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企業・健保訪問シリーズ

昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。

企業・健保訪問シリーズ

大王製紙株式会社

会社、健保、労組 三位一体で健康経営を推進

パルプから製品まで一括生産する総合製紙メーカーである大王製紙株式会社は、「役員、社員ならびにその家族が健康であること」を礎とし、「生活習慣の改善」「禁煙の推進」「メンタルヘルスケアの充実」「快適な職場環境の形成」に取り組み、「健康経営銘柄2019」にパルプ・紙業種で初めて選定されている。同社のこれまでの取り組みについて、コーポレート部門総務人事本部人事部長の山本高史さん、同部人事課長(ダイバーシティ推進担当)の田邊典代さん、同課の山本実生さんに話を聞いた。また、別途、大王製紙健康保険組合常務理事の石丸進さん、同事務長の石村悦哉さん、大王製紙労働組合執行委員長の井上俊正さんにも話を聞いた(ページ下部囲み)。

【大王製紙株式会社】
設 立:1943年5月5日
東京本社:東京都千代田区富士見2-10-2
四国本社:愛媛県四国中央市三島紙屋町628
代表取締役社長:佐光正義
従業員数:連結10,551人、単独2,651人(2019年3月末現在)

──社員、家族の健康は企業の財産


コーポレート部門
総務人事本部人事部長
山本 高史 さん

山本(高)さん ▶

 当社では、2014年12月に、社長の佐光が「大王製紙グループ健康宣言」を行いました。さまざまな健康課題があるなか、役員、社員のみならず、家族を含めて皆が心身ともに健康で生き生きと活躍することが、当社の持続的な成長のベースとして必要であり、「健康は財産」であるという考え方で、健康の維持・増進に取り組むこととしました。

 健康経営の取り組みについて外部評価を受けることで、会社の本気度を社員に理解してもらい、社員の意識を変えていこうと考えたのが「健康経営銘柄」申請のきっかけです。15年度以降、順次、取り組みの充実を図り、19年に初選定となりました。日本政策投資銀行の「DBJ健康経営格付」では16〜19年まで4年連続で最高ランクを取得、18・19年に「健康経営優良法人(ホワイト500)」にも認定されています。

 当社の健康課題として、24時間4組3交替制で勤務する操業現場社員の精神的、身体的な疲労がありました。一方、営業、スタッフ部門の社員は、長時間労働等に伴うメンタル不調が増加傾向にあるほか、喫煙率についても、現場の工場では全国平均より高くなっていました。

 こうした課題に着目して、「生活習慣の改善」「禁煙の推進」「メンタルヘルスケアの充実」「快適な職場環境の形成」を重点施策とし取り組みを進めています。

田邊さん ▶

 健康経営とダイバーシティ経営をチームとして推進しています。働きがいのある職場づくりという意味で、健康経営とダイバーシティ経営は深く連携するものです。例えば、健康面に不安を持ちながら仕事をする人にも、ケアをしながら継続して働き、活躍してもらう。これは会社の持続的な成長のベースの1つだと思います。

──健康経営推進の体制

山本(高)さん ▶

 健康経営を推進するための体制整備として、副社長をCHO(チーフヘルスオフィサー:最高健康責任者)に選任し、東京と四国本社、各支店、三島・可児工場に健康管理事業推進委員を配置、本社人事部内の専門チームで統括しています。

 併せて、会社、健保組合、労働組合が三位一体となり健康経営を推進する組織として、CHOを委員長とする「健康経営委員会」を発足させました。健康経営の取り組みに対する社員の意識を変えていく上で、労働組合との連携が非常に大きな力になっています。健康経営の趣旨に賛同してもらい、健診受診、ストレスチェック受検等さまざまな場面で支援してもらっています。

山本(実)さん ▶

 健康経営委員会は4半期に1度開催し、会社と、健保組合、労働組合の皆さんで、健康課題や施策、効果検証について話し合い、活動を推進しています。委員会の活動もあって、徐々に会社の取り組みが浸透してきている実感があります。

──生活習慣改善の取り組みと効果


コーポレート部門 人事課長
山本 実生 さん

山本(実)さん ▶

 「生活習慣の改善」で最も力を入れているのは「保健指導」です。診療所機能を持つ三島地区の健保組合だけでなく、本社・工場にも健康管理室を設置し、保健師が常駐しています。健診受診率は100%を達成し、保健指導も健保組合の主導で、18年度から全員実施しています。

 併せて、19年から健保組合に管理栄養士を配置し、栄養指導も個別に実施できる体制を整えています。遠方の事業所の社員には、スカイプ等で面談を実施しています。

 運動習慣を身に付けることに関しては、三島地区では社員とその家族が子会社である「エリエールスポーツクラブ」を格安で利用できます。その他の地域では、スポーツクラブと契約を結んでいます。

