HOME > けんぽれんの刊行物 > 健保ニュース > 健保ニュース 2025年9月中旬号

健保ニュース

健保ニュース 2025年9月中旬号

6年度 概算医療費
4年連続過去最高の48兆円
後期高齢者分が初の4割超え

厚生労働省は8月29日、「令和6年度医療費の動向」を公表した。6年度の概算医療費は前年度比7000億円増の48兆円となり、4年連続で過去最高を更新した。

一方、伸び率は1.4ポイント減の1.5%増となった。新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、診療報酬上の特例措置が5年度末で終了した影響で伸びが鈍化した。

また、年齢別では、後期高齢者医療費が19.6兆円と医療費全体の4割を初めて超えた。同省は「医療費の伸び率がコロナ禍前の水準に戻ったが、マイコプラズマなどの感染症の流行が続いているため、引き続き医療費の動向を見守る必要がある」としている。

医療保険と公費負担医療分の医療費を集計した概算医療費は、労働災害や全額自費の診療を含まない速報値で、国民医療費の約98%に相当する。

概算医療費の推移をみると、令和元年度43.6兆円(前年度比2.4%増)、2年度42.2兆円(同3.1%減)、3年度44.2兆円(同4.6%増)、4年度46兆円(同4.0%増)、5年度47.3兆円(同2.9%増)、6年度48兆円(同1.5%増)となっている。

コロナ禍前後の伸び率を比較すると、コロナ前の平成28年度~令和元年度の平均伸び率は1.8%増、元年度~6年度は1.9%増でおおむね同様の傾向となった。コロナ禍の2年度は前年度比3.1%減と大幅に減少し、3~4年度は反動で4%以上増加したが、5年度以降伸び率は鈍化し、コロナ前の伸び率に戻りつつある。

また、概算医療費から人口増(同0.4%減)や高齢化(同0.6%増)、診療報酬改定(同0.3%減)などの影響を除いた医療の高度化の伸び率は1.6%増となった。

なお、6年度の休日数の前年度差異に対する補正率は0%としている。
 医療機関を受診した患者数に相当する「受診延日数」は0.3%増の24.9億日、伸び率は1.7ポイント減少した。

単価に相当する「1日あたり医療費」は1.1%増の1万9300円で、3年度以降ほぼ横ばいとなっている。

1人あたり医療費は、1.9%増の38万8000円だった。
 このほか、主傷病がCOVID-19だったレセプトを対象に医科医療費を集計すると2400億円で、前年度の4400億円から4割以上減少した。

被用者保険の伸び率
2.9ポイント減で鈍化

75歳未満の医療保険適用分は0.4%減の26.1兆円で、このうち被用者保険が1.3%増の15.9兆円(全体の33.1%)、国民健康保険が3.0%減の10.2兆円(同21.3%)だった。被用者保険の伸び率は2.9ポイント減で鈍化している。

75歳以上の医療保険適用分は4.1%増の19.6兆円(同40.8%)、公費負担医療は1.6%増の2.3兆円(同4.9%)となった。

被用者保険の1人あたり医療費は1.4%増の20.5万円で、このうち本人が2.0%増の19.5万円、家族が0.9%増の20.0万円だった。

国保は1人あたり医療費が1.4%増の40.5万円で、被用者保険の約2倍となっている。
 被用者保険と国保を合わせた未就学者は、医療費が7.6%減の1.3兆円、1人あたり医療費が3.5%減の25.1万円で、いずれも減少に転じた。

75歳以上の1人あたり医療費は0.9%増の97.4万円で、厚労省は「団塊の世代の一部が後期高齢者に移行して加入者が増加したことが影響している」と分析している。

コロナ特例終了で
医科外来0.9%減

診療種類別にみると、医科は1.0%増の35.4兆円で、入院が2.7%増の19.2兆円、入院外が0.9%減の16.3兆円となった。厚労省は入院外の医療費の減少について、「新型コロナウイルスの診療報酬上の特例措置が終了したことが影響した」とみている。

