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健保ニュース 2025年9月下旬号

地域医療構想検討会
診療科偏在 3つの視点で議論
担い手やアクセス確保など

厚生労働省は11日の地域医療構想及び医療計画等に関する検討会に、診療科の偏在対策について、「担い手の確保」「地域の医療提供体制維持」「地域偏在が大きい診療科のアクセス確保」の3つの視点を提示し、これに基づいて検討する方針を示した。構成員から反対意見はなかった。

医師の偏在については、これまでの検討会の議論で、医師の総数の面での都道府県格差や都道府県内の医師少数地域、地方の若手医師の流出・減少、診療科の偏在の4つが課題に挙げられていた。

医師数自体は年々増えているものの、外科医は平成20年からほとんど増えていない。また、医師少数区域の医師数は、診療科によって不足の程度が異なる。

こうした実態を踏まえ、厚労省は診療科の偏在対策を検討する視点として、①地域ニーズがあるが、医師数の伸びが緩慢など、担い手を確保する観点で対策が必要な診療科②医療計画に基づき地域の医療提供体制を維持する観点で対策が必要な診療科・領域③医師少数区域で医師数が少ないが、一定の医療ニーズが見込まれる場合、地域でのアクセスを確保する観点で対策が必要な診療科──の3つを提案した。

①は総合的な診療に従事する医師や外科医、②は小児科や産婦人科、救急、がん、③は皮膚科や耳鼻咽喉科、眼科などを例示した。

それぞれの対応の方向性について、①は厚労省が昨年末に取りまとめた「医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージ」に基づき取り組みを進める方針だ。

②のうち小児科と産婦人科については、医師確保計画を通じた医師偏在対策に取り組みつつ、検討会の下に設置する小児医療と周産期医療に関するワーキンググループで医師確保を含む提供体制のあり方を検討すると提案した。

③は人口減少が進む地域は患者数が限られるため、オンライン診療を含む遠隔医療の効果的、効率的な活用を検討するとした。

健保連の伊藤悦郎常務理事は、時間外・休日労働時間が長い医師の割合が高いなどの課題を抱える外科医について、「人材を集約し、協力することも重要なのではないか」と提案した。

また、オンライン診療の活用には期待を示しつつも、限界があるとして、医師の偏在是正に向け、「診療科の偏在と地域偏在の対策をセットで検討する必要がある」と主張した。

川又竹男構成員(全国健康保険協会理事)は「単に医師を増やすだけでなく、アクセスの改善などの工夫によって必要な医療を確保する取り組みを積極的に進めてほしい」と述べた。

尾﨑誠構成員(長崎大病院長)は遠隔医療について、その内容や必要な設備に見合う診療報酬が手当てされなければ普及、定着しづらいとして、「現場への実装にあたっては、その特徴やコスト、診療報酬をより詳細に検討してほしい」と要望した。

今村英仁構成員(日本医師会生涯教育・専門委の仕組み運営委員会センター長)は総合的な診療に従事する医師について、「地域によって求められる役割が異なる可能性がある」と指摘し、整理が必要だとした。

菅原琢磨構成員(法政大教授)は、3つの視点に医療の緊急性など時間軸を加味するよう提案した。

医師偏在指標に
地理的要素を反映

厚労省はこの日の会合で、次期医師確保計画での医師少数区域の設定にあたり、現行の医師偏在指標に、地域の人口密度や医療機関へのアクセス、離島や豪雪地帯といった地理的な要素を反映することを提案した。

あわせて、指標の算出のための性・年齢階級別の医師の労働時間比率について最新のデータを使うことや、医師の年齢構成の違いを反映させることも提案した。構成員から異論はなく、今後、具体的な反映方法を検討するとした。

伊藤常務理事は医師偏在指標への地理的要素の反映に賛同し、「医師少数区域の設定は、客観的に妥当性を判断できることが重要だ」と強調した。

その上で、「まず現行の医師偏在指標で候補となる医師少数区域を選定し、地理的要素の尺度を活用して決定するのが、住民にも保険者にもわかりやすい」と述べた。

土居丈朗構成員(慶応義塾大教授)も地理的要素の反映は「医師偏在対策を検討する上で重要だ」と述べて賛同した。

反映にあたっては、医師偏在指標の計算式に組み込むのではなく、「医療圏ごとにレーダーチャートで地理的要素など複数の指標を可視化することで、各区域での検討に活用できるのではないか」と提案した。

今村構成員は「隣接する都道府県の医療機関へのアクセスを考慮するかもポイントになる」と指摘した。

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