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健保ニュース 2025年11月下旬号

保険料賦課に金融所得勘案
現行制度の不公平解消が焦点
国保と被用者保険のバランスも

厚生労働省は13日の医療保険部会に、医療保険制度における金融所得の勘案を提案した。株式配当などの金融所得は現状、確定申告すれば課税所得に計上されるが、申告せずに源泉徴収で済ませると計上されないため、確定申告の有無で社会保険の保険料や窓口負担などが変わる構造で、「不公平な取り扱いになっており、その是正に取り組む必要があるのではないか」と提起した。

一方、金融所得を勘案する場合、納めた市町村民税の所得情報に基づいて保険料の賦課が決まる国民健康保険に対し、被用者保険は賃金で保険料が決まり、同じ現役世代でも加入する保険者によって取り扱いに差が生じるため、国保と被用者保険との世代内のバランスを課題に挙げた。

また、保険者が金融所得を把握する手段として、金融機関が税務署に提出する法定調書の活用を想定するが、「法定調書のオンライン提出義務化」「法定調書へのマイナンバーの付番と正確性確保」「システム整備」といった実務面の課題も多いとした。

金融所得の確定申告の有無による課税所得への反映の違いについて、医療保険部会は、令和4年末の「議論の整理」に検討課題として盛り込んでいた。5年末の「改革工程」や6月の自民、維新、公明の3党合意と骨太の方針にも明記された。

自民と維新の連立政権合意書では、「金融所得の反映などの応能負担の徹底」が掲げられている。

また、厚労省は高齢者の金融所得について、株式保有者が高所得層に偏っているものの増加傾向にあることをデータで示した。

委員から確定申告の有無による不公平の是正に反対意見はなかったものの、国保と後期高齢者医療制度のみ金融所得を勘案すると、新たな不公平が生じるなどといった指摘もあった。

健保連の佐野会長代理は負担能力に応じた負担や負担の公平性の観点から、厚労省の提案に理解を示し、「現行の不公平な取り扱いは是正すべき」と主張した。

一方、「国保は市町村の税情報をベースに金融所得を把握できるが、被用者保険では現状、難しい」と課題を指摘した上で、「まずは後期高齢者を対象に検討することが現実的ではないか」と述べるとともに、実務面の課題への対策などの検討を求めた。

北川委員も金融所得の把握について、被用者保険の保険者にとっては極めて難しいとして、「現役世代に負担が偏りがちな社会保険の構造を見直す目的で検討してほしい」と要望した。

平山参考人は金融所得の把握に向けた事務的な課題に言及し、「保険料だけでなく、トータルでの所得捕捉に向けた方策について、関係省庁と連携し検討すべきだ」と指摘した。

袖井委員は「世代間の公平性を考えるなら、現役世代も金融所得を勘案すべき。後期高齢者医療制度のみを対象とすることには納得できない」と主張した。

前葉泰幸委員(全国市長会相談役・津市長)は国保と後期高齢者医療制度だけを対象にすると「新たな不公平が生じる。加入者の理解を得るのは難しい」と懸念を示した。

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