健康コラム
ほっとひと息、こころにビタミン vol.91
精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。
【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕
苦手な電話を克服するには
電話が苦手な人は、少なくありません。そうした人が会社に入って苦労しているという話を聞くことがあります。電話に出たくないので退職したいといった事例もあるようです。
実は、私も電話は苦手です。電話をするにしても、受けるにしても、相手を不快にさせるのではないかと気になります。対面であれば、相手の表情や仕草で、その人が考えていることをある程度推測でき、不都合なことが起こりそうであればすぐに対応できます。また、メールやSNSであれば、文字以外の情報が少ないために、文章だけに集中できます。
しかし、電話は、話の内容だけでなく、声の調子などの他の情報が入ってくるだけに、自分が想像する要素が多くなります。そのため、つい良くないことを考えてしまいます。私たちは不確実な状況では、本能的に危険を大きく評価して自分の身を守ろうとするからです。
そのようなときは、想像を排除すること、行動すること、結果を検証することの3つを意識するとよいでしょう。これは電話に限ったことではありませんが、不安なとき、まずは想像を排除して、あくまでも事務的に考えるようにし、電話で話をすることのメリットとデメリットを考えてみます。
次に行動です。メリットが大きいと判断したときには電話で話をしてみます。最後に振り返りです。電話で話をして、自分の予想がどの程度当たっていたかを判断します。多くの場合、自分が予想したほど良くないことは起きないものです。もし良くないことが起きていれば、そこで対処すればよいのです。
大野 裕(ゆたか)
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる!うつの人が見ている世界』(池田書店)など。