 16年度からは、健康応援サイト「KENPOS」を導入しました。自身で健康目標や行動目標を設定し、定期的な運動、体重管理など、実行した健康増進活動を記録できます。モチベーションアップにつながるよう、健康増進活動や健診結果の閲覧だけでも「健康ポイント」が付与されます。

山本(高)さん ▶

 これらの他に、運動、歯科、栄養、睡眠、乳がん等各種健康増進セミナーを健保組合と共同で開催しています。最近では睡眠に関するセミナーが好評でした。

山本(実)さん ▶

 生活習慣の改善に関しては、健保組合のデータになりますが、15年度と18年度を比較すると、有所見者率が脂質で6.0%、血圧で3.3%、血糖値で2.1%低減しています。少しずつ効果が出ていると思います。

──役員禁煙チャレンジ実施中

山本(高)さん ▶

 喫煙率の高さは当社の大きな課題の1つであり、「禁煙の推進」として、喫煙率25%以下を目標に掲げています。16年度から就業時間内禁煙を就業規則に盛り込みました。

山本(実)さん ▶

 地道な啓発活動、保健師からの禁煙勧奨などのほか、健保組合では禁煙外来費用の助成も行っています。喫煙率の推移をみると、禁煙の取り組み実施前の15年度の35.5%から、18年度には31.2%に低減しましたが、下げ止まりの状況がみられました。

 そこで、今年度の新たな取り組みとして、「役員禁煙チャレンジ」を実施しています。取締役、監査役、執行役員の喫煙者10名に対し、上期中に禁煙するよう、社長から要請しました。すでに多くの人が禁煙に成功しています。

 「メンタルヘルスケアの充実」については、EAP(外部相談窓口)を設置して、産業カウンセラーによる無料カウンセリングを受けられるようにしています。また、東京本社には精神科産業医を配置しており、内科産業医とは別にメンタル不調者を専門に対応しています。

 メンタル不調による1カ月以上の休職者率は、残念ながら横ばいの状態ではありますが、復職後の定着状況は改善しているように感じています。


コーポレート部門 人事課長
(ダイバーシティ推進担当)
田邊 典代 さん

田邊さん ▶

 ストレスチェックは19年度100%の受検率であり、意識は高い状況にあると思います。このストレスチェックが始まった時期から、会社の大きな取り組みが始まり、社員の健康に対する意識が変わってきたように思います。

山本(実)さん ▶

 「快適な職場環境の形成」については、長時間労働対策、感染症対策の充実、病気の治療と仕事の両立支援に力を入れています。両立支援については、会社が保険料を負担する長期休業補償制度を導入しました。安心して休んで治療に専念できるよう収入をサポートする制度であり、18年4月から導入しています。

──今後の取り組み

山本(実)さん ▶

 今後は、どう精密検査・再検査につなげていくかが課題です。治療につなげる、あるいはこれ以上悪化しないよう未然防止のための対策をする上で、その第一歩が精密検査・再検査なので、会社も積極的に関わっていきたいと考えています。

田邊さん ▶

 健康意識の低い社員に向けて、もう少し発信力を強化していく必要があると感じています。会社の取り組みとその目的を分かりやすく伝えていくことで、健康経営を効果のあるものにしていきたいと考えています。

山本(高)さん ▶

 データヘルスの取り組みを含め、効果測定には健診データを活用していますが、今後は、事業所別、男女別、年代別等属性別の傾向を分析して、適切な取り組みを検討し、実行していきます。将来的には、5年後、10年後の個人個人のリスクを予測できるよう分析し、それを提供することで、セルフケアにつなげていく。健康維持・増進は自身で行うべきものという、ヘルスリテラシーの向上・定着を図りたいと考えています。


左から大王製紙健保組合事務長・石村悦哉さん、大王製紙健保組合常務理事・石丸進さん、大王製紙労働組合執行委員長・井上俊正さん

大王製紙健保組合常務理事 石丸 進 さん
健康経営銘柄を取れるところまで到達できました。今後も取得し続けるには、同じことをしていてはいけないので、健保組合としては新たに編入した関連グループ会社への健康に対する意識付けや労使一体となった取り組みへの働きかけを加速させ、健康に無関心な人へのアプローチを強化したいと思います。

大王製紙健保組合事務長 石村 悦哉 さん
健保組合は診療所、健診施設を備えており、総合的な保健事業を実施できる恵まれた環境にあります。10年前に会社と労働組合と健保組合が一体的に協力し始めて、ここにきてようやく軌道に乗ってきました。グループの全社員が年に1度は必ず保健師と面談する体制を構築し、健康への関心度を高めたいと考えています。

大王製紙労働組合執行委員長 井上 俊正 さん
労働組合の活動方針として、これまで従業員の労働安全と家族を含めた健康保持を掲げてきたこともあり、会社側から健康経営の話が出たときは、何の違和感もなく取り組めました。普段から健保組合とは意思疎通が密に図られており、本社や他の工場に配置された保健師とも会って話しています。労働組合としては、健保組合が取り組む事業を後押しする役割も果たしていきたいと考えています。