健保ニュース
健保ニュース 2025年11月中旬号
長期収載品の選定療養
厚労省 患者負担の引き上げを提案
後発品使用促進を強化
医療保険部会は6日、医療保険制度改革に向けた薬剤給付のあり方を議論した。厚生労働省は昨年10月に始まった長期収載品の選定療養が後発医薬品の使用促進に一定程度寄与したとして、さらなる活用に向け、患者の希望で長期収載品を使用した場合の負担について、全額を患者に求めることも含めた引き上げを提案した。
委員からは後発品の供給不足の解消が大前提だとする声が相次いだが、明確な反対意見はなかった。患者負担の引き上げ幅が焦点になる。
厚労省はこのほか、バイオ医薬品とOTC類似薬の保険給付の見直しについても提案した。
長期収載品の使用にあたっては、「銘柄名処方で、患者希望で長期収載品を処方・調剤した場合」「一般名処方の場合」は選定療養の対象とし、患者は長期収載品と後発品との差額の4分の1を1~3割の自己負担額に上乗せして支払っている。
ただし、「医療上の必要があると認められる場合」「薬局に後発品の在庫がないなど後発品の提供が困難な場合」は保険給付の対象になる。
選定療養の対象になるのは、後発品上市後5年経過した長期収載品と、後発品への置き換え率が50%に達している長期収載品。
厚労省は同制度に関するデータを提示した。導入直後、数量ベースの後発品割合は増加したものの、近年は横ばいになっている。
昨年11月の選定療養の対象になったレセプトの件数は約368万件で、全体の4.9%だった。患者が負担した金額の分布は、1000円未満が90%、3000円未満が99.8%を占めるが、1万円以上になるケースもあった。
医薬品の供給状況は徐々に改善しているが、約12%の品目でいまだ供給停止や限定出荷が続いている。
また、薬局などの現場では、患者への制度の説明などが負担になっているほか、「制度そのものがわかりづらい」という意見もあった。
こうしたデータを踏まえ、厚労省は論点として、創薬イノベーションの推進や後発品のさらなる使用促進に向け、長期収載品のさらなる活用を提起した。選定療養の患者負担について、長期収載品と後発品の価格差の「2分の1」「4分の3」「1分の1(全額)」に引き上げる3案を示した。
健保連の佐野雅宏会長代理は、医療保険制度を維持するために保険給付範囲の見直しが必要だと強調した上で、薬剤給付の議論を始めた10月16日の会合に続き、長期収載品の選定療養について、「患者への影響を踏まえつつ、負担額を引き上げるべきだ」と訴えた。
また、「選定療養の対象範囲を拡大する方法もある」と提案し、選定療養の対象にならない「医療上の必要があると認められる場合」を厳格に精査するなど、課題を整理し具体的な見直し案を示すよう改めて求めた。
北川博康委員(全国健康保険協会理事長)は選定療養の負担を「全額患者負担にすべきだ」と訴えた。
一方、城守国斗委員(日本医師会常任理事)は「選定療養の前提となる医薬品の供給不足がまだ続いており、地域差もあるので、国にもっと強力に支援してほしい」と要望するとともに、制度の周知を求めた。
また、患者に大きな自己負担が生じる可能性があるとして、「さらなるデータ分析が必要だ」と慎重な姿勢をみせた。
バイオ後続品使用促進へ
保険給付のあり方議論
厚労省はバイオ医薬品について、「製造工程が複雑で、製造体制確保に時間がかかる」「先行品と後続品の有効成分が同一ではなく、後続品への切り替えに医師の判断が必要」「先行品と後続品に共通の一般名がない」「後続品への置き換え率が低く、成分により差がある」といった特徴を挙げた上で、患者がバイオ後続品を選択できる環境を整備するための方策を委員に求めた。
佐野会長代理は後続品への置き換えをさらに促すとともに、「置き換えが一定程度進んでいる先行品については選定療養の対象にするなど推進を図るべきだ」と述べた。
北川委員も同様に、後続品がある先行品について、選定療養を導入するよう検討を求めた。
一方、林鉄兵委員(連合副事務局長)は「バイオ医薬品はまだ選定療養を活用する段階にない」と主張するとともに、後続品の使用促進に向け、品目による置き換え状況の差を詳しく分析した上で議論する必要があるとした
城守委員も「バイオ後続品の活用推進には、まだ患者の不安が大きい」と指摘し、バイオ医薬品の特性を理解した上で検討を進めるべきだと述べた。
渡邊大記委員(日本薬剤師会副会長)は先行品を使用している患者が後続品に置き換えるのは、「新規処方に近く、医療機関と薬局の連携体制が必要だ」と述べた。