健保ニュース
健保ニュース 2025年9月下旬号
中医協が調剤報酬を議論
松本理事 後発品体制加算の継続に異議
診療側委員は反発
中央社会保険医療協議会(会長・小塩隆士一橋大経済研究所特任教授)は10日、令和8年度診療報酬改定に向け、調剤に関する評価について議論した。健保連の松本真人理事は、6年度改定で導入した長期収載品の選定療養化によって停滞していた後発医薬品の使用割合が大幅に増えたとして、薬局の積極的な取り組みを評価する「後発医薬品調剤体制加算」の継続に異議を唱えた。
これに対し、診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、 後発品の供給不安がある中で、薬局は医薬品の確保と利用促進に努めているとして、「同加算は引き続き必要」と主張した。
薬局数は年々増加し、5年度末時点で6万2828施設に上るが、都道府県別にみると東京や大阪など都市部で増加する一方、地方では減少もみられる。薬剤師数は4年末時点で32.4万人となり増加傾向にあるが、薬局勤務の薬剤師が20万人で最も多く、病院や診療所勤務は6.2万人にとどまる。
なお、平成27年に厚生労働省が策定した「患者のための薬局ビジョン」では、2025年までにすべての薬局をかかりつけ薬局に、2035年までに薬局の立地を門前から地域に移行する方向性が示されている。
こうした現状を踏まえ厚労省は、地域の医薬品供給拠点の役割を一層充実させる観点から「調剤技術料」を、薬剤師の対人業務を拡充させる観点から「薬学管理料」をどう評価するかを論点として示した。
6年度改定では、地域医療に貢献する薬局を整備し、職員の賃上げを促進するため「調剤基本料」を引き上げた。さらに、かかりつけ機能を評価する「地域支援体制加算」を見直し、施設基準や実績要件を強化するとともに、同一敷地内薬局への評価を引き下げた。
地域支援体制加算の施設基準には、医療用医薬品1200品目の備蓄が定められている。6年度の薬局機能に関する調査では、同加算を算定する薬局の方が算定しない薬局よりも備蓄品目数が多かったが、品目数は1200点に集中していることがわかった。
また、4年度にポリファーマシー(多剤併用)対策として新設した「調剤管理加算」の6年度の算定状況(社会医療診療行為別統計)をみると、「加算ロ(処方変更の患者)」が前年から3倍近く増え、「加算イ(初めての患者)」も2倍近く増加していた。
松本理事は、「サービス拡充の方向性は賛成するが、評価については基準の厳格化や適正化もセットで検討すべきだ」と主張した。
その上で、調剤基本料が細分化された点数配分となっていることに対し、可能な限り1本化し、機能に応じて加減算する仕組みに改めることを提案した。また、地域支援体制加算の算定薬局の医療用医薬品の備蓄状況について、「基準さえ満たしていればいいのか」と問題視した。未算定の薬局が備蓄に対応できるかも課題だとし、同加算の評価の見直しを求めた。
調剤管理加算について、6年度から医療費適正化計画でポリファーマシー対策が強化されたことを踏まえ、廃止も視野に検討すべきとした。
佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)は、「重複投薬・相互作用等防止加算」や残薬・多剤投与の解消に関する加算の算定状況に加え、取り組みの実態把握も必要だとした。
診療側の森委員は、「前回改定では、調剤基本料、地域支援体制加算に大幅な見直しがあり、現場の負担も大きかった」として、「次期改定は大幅な改定ありきで議論するのではなく、前回改定の検証を基に手直しする方向で進めるべき」と注文した。