健保ニュース
健保ニュース 2025年11月中旬号
財務省が医療保険制度改革案
70歳以上の自己負担「3割」
現役世代の負担軽減重視 大胆な改革断行を
財務省は5日、財政制度等審議会の財政制度分科会で、医療保険制度と診療報酬を柱とする独自の改革案を提示した。医療保険制度改革では、70歳以上の患者の自己負担割合を現役世代と同様に3割にするよう提案し、実現に向けて具体的な道筋を示すべきと主張した。
高齢者の一般的な特徴として、外来受診回数が多く、1人あたり医療費も大きいが、高額療養費制度による外来特例もあって、実際の自己負担額は低く抑えられていると指摘。70歳以上の自己負担は、医療費の低い現役世代と比べて割合が大きく低下し、65~69歳との比較では実額でも下回る状況を受けて、年齢による自己負担割合の不公平を是正する必要があると強調した。
自己負担増に伴い受診抑制を招くとの懸念に対しては、有識者による研究結果を引き合いに「高齢者の自己負担増によって、必要な受診行動は抑制されることなく、医療費適正化を実現できる可能性を示すものとして参考にできる」と評価した。
給付と負担のバランスでは、75歳以上の1人あたり医療費が現役世代の約4.4倍に上る中、現役世代が納める保険料の多くが高齢者医療の支援に充てられているとし、その例示として健保組合の拠出金負担割合が約47%に達していることを取り上げ、現役世代の負担増大を問題視した。
団塊の世代全員が75歳以上となる2025年に向けて、これまで改革を進めてきたが、「現役世代の保険料負担軽減という観点からは、なお不十分と言わざるを得ない」とし、「早急に検討に着手し、大胆な改革を断行することが求められている」と訴えている。
負担のあり方については「年齢ではなく能力に応じた負担」とすることを改革の基本に据えた。
後期高齢者で3割負担に該当する「現役並み所得」の判定基準は、対象を広げる観点から、課税要件の撤廃と併せて、世帯収入要件を「年金収入+その他合計所得金額」に変更することなどを検討課題に挙げながら、「ゼロベースでの検討を加え、早急に見直しに着手すべき」とした。
後期高齢者の保険料負担については、令和5年の健保法等改正で高齢者の保険料と現役世代の支援金の伸びが同じになるよう見直したが、「後期高齢者の負担率の上昇は緩慢」と指摘。改革の方向性として、金融所得や金融資産も負担能力に勘案することで、保険料賦課ベースを拡大することと併せて、現役世代の支援金負担割合を縮小させることを提案した。
また、上場株式などの配当金など金融所得は確定申告を行わなければ、保険料や窓口負担の算定対象外となるが、こうした仕組みを改め、「能力に応じた公平な負担を実現すべき」と主張。併せて、「(保険料)賦課ベースの拡大による保険料収入の増加分を活用し、後期高齢者支援金を削減することで現役世代の負担軽減につなげるべき」と提起した。
高齢者の金融資産について、まずは医療保険で入院時生活療養費の負担能力の判定に反映させるよう検討を促した。