歯科は3.4%増の3.4兆円、調剤は1.5%増の8.4兆円、訪問看護療養は18.7%増の0.72兆円で、入院外を除く診療種類で増加した。

医療費の構成割合は、医科73.8%(入院39.9%、入院外33.9%)、歯科7.1%、調剤17.6%、訪問看護療養1.5%で入院が最も多くを占めた。

また、入院の受診延日数は0.1%増の4.4億日、1日あたり医療費は2.6%増の4万3500円。入院外は受診延日数が、0.1%減の15.9億日、1日あたり医療費は0.8%減の1万200円となっている。

病院の1施設あたり医療費は3.0%増の32億970万円で、大学は3.6%増の230億1998万円、公的が2.8%増の63億6312万円、法人が2.3%増の20億639万円、個人が0.1%増の7億7928万円でいずれも増加した。

診療所の1施設あたり医療費は1.6%減の1億1084万円で、内科が2.6%、小児科が18.3%、外科が1.6%それぞれ減少した。

一方、整形外科が2.7%、皮膚科が3.0%、産婦人科が2.9%、眼科が2.8%それぞれ増えた。小児科の大幅減について、厚労省は「新型コロナが大幅に減ったため医療費は減少したが、元年度から6年度の平均でみると、コロナ禍前の伸び率の水準に戻っただけ」と受け止めている。

歯科は受診延日数が0.3%増の4億日、1日あたり医療費が3.1%増の8500円。1施設あたり医療費は歯科病院が5.2%増の1億1153万円、歯科診療所が4.6%増の4961万円だった。

長期収載品の選定療養開始
後発品割合90.6%に増加

6年度末時点の後発医薬品の使用割合は数量ベースで5.4%増の90.6%、薬剤料ベースで2.1%増の21.8%となり、後発医薬品の調剤率は2.5%増の83.8%だった。

後発医薬品使用割合(数量ベース)を制度別にみると、被用者保険は5.4%増の91.2%。内訳は、健保組合が5.7%増の91.2%、協会けんぽが5.1%増の91.2%、共済組合が5.8%増の91.2%だった。国保は5.4%増の90.3%、後期高齢者は5.5%増の89.8%となっている。

医療機関別にみると、医科病院で5.2%増の90.5%、医科診療所で5.4%増の90.7%だった。

また、使用割合が80%以上の薬局の割合は12.2ポイント増の94.6%と大幅に上昇した。
 都道府県別では、沖縄県が94.1%で最高、東京都が88.1%で最低だった。

厚労省は「後発医薬品の使用割合の増加は、6年10月から長期収載品の選定療養が開始したことが大きく影響している」とした。

6年度の調剤医薬費は1.6%増の8兆4008億円で、処方箋1枚あたり調剤医療費は0.3%増の9372円だった。

調剤医薬費の構成割合をみると、技術料が3.5%増の2兆3251億円(全体の27.7%)、薬剤料が0.9%増の6兆592億円(同72.1%)、特定保険医療材料料が1.5%増の165億円となっている。

薬剤料の内訳は、内服薬が0.6%減の4兆6966億円、注射薬が18.9%増の6644億円、後発医薬品が2.6%増の1兆1908億円だった。

処方箋1枚あたり調剤医療費を年齢階級別にみると、年齢とともに高くなり、最高の80歳以上85歳未満(1万926円)は最低の0歳以上5歳未満(3632円)の約3倍となる。

内服薬の処方箋1枚薬剤料は1.7%減の5243円で、3要素分解すると、処方箋1枚あたり薬剤種類数が0.8%増の2.81、1種類あたり投薬日数が1.1%増の27.3日、1種類1日あたり薬剤料が3.5%減の68円となった。

けんぽれんの刊行物
KENPOREN Publication

2025年
2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年