健保ニュース
健保ニュース 2025年10月上旬号
健保連 第536回理事会
皆保険維持へ全国大会で改革断行を訴求
宮永会長「団結して総力挙げる」
健保連は9月19日、第536回理事会を開き、令和7年度健保組合全国大会や「ポスト2025」健康保険組合の提言の広報展開などを審議し、了承した。冒頭にあいさつした宮永俊一会長は、10月22日の全国大会を健保組合の主張を内外に発信する重要な場と位置づけ、「皆保険の持続可能性を確保するため、現役世代の負担を軽減し、全世代で支え合う制度の実現に向けた改革の断行を訴えていく」と述べた。また、「臨時国会において、高額療養費制度の見直しや補正予算など健保組合に重要な課題の審議が予定されている」とし、「皆保険制度を持続可能とするため、健保組合が団結し、総力を挙げて問題に取り組むことが大事だ」と強調した。〈宮永会長の発言要旨は次の通り。〉
石破首相が9月7日に退任を表明したことに伴い、10月4日に自民党総裁選の投開票が行われ、新たな総裁が選出される。
7月の参院選では、自民、公明の与党は過半数に届かず、衆参両院で少数与党となったため、国会審議でも法案ごとに野党との連携が欠かせず、厳しい政権運営が続いた。直面する国内外の課題に対し、政治的空白を作らず、日本を前に進めるための苦渋の決断だったと思う。
一方、世界情勢はいまだ混沌とした状態が続いており、ロシアによるウクライナ侵攻は有効な解決策を見いだせず、中東のガザ地区の人道危機も深刻化している。
また、トランプ政権による関税措置が正式に発動され、製造業を中心とした主要輸出品に大きな影響を与えている。他国の対抗措置や為替、政策金利などの要因も複雑に絡み合い、物価高騰も重なったことから、影響は国内外に広がっている状況だ。
このような複雑で不安定な状況下で、次の内閣がどのような枠組みとなっても、国益確保と国民生活の安心・安全を第一に与野党が知恵を出し合い、より良い方向にかじ取りをすることを強く願う。
こうした中、我が国が直面している最大の課題の一つが少子化だ。厚生労働省が8月29日に公表した人口動態統計の速報値によると、2025年上半期の出生数は約33万9000人で、比較可能なデータがある1969年以降、上半期として最少であり、この傾向が続けば、通年でも過去最少を更新するペースだ。
政府は少子化に歯止めをかけるため、「こども未来戦略加速化プラン」を策定し、幅広い対策を講じている。しかし、効果が表れるのは少なくとも10年、20年を経た時代になると思われ、長期的な視点で粘り強く対策を講じなければならない。
その財源を確保するため、来年度から子ども・子育て支援金の徴収が始まる。子ども・子育て支援金は被用者保険において、国から一律の率が示されることとなったが、支援金を負担する加入者や事業主への周知などについても、現場の健保組合から心配の声をいただいている。
健保連としても円滑な制度導入に向け、政府に対して制度開始の周知を働きかけるとともに、健保組合に対しては迅速に情報提供する。
将来世代のために、今を生きる私たち全ての世代、全ての経済主体が一体となり、後の世代である子どもの誕生と成長、そして子育て世帯を応援する大切な仕組みであることは事実であり、私たち医療保険者もその重責の一翼を担っていきたい。
厚労省の発表によると、23年度の介護給付費は10兆8263億円で過去最高を更新した。介護保険制度が始まった00年度から約3.3倍に給付費が膨らむ状況で、少子高齢化が進む今、介護保険の動向も危惧している。
医療保険についても、これから高齢化のピークを迎える40年ごろにかけて、高齢者医療費の急増が見込まれる。足元では企業の好調な業績と賃上げ効果で保険料収入は増加しているが、それを上回る高齢者医療への拠出金の伸びにより、25年度以降もさらに厳しい財政状況が続くことが予想される。
すでに保険料率の引き上げも限界に達しており、このままでは健保組合の存続も危ぶまれる状態になりかねないと大変危惧している。
こうした状況を踏まえ、10月22日に迫った健保組合全国大会は「皆保険存続の危機!持続可能な制度のために今こそ抜本改革を─現役世代を守れ、2025年問題は終わっていない─」をテーマに掲げた。
これまで加入者の健康を支えてきた健保組合の財政悪化は続いており、追い込まれた健保組合の解散が相次ぐと、国民皆保険制度の根幹を揺るがす事態になりかねない。
団塊の世代全てが75歳の後期高齢者となった現在の状況において、長期にわたり減少する現役世代で増加する医療費を負担しなければならないといった、いわゆる「2025年問題」は終わっていない、むしろ深刻化しているという危機感から、このテーマを定めた。
国民の安心の礎である我が国の皆保険制度は素晴らしい制度だが、その持続性を確保するため、何としても制度の支え手である現役世代の負担を軽減し、全世代の人々が互いに支え合う制度の実現に向けた改革の断行を全国大会で訴えたい。
また、医療費の適正化・効率化に資する給付と負担の見直し、安心・安全で効果的・効率的な医療提供体制の構築と医療DXの推進など、より良い社会保障制度の実現に向け、取り組まなければならない課題についても主張する。
本日はこの全国大会の構成を中心にご審議いただく。全国大会は私たちの主張や考えを内外に発信する大変重要な場であり、健保組合の団結力を示し、思いの強さをアピールする絶好の機会でもあるので、ぜひ活発な議論をお願いする。
12月に迫るマイナ保険証への完全移行について、健保組合の皆さんに移行への準備や対応に率先してご尽力いただき感謝申し上げる。現場の皆さんや事業主の尽力もあり、加入者の保険証のひも付け率や利用率なども徐々に上がっている状況だ。
マイナ保険証だからこそ、質の高い医療を受けることができる。また、利便性が向上するとともに健康リテラシーを高められる。こうしたメリットを加入者に届けられるよう、健保組合の皆さんの引き続きの協力をお願いする。
先月末に開催された社会保障審議会の医療部会、医療保険部会では26年度診療報酬改定の基本方針策定に向けた議論が始まった。
新内閣の下で開会が見込まれる臨時国会においても、物価高騰、経済対策としての補正予算審議のほか、見送りとなった高額療養費制度の見直しなど国民生活に欠かせない課題が多く残っている。医療保険者である私たち健保組合にとっても、大変重要な課題だ。
国民の健康を支える皆保険制度を全世代で支える持続可能な制度とするため、私たち健保組合が団結し、総力を挙げて問題に取り組むことが非常に大事だと思う。私も微力ながら先頭に立ってまい進していく。まずは今年の全国大会の成功に向け、理事の皆さんの支援、協力をお願い申し上げる。