健康課題がパッと見て分かるので、非常に役に立っています。われわれ自身が作っているものではなく、健保組合からもらうものなので、社内的にも非常に説得力を持ちます。

──医療機関受診率100%やロコモ予防に挑戦

森さん ▶

 15年の役員会で、「3年後までに要医療・要精検者の受診率を100%にする」と決めました。当時の再検査受診率が40%程度だったため、私から役員会に「8割を目指します」と提案したところ、「8割とは何だ。3年後に100%だ!」と叱られました。経営陣も、健康に対する熱い気持ちがあるのです。

 健診項目では、愛鉄連健保組合に会社負担でさまざまなオプションを付けられる体制を作ってもらいました。例えば、前立腺がんや乳がんの検査は、健保組合の補助を活用しつつ、自己負担分は会社が補助する形を取っています。

 医療機関の受診勧奨は、愛鉄連健保組合が実施している「コラボヘルス・ワン」というプログラムを活用し、未受診者を特定して上司から受診勧奨してもらっています。上司は、対象者に「いつ病院に行くの?」と確認し、受診したかどうかをフォローすることで、今は受診率100%を達成しています。

可知さん ▶

 上司から受診勧奨してもらうのは、受診率を上げたいからではなく、業務の都合で受診できないことは、会社と本人双方にとって不幸であるからです。本人の業務の状況を理解しているのは上司であり、そのためにラインケアで対応しています。

森さん ▶

 そのほか、現在取り組んでいる事業として、ロコモチャレンジがあります。健康に長く働いてもらうことは当社の命題でもありますが、筋力や足腰の衰えが、高齢者が働き続ける上で最もネックになります。そのため、脚筋力や敏しょう性、体幹のバランスなどを計測し、早いうちから警告を出して機能の維持に努めてもらう趣旨で、3年前から取り組んでいます。その際も、愛鉄連健保組合には非常にお世話になりました。


愛鉄連健保組合業務企画部
健康管理課長
伊佐次 久晃 さん

伊佐次さん ▶

 佐久間さんから「体力測定ができる委託先はないか」と相談を受け、健保組合で付き合いのあったスポーツクラブを紹介しました。

森さん ▶

 2年目までは1つの会場に社員を集めて体力測定などを行っていたのですが、3年目からは委託した事業者に各事業所を回ってもらい、就業時間内に実施しています。

可知さん ▶

 働き方改革の問題もありますし、移動時間を考えると多少コストアップになっても各拠点で実施できた方が良いと判断しました。

森さん ▶

 「ロコモチャレンジ」は全年齢を対象に実施しています。当初は高齢者のために始めたのですが、じつは20〜30代の若い女性の脚力が40〜50歳代並みだったという新たな課題が見つかりました。痩せている女性が多く、ご飯もあまり食べない。それによって脚力が落ちているということが分かったので、今後はそうした部分にも対応していく必要があると感じています。

可知さん ▶

 社員にも好評で、結構楽しんで取り組んでいます。長期で海外出張に行っている場合など以外は、ほとんどの社員が受けています。

井﨑さん ▶

 ロコモ対策は本当にこれからの課題だと思っていたのですが、それを先取りしているところが素晴らしい。事業所からいろいろな要望を上げてもらえると、健保組合としても研究してさまざまなアイデアにつなげられるので、非常にありがたいです。


職場の片隅にエアロバイクやランニングマシンを設置。昼休みや夕方に、リフレッシュを兼ねて活用されている。

──働き方改革と健康経営を車の両輪に

森さん ▶

 今後に向けた施策ですが、今年度は少しかじを切っています。働き方改革では、社員が健康であって幸せならばアウトプットは良くなるだろうという、まさしく健康経営の考え方をメインにしています。社員の幸せって何だろうと考えたときに、やはり自由になる時間があり、家族と濃密に過ごせたり、自分を高めたりできることではないか。それによって社員が幸福であるならば、働く場でのパフォーマンスは上がり、より良いアウトプットが出るから、会社としての業績も向上するだろうということです。

 これまでも根底にはありましたが、より強く前面に押し出して、20年度は総労働時間の削減を大きく打ち出しました。

可知さん ▶

 総労働時間については、5年かけて1割削減の目標を掲げています。これが施策の1つ目の柱で、2つ目が喫煙者ゼロ。3つ目が、今のところそれほど大きな問題にはなっていないのですが、メンタルヘルス対策を充実させていこうと取り組んでいます。

 当社のストレスチェックの結果をみると、仕事の量・質の部分は平均的か若干大変かなというところですが、上司・同僚からの支援が比較的良い数字でした。仕事の量や質はマネジメントで効率化できますが、円満な上司・同僚との人間関係は、これをさらに維持・向上させていくことが重要になります。ラインケアを充実させるとともに、人事総務の社員がメンタルヘルスケアマネジメントの資格を取得する。ゆくゆくは、マネジャークラスにも取得してもらいたいと考えています。

 将来的には、これまで行った施策がどのようにつながり、どういう効果が出ているか、きちんと検証していきたいです。会社は単発で、社員にとって耳障りの良い施策だけを行っているのではないか、と誤解されたくありません。

 健診や「ロコモチャレンジ」でも、結果が出てからあたふたしてはダメで、健診が近づいてきたら前年の結果をもう1度知らせて、「そろそろ注意してください」と呼びかける方が効果的ではないでしょうか。

井﨑さん ▶

 経産省が求めたのは、「働きながら元気になる」ということで、こうした考えを会社の文化にしていくためには工夫が必要だと思います。効果が出るには長い時間がかかりますが、そのためには一本芯が通っていないといけない。健康を企業の風土、文化にしていくことが、当健保組合として狙っているところでもあります。

 健保組合としても、多くの事業所に健康経営に取り組んでもらえるよう、健康経営優良法人認定への挑戦を積極的に呼びかけています。18年は10社、19年は33社が認定を受け、20年は50社を目指しているところです。「愛鉄連のメニューをきちんと実施すれば、健康経営に一歩近づきますよ」ということを、これからも訴えていきたいと思います。