健保ニュース
健保ニュース 2025年9月中旬号
次期改定向け在宅医療を議論
松本理事 メリハリある評価で需要増に対応
中央社会保険医療協議会(会長・小塩隆士一橋大経済研究所特任教授)は8月27日の総会で、令和8年度診療報酬改定に向け、在宅医療をテーマに議論した。健保連の松本真人理事は、医療資源や財源が限られる中、「増加するニーズにいかに過不足なく応えるかが重要だ」と主張し、「医療やケア、患者の療養環境に合わせたメリハリのある評価とすべき」と要望した。
医療・介護の複合ニーズを持つ85歳以上の高齢者が2040年ごろをピークに増加するとともに、在宅患者も40年以降にピークを迎え、237の2次医療圏で在宅患者数が最大となることが見込まれている。
在宅医療のニーズの増加を受け、第8次医療計画(24~29年度)には、在宅医療を積極的に担う医療機関を中心とした圏域設定、急変時・看取り、災害時の体制整備、各職種の在宅医療への関わりを柱とする地域の実情に応じた医療提供体制の構築などが盛り込まれている。
こうした背景を踏まえ、厚生労働省はこの日の会合に、在宅医療を担う訪問診療・往診、訪問看護、歯科訪問診療、訪問薬剤管理指導、訪問看護指導に関する課題と論点を示した。
訪問診療・往診は、「質の高い医療を必要量提供する観点から診療報酬上の評価をどう考えるか」を論点とした。
緊急時の連絡体制や24時間往診できる体制を有する在宅療養支援診療所や在宅療養支援病院は、令和6年8月1日時点で診療所は1万5294施設、病院は2127施設の届け出がある。経年的にみると診療所は横ばい、病院は増加傾向となっている。
6年度改定の結果検証に係る特別調査によると、24時間の往診体制を確保するために、医師や看護師が急な呼び出しに応じるオンコール対応などを民間企業に委託している医療機関は全体の6.1%あり、在宅療養支援診療所・病院全体でも9割程度が委託していた。
また、在宅医療を提供する患者に入院が必要になった場合の病床確保の方法として、診療所の59.8%が「平時から他の医療機関との連絡体制がある」と答えた一方、11.7%が「基本的に救急搬送するため特定の医療機関とは連携していない」と回答している。
健保連の松本理事は、民間企業を利用する実態を受け、委託業務の内容や委託元の医療機関の特徴などを検証するよう求めた。また、在宅患者の入院について、特定の医療機関と連携していない診療所に対しては、次期改定で改善を促す対応を検討すべきだとした。
高齢化による継承者不足の問題もあり、在宅医療を担う医療機関をどう増やすかが課題とされている」として、「在宅療養支援診療所や病院を地域の医療機関が支えるために、役割分担と連携が重要だ」と述べた。
また、「24時間対応や緊急往診対応などの医療提供体制を整備することが必要」と述べるとともに、「希望する医療機関が在宅医療に参入しやすくなるよう、次期改定では施設基準や実績要件を高く設定すべきではない」と主張した。