健保ニュース
健保ニュース 2025年10月上旬号
健保組合 6年度決算見込み
収支改善も半数近くの組合が赤字
拠出金 5.7%増の3.8兆円
健保連は9月25日、厚生労働省内で記者会見を開き、健保組合の令和6年度決算見込みを発表した。経常収支差引額は145億円で、前年度の1365億円の赤字から2年ぶりに黒字に転じたが、全体の47.9%、660組合が依然として赤字だった。賃金上昇に伴う保険料収入の伸びと保険料率の引き上げで経常収入は増加。平均保険料率は前年度比0.04ポイント増の9.31%で、過去最高となった。高齢者医療への拠出金も5.7%増の3兆8591億円に上り、過去最高を更新した。健保連の佐野雅宏会長代理は「保険料率の引き上げがなければ赤字だった。財政状況は大変厳しい」との認識を示した。
保険料率は過去最高の9.31%
健保組合全体の6年度決算見込みは、健保連に報告があった1377組合の数値(8月時点)に基づき、3月末時点に存在する1378組合の財政状況を推計した。
被保険者1人あたり平均標準報酬月額は前年度比2.4%、9314円増の39万8362円、平均標準賞与額は3%、3万7176円増の127万5287円で、いずれも増加した。
組合数は2組合減の1378組合で、被保険者数は1.1%、18万3598人増の1692万9571人だった。男女別にみると、男性が0.3%、2万9331人増の1089万2448人、女性が2.6%、15万4267人増の603万7123人だった。
被扶養者数は2.9%、33万2598人減の1103万3491人で、扶養率は0.03ポイント減の0.65だった。
1人あたり保険料
最高の54万146円
平均保険料率(調整保険料率を含む)は9.31%で、0.04ポイント上昇し、過去最高となった。単一組合(1123組合)は9.18%、総合組合(255組合)は9.87%となる。
また、収支均衡に必要な財源を賄うための実質保険料率は0.06ポイント減の9.30%となった。
被保険者1人あたり保険料負担額は3.7%、1万9522円増の54万146円で過去最高だった。
保険料を引き上げた組合は147組合、引き下げた組合は70組合。協会けんぽの平均保険料率(10%)以上の組合は334組合で、全組合の24.2%と約4分の1を占めた。
賃上げで保険料収入増
給付はコロナ特例廃止で鈍化
6年度決算見込みの収支状況をみると、経常収入総額は4.9%増の9兆2677億円、経常支出総額は3.2%増の9兆2531億円で、経常収支差引額が1510億円改善し、145億円の黒字を計上した。
経常収入のうち、保険料収入は9兆1444億円で4261億円、4.9%増加しており、30数年ぶりの高い賃上げや保険料率の引き上げが影響した。
支出面は保険給付費が1.3%、623億円増の4兆7925億円で、6年度の医療費の伸びが新型コロナの特例措置の廃止などにより1.1%増と低かったことを受けた。
高齢者医療への拠出金は全体で5.7%、2065億円増の3兆8591億円となり、過去最高となった。このうち、前期高齢者納付金は6.6%、997億円増の1兆5995億円、後期高齢者支援金は5%、1068億円増の2兆2593億円で、いずれも保険料収入の伸びを上回っている。
このほか、データヘルス計画など、加入者の健康維持・増進のための保健事業費は2.6%、97億円増の3912億円だった。
健保組合別の状況をみると、赤字組合は66組合減の660組合(構成割合の47.9%)で、依然として半数近くの組合が赤字となっている。赤字組合の赤字総額は800億円減の2066億円に達する。
黒字組合は64組合増の718組合(同52.1%)。黒字総額は710億円増の2212億円となった。
義務的経費に占める拠出金
50%以上の組合、2割近く
法定給付費と拠出金を合わせた義務的経費に占める拠出金の負担割合は45.1%(後期高齢者支援金26.4%、前期高齢者納付金等18.7%)だった。負担割合が50%以上の組合数は253組合(全体の18.4%)、40%以上50%未満の組合数は880組合(同63.9%)で、拠出金の負担割合が大きい状況となっている。
7年度の財政見通し
2200億円の黒字
7年度の財政見通しでは、経常収入が6年度決算見込みに比べ5023億円増の9兆7700億円、経常支出が2969億円増の9兆5500億円で、経常収支差引額は2055億円増の2200億円の黒字を見込んだ。
経常収入のうち保険料収入は、賃上げや保険料率の引き上げが継続すると予測し、5.4%増の9兆6400億円とした。
支出面では、保険給付費が3.1%増の4兆9400億円を見込む。直近4~6月の医療費の動向が3か月平均で2.9%増となったことを踏まえ、新型コロナ拡大以前より高い伸び率を前提とした。
拠出金は、前期高齢者納付金が2.5%減の1兆5600億円としたが、後期高齢者支援金は7年度に団塊の世代全員が75歳以上となるため、3.6%増の2兆3400億円と試算した。
あわせて、9年度以降は前期高齢者の割合の上昇で前期高齢者納付金が増加する一方、現役世代の減少は続くため、「拠出金の負担増は必至」だとし、今後の財政悪化を危惧した。