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健保ニュース 2025年10月上旬号

皆保険の危機背景に健保連提言
健保組合の「お願い」「約束」「挑戦」
米川副会長 実現へ国民の理解不可欠

健保連は9月25日の記者会見で、「ポスト2025」健康保険組合の提言を発表した。国民皆保険制度の維持や現役世代の負担軽減に向け、医療費のさらなる増大や現役世代に偏った負担構造といった危機的な状況を国民に訴える。健保組合から加入者や国、医療提供者、事業主へのお願いや提案を示すとともに、今後の健保組合の取り組みや挑戦を、国民へのアンケートの結果も踏まえてまとめた。米川孝副会長は「わかりやすく加入者、国民に伝えたい」と語り、提言の実現に向けて取り組む上で、国民の理解が重要だと強調した。

提言は健保組合の取り組みとして、「加入者(国民)の皆さまへの3つのお願い」と、それを後押しする「健康保険組合の4つの約束」、社会の変化に対応しながら、個々の組合の状況や加入者の特性に応じた先進的な取り組みに挑戦する「健康保険組合が取り組む5つのチャレンジ」を掲げる。

併せて、国や医療機関、事業主といった関係機関への要望をまとめている。

米川副会長は関係機関への要望について、「一緒に考えませんかという提案だ」と表現し、ステークホルダーの理解と協力の下、提言の実現に向けて取り組む姿勢を示した。

背景には国民皆保険の危機的状況がある。提言では、医療費のさらなる増大や給付と負担のアンバランス、医療や介護の提供体制の効率化、健保組合の財政悪化による解散を例示し、「危機的な状況を早急に打開し、大きく流れを変えなければ、将来に向けて国民皆保険制度を維持できなくなる」と危惧する。

危機的状況への理解
加入者に3つのお願い

加入者(国民)へのお願いは、「医療費の仕組みや国民皆保険制度の厳しい状況についてもっと知ってください」「自分自身で健康を守る意識を持ってください。健診をきちんと受けてください」「軽度な身体の不調は自分で手当てするセルフメディケーションを心がけてください」の3つ。

具体的には、医療費の大部分が保険料で賄われていることへの理解や、自らの健康を自ら守る意識を持つこと、セルフメディケーションの実施、かかりつけ医を持つこと、マイナ保険証の積極的な利用などを呼びかける。

加入者の健康増進
4つの約束で支援

加入者への3つのお願いを後押しする「4つの約束」には、「各種健診を受診しやすいよう、こまめに働きかけます」「一人ひとりの健康状態に合わせた丁寧な保健指導を実施します」「予防・健康づくりに役立つ情報を提供します」「環境変化に応じた予防・健康づくりに取り組みます(事業主との連携)」を挙げた。

健保組合が生活習慣病健診やがん検診などの受診を加入者に呼びかけるとともに、事業主と協力して適切な受診環境を整備することなどを約束する。

また、健診結果に合わせた迅速かつ充実したフォローや、ヘルスリテラシー醸成のための正しい知識の提供、コラボヘルスの取り組みなどを盛り込んだ。

加入者特性に対応
5つのチャレンジ

健保組合の「5つのチャレンジ」には、「多様な働き方に対応した保健事業の充実強化」「かかりつけ医の連携」「健保組合の発信力強化」「データ分析強化による加入者サービスの充実」「デジタル化による健保組合業務革新」を掲げた。

保健事業の充実強化には高齢者のロコモティブシンドローム対策や女性特有の健康課題への対応、子ども・子育て支援などを例に、新たな視点の予防・健康づくりに取り組むとした。

また、かかりつけ医との連携については、疾病予防や健康増進に向けた協力関係を推進する。

負担の公平性確保など
打開策6項目を国に要望

国に対し実行、整備を求める事項には、①負担の公平性の確保②保険料と公費(税)の負担構造の見直し③保険給付の見直し④医療提供体制の改革⑤医療DX施策の強化⑥国民への周知・啓発──を並べた。

①は高齢者医療制度創設当時からの高齢者の就労状況などの変化を踏まえ、自己負担割合の年齢区分を見直すよう訴える。

具体的には、2割負担の対象を75~79歳に、1割負担の対象を80歳以上に、それぞれ5歳引き上げる。併せて、後期高齢者の現役並み所得者の範囲拡大と、給付費への公費投入をセットで導入すべきとした。

②は現役世代の保険料負担軽減や将来世代の負担を考慮し、応能負担の実現を目指しつつ、保険料と公費のバランスの一体的な見直しを訴える。将来的に増加が見込まれる高齢者医療や介護、少子化対策への支援は、保険料の負担増でなく、公費で賄うべきとした。

また、医療保険制度の負担構造について、学校教育や広報を通じた周知、啓発も求めた。

関係機関へのお願い
DXやコラボヘルス強化

医療提供者へのお願いには、地域医療構想の実現やかかりつけ医機能の充実に取り組み、患者の日頃からの予防やセルフメディケーション、適切な受診の支援を挙げた。かかりつけ医と健保組合の連携の検討も依頼する。

さらに、費用対効果や経済性を考慮した医療サービスの提供とともに、医療情報プラットフォームによる患者情報の共有、活用などスピード感を持って医療DXを進めるための積極的な取り組みも求めた。

事業主に対しては、健康経営の推進や従業員の健康意識醸成、健保組合DX推進のための電子申請やマイナ保険証対応に加え、保健事業などへの協力、連携の継続、強化を要請する。

提言の結びでは、国民皆保険制度を将来に引き継ぐため、様々な課題を一つ一つ克服していかなければならないとし、健保組合は関係するステークホルダーの理解と協力の下、実現に取り組むと宣言。取り組みには、特に加入者の理解と支援が重要だと強調した。

「ポスト2025」健康保険組合の提言

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