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健保ニュース 2025年11月中旬号

医療機関の業務効率化
DX推進 財政支援求める意見相次ぐ
人員配置基準の緩和も論点に

社会保障審議会医療部会(部会長・遠藤久夫学習院大学長)は10月27日、医療機関の業務効率化・職場環境改善の推進について、厚生労働省が提示した論点に沿って議論した。国や自治体によるDX推進への財政支援を求める声や、人員配置基準の緩和をめぐる意見が相次いだ。

論点の柱は①業務のDXの推進②タスクシフト・シェア推進など③地域における医療従事者の養成体制の確保④医療従事者の確保に資する環境整備など──の4つ。

厚労省はこのうち①について、物価や賃金の上昇でDXに投資できない医療機関がある一方、超過勤務時間や経費の削減などにつなげている先進的な医療機関も出てきているとした上で、▽業務効率化を実現した場合の人員配置基準の緩和▽医療機関が適正価格でICT機器を導入できる環境整備▽国や自治体のさらなる支援体制の構築──を必要とする指摘もあると説明した。

こうした指摘を踏まえ、業務効率化に向けた取り組みをさらに加速させるとともに、医療界全体として実効性ある取り組みにするために必要な支援や制度的枠組みの検討を求めた。

岡俊明委員(日本病院会副会長)は電子処方箋や電子カルテといった医療DXの必要性に言及する一方、「医療機関の業務効率化にあまり役に立っておらず、逆に負担が増えている」と話した。その上で、「医療DXと病院DXを切り分けて考えてほしい」と述べ、具体的に病院向けスマートフォンの導入について、国が「先行投資」として財政支援するよう求めた。

山本修一部会長代理(地域医療機能推進機構理事長)は、DXへの投資は「リターンが見込めない」と指摘。時間外勤務手当をどれだけ削減できるかなど、投資につながる具体的な数字を示す必要があるとの考えを示した。また、DXに向けた取り組みの医療機関間の格差拡大に留意し、底上げする施策を検討すべきだとした。

勝又浜子委員(日本看護協会副会長)は人員配置基準の緩和の検討について、「DXやタスクシフトなどの効果を十分に検証してからにしてほしい」とした。

佐保昌一委員(連合前総合政策推進局長)の代理として出席した永井参考人も、「人員配置基準は質の確保、向上を前提としたものであり、労働時間を短縮した分は他の業務に充てると思う。(業務効率化と)結びつけて論じることには違和感がある」と述べた。

神野正博委員(全日本病院協会会長)は人員配置基準や専従・専任要件などを緩和しなければ、「DXの果実が生まれない」として、DXの推進とあわせて人員配置基準を緩和するよう主張した。

長島公之委員(日本医師会常任理事)は医療DXについて、「各医療機関の実情を無視して、一律に進めることは医療の質の低下になりかねない」「導入の負担と効果をしっかりと見ながら丁寧に進めていくべきだ」などとした上で、導入にかかる費用について国や自治体の補助金による支援を要望した。

望月泉委員(全国自治体病院協議会会長)は現在の医療DXの推進に向けた診療報酬について、プロセス(過程)やアウトカム(結果)評価を取り入れることを求めた。

②は医師の直接指示がなくても、手順書に基づいて一定の診療の補助を行う「特定行為」の研修を終了した看護師の活躍促進に向けた取り組み、③は医療関係職を目指す若者が地域で必要な教育を受けられる、遠隔授業やサテライトの設置といった学習環境の整備、④は他産業と遜色ない賃上げの継続的な実施と、より少ない人員でも必要な医療ができる環境整備などを具体的な論点とした。

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