健保ニュース
健保ニュース 2025年10月上旬号
中医協分科会がとりまとめ
入院評価 医療機関機能踏まえ見直し
かかりつけ医機能報告制度 関連づけは両論併記
入院・外来医療等の調査・評価分科会(分科会長・尾形裕也九州大名誉教授)は9月25日、令和8年度診療報酬改定に向け、分科会の検討結果(とりまとめ)案を分科会長一任で了承した。
入院医療では、新たな地域医療構想で報告が求められる医療機関機能を踏まえた診療報酬上の評価の見直しを提言した。外来医療では「生活習慣病管理料」による継続的な医学管理のあり方の検討を盛り込んだが、かかりつけ医機能報告制度を踏まえた評価の見直しについては賛否両論を併記した。
とりまとめ案は、分科会が8月6日の総会に報告した6年度調査結果に基づく中間まとめに、7年度調査結果に対する評価を加え、分科会の意見を整理した。近く、中央社会保険医療協議会総会に報告する。
急性期の入院医療については、新たな地域医療構想で医療機関が担う役割を「高齢者救急・地域急性期機能」、「急性期拠点機能」としたことを踏まえ、それぞれ対応する形で「一般的な急性期機能」、「拠点的な急性期機能」を整理した。その上で、救急医療提供体制と手術実績、幅広い診療科に対応可能な総合診療体制を評価軸として診療報酬上の評価を検討した。
一般的な急性期機能については、人口20万人未満の2次医療圏で救急搬送件数は多くないが地域の救急搬送の多くをカバーしている病院がある現状から、人口や医療機関の規模も勘案し、救急搬送の受け入れに係る地域のシェア率(2次医療圏内の全医療機関の年間の件数に対する当該医療機関の件数)も評価すべきとした。
また、最も手厚い看護配置の「急性期一般入院料1」を算定する病院と算定しない同規模の病院を比べても、救急搬送受け入れ件数や手術件数にばらつきがあったことを踏まえ、「急性期の一般病院は、DPC制度に参画することが望ましい」と提言した。DPC制度は急性期入院医療の標準化を目的としていることから、制度を通じて一定の医療提供体制を確保すべきとした。
拠点的な急性期機能については、総合的な診療体制を評価する「総合入院体制加算」と高度な手術実績を評価する「急性期充実体制加算」を届け出ている病院の現状から評価のあり方を検討した。
総合的な診療体制は、新たな地域医療構想では急性期拠点機能に明示されていないが、今後、人口の少ない地域を中心に病院の集約化が進む観点から、重要な要素に位置づけた。
6年度調査によると、両加算を算定している病院は算定していない同規模の病院と比べて複数診療科の標榜割合が高く、DPC病院の総合的な体制を評価する「カバー率指数」も高かったことから、DPC制度に入院基本料と両加算を組み合わせた新たな病院群を定義することを提案した。
また、両加算は救急医療体制などの施設基準で共通する部分が多いほか、手術などの実績要件の充足度が類似する調査結果が示されたことから、両加算の統合を求めた。
両加算を一体的に見ると、実績要件を満たす項目が多いほど救急搬送、全身麻酔手術件数が多く、より拠点的な急性期の病院として評価すべきとした。
高齢者の入院増へ
病院単位で役割評価
包括的な機能を担う入院医療については、高齢者の入院の増加を見据え、「救急搬送から自宅に退院するまで1つの病院で対応することが望ましく、担う役割に応じて病院単位で評価する必要がある」とした。
新たな地域医療構想では、高齢者の救急搬送の受け入れや専門病院や施設との連携、入院早期からのリハビリテーション、退院支援を担う医療機関機能が求められている。
こうした機能を持つ病棟として6年度改定で新設した地域包括医療病棟について、「急性期一般入院料2~6」を算定する病院と各病棟に入院する患者像を比べると、疾患や要介護度、年齢層の分布で大きな差がなかった。これを踏まえ、両病棟を持つ病院は、高齢者の発症頻度の高い疾患に応じて患者を地域包括医療病棟に振り分けることを提案した。
地域包括ケア病棟でも、地域包括医療病棟並みに救急患者を受け入れている病院がある現状を示し、こうした病院を新たに評価すべきとした。
また、内科系疾患(誤嚥性肺炎、脳梗塞、尿路感染症)と外科系疾患(整形外科系)の包括範囲内の医療資源投入量を比べると、内科系疾患の方が出来高点数に対する請求点数が低かった。今後、高齢者の入院増により内科疾患に幅広く応じる必要があることから、バランスが取れるよう投入する医療資源や診療内容の再検討を求めた。
生活習慣病管理料
継続的な受診を重視
外来医療のうち、高血圧症や脂質異常症、糖尿病を主病とする患者の総合的な治療を目的とする「生活習慣病管理料」については、「患者が治療から脱落せずに継続的に受診を続けることが重要」として、予約診療や長期処方への対応、適切な医学管理が必要とした。
6、7年度調査の結果から、6か月ごとの継続算定率が医療機関ごとにばらつきがあり、6か月間検査が実施されていない患者が一定数いることも示されている。
また、かかりつけ医機能の評価については、かかりつけ医機能報告制度に沿った見直しを求める意見と、「制度はあくまでも報告に過ぎず、診療報酬と関連させるものではない」とする意見を併記した。
かかりつけ医機能を評価する「機能強化加算」についても、「地域包括診療料・加算」などの届出さえあれば「かかりつけ医機能が高い」とする現行の考え方の見直しを要請する意見を明記しつつ、診療報酬上の評価は制度の趣旨を踏まえ慎重に検討するべきとの意見も記した。
外来機能分化については、症状が落ち着いた患者を大病院からかかりつけ医機能を担う地域の診療所や中小病院に紹介する「逆紹介」割合が、特定機能病院が他の病院よりも低い現状を示した。地域の診療所との連携を進めるとともに2人主治医制の導入も含めた継続的な医学管理の検討が必要とした。
このほか、消化器外科医師数の減少に対応するため、高難度手術を集約化する必要性などが明記された。
とりまとめ案には初めて、「中長期的に検討すべき課題」が盛り込まれた。具体的には、急性期入院医療を必要とする患者を適正に評価する「重症度、医療・看護必要度」のあり方を検討する前提となる、入院患者に提供されるべき看護必要度の予測などを挙げた。来年度以降の実態調査などで検討を進めるとした。