健保ニュース
健保ニュース 2025年11月下旬号
財務省 社保改革案の第2弾
診療所の報酬を適正化
開業医給与、国際的に高水準
財務省は11日の財政制度等審議会の分科会で、社会保障改革案の第2弾を示した。第2弾では、開業医(診療所の院長)の給与水準の高さが国際的にも際立っていると強調し、第1弾と同様に、診療所への診療報酬は適正化し、高度急性期・急性期を中心とする病院への対応に重点化すべきと主張した。
来年度予算編成に対する建議(意見書)の取りまとめに向け、社会保障について2回に分けて改革案を示すのは5年ぶり。
「医療」の改革案では、メリハリのある診療報酬改定を実現するために、医療機関の機能・種類別の経営状況、収益費用構造などを踏まえたきめ細かな配分が不可欠と指摘。診療所の利益率や利益剰余金は高水準であるとし、「多くの診療所に経営余力が引き続き存在する」との見方を示した。
日本の開業医の給与水準は、日本の勤務医や経済協力開発機構(OECD)の開業医(自営)と比較して、「大きく乖離しているのが特徴」と強調した。
医療法人経営情報データベースシステム(MCDB)について、経営情報の「見える化」の肝となる職種別の給与・人数が任意提出項目とされていることを問題視し、義務化を唱えた。
また、医療提供の効率化に向け、▽人員配置基準の緩和、診療報酬上の評価の包括化▽タスクシフト・シェアの推進▽病床数の削減▽入院機能の高密度化、外来機能の集約化▽リフィル処方箋の拡充▽選定療養の拡充──などの方策を実行するよう求めた。
あわせて、国民健康保険の保険料水準の統一や後期高齢者医療制度の財政運営主体の都道府県化など、保険者機能やガバナンスの強化を訴えた。
財務省がこの日示した改革案は、「骨太の方針2025」に向けて5月に取りまとめた建議を踏襲し、「医療・介護分野の理想像」を章立てして▽質の高い医療・介護の効率的な提供▽保険給付範囲の適切な設定▽負担の公平化──の3つの切り口であるべき姿を描いた。
財務省は将来の医療・介護分野の理想像を考えるにあたっては、患者や被保険者、高齢者、医療・介護関係者、保険者、将来世代などステークホルダー(利害関係者)の「一定の納得感」を得る必要があると指摘し、それぞれの目線から見た理想像を提示した。
保険者目線では、「負担の公平化」として、マイナンバーの活用などにより被保険者の資産・所得の把握が可能となり、応能負担に基づく保険料・利用者負担の設定が実現し、保険財政運営が持続可能となっているとした。
患者や被保険者らの目線での「負担の公平化」は、保険者と同じ応能負担の実現に加え、保険料の上昇が賃金の伸びの範囲にとどまり、持続可能な皆保険制度が維持されていると掲げた。「保険給付範囲の適切な設定」では、診療・処方情報を医療機関や薬局が共有し、治療や投薬方法の標準モデルが確立・公開されているとした上で、医療サービス提供者との情報の非対称性の解消、セルフメディケーションの浸透などを見通した。
「介護」では、現役世代の保険料負担の増加を抑制するために制度改革を実施すべきと指摘した上で、2割負担の対象者の拡大を図る必要があると提言した。利用者負担を「原則2割」とすることや、3割負担(現役並み所得者)の判断基準を見直すことも検討するよう求めた。
また、現在は利用者負担がないケアマネジメントについて、「現役世代の保険料で肩代わりし続けることは世代間の公平の観点から不合理」と記し、利用者負担を導入すべきだとした。