健保ニュース
健保ニュース 2025年9月中旬号
国保の保険証期限切れ
8月上旬は大きな混乱なし
厚労省 関係機関の協力に謝意
厚生労働省は8月28日の社会保障審議会医療保険部会(部会長・田辺国昭東京大大学院教授)で、市町村国保の被保険者の7割にあたる約1700万人の健康保険証が8月に有効期限を迎えたが、8月上旬の段階で大きな混乱はなかったと報告し、医療機関や薬局、保険者などの協力に謝意を示した。
この日の会議では、マイナ保険証の利用促進をテーマに、①マイナ保険証を基本とする仕組みへの移行(市町村国保への影響)②外来診療などにおけるスマートフォンに搭載されたマイナ保険証利用への対応③「黒丸文字」の解消に向けた対応──を議論した。
厚労省は①について、マイナ保険証の7月の利用率や8月第1週の医療機関向けコールセンターへの問い合わせ件数などを報告した。
7月のマイナ保険証の利用件数は過去最多の7810万件で、利用率は31.4%となった。8月は7日までの1週間で既に2558万件に達し、500万件近く利用された日もあった。
また、コールセンターへの「国保の保険証の有効期限切れに伴う暫定的な対応」に関する問い合わせは、104件にとどまった。
こうした状況を踏まえ、厚労省は「大きな問題はなかった」とし、引き続きマイナ保険証の利用状況を注視しながら、円滑な移行と利用の定着に向けて取り組む方針を示した。
このほか、高齢者や障害者などの要配慮者はマイナ保険証に加え、資格確認書も保有できることなどを福祉関係団体に説明したことを報告した。
②はマイナンバーカードに加えスマホでもオンライン資格確認が可能になることで、患者の利便性向上や医療機関での資格確認の円滑化が期待されるとして、スマホでのマイナ保険証利用のための医療機関の環境整備を支援するとした。
また、15の医療機関などで7月と8月の2回に分けて実施した実証実験では、321人がスマホでオンライン資格確認を行い、件数は少ないものの「大きな支障がなかった」ことが確認された。
一方、患者(利用者)からは、オンライン資格確認を利用するための「スマホの設定が難しかった」といった意見が目立つことから、事前準備などについて周知するとした。
スマホ保険証の9月19日からの利用開始と拡大に向け、医療機関には汎用カードリーダーの購入や、スマホ対応可能であることを示すステッカーの掲示など窓口の受付環境の整備を求める。
厚労省は医療機関のカードリーダーの購入費用の半額を、7000円を上限に補助する。
患者には、来院前のスマホへのマイナンバーカード追加や、対応している医療機関の確認を呼びかける。
③は医療保険者向け中間サーバーでは表示できず「●(黒丸)」で表示される文字について、令和8年度中に少なくとも7割程度の解消を目指すとした。
今後は、中間サーバーで表示できる文字種別を追加して保険者で使用している拡張文字を表示可能にするとともに、保険者が独自に使用しているユーザー外字を、加入者の理解を得ながら簡易な文字種別か共通の文字コードで対応できる文字に置き換える方針だ。
また、「●」表記のままでもレセプト請求できることを改めて周知するとした。
健保連の佐野雅宏会長代理はマイナ保険証を利用できる人にも資格確認書を職権交付している自治体があることについて、「マイナ保険証のメリットを受ける機会を阻害することになりかねない」と危惧した。その上で、国保の保険証の有効期限切れ対応や資格確認書の職権交付は、「あくまでマイナ保険証への移行に向けた暫定的な措置だ」と強調し、適正な運用に向けた指導を求めた。
スマホでのマイナ保険証利用は、国民や患者がマイナ保険証のメリットを受けるための重要な取り組みだとして、「医療機関の環境整備は最重要であり、国にしっかりフォローアップしてほしい」と要望した。
北川博康委員(全国健康保険協会理事長)は12月の保険証利用の経過措置終了が迫る中、協会けんぽがマイナ保険証への切り替えを集中的に広報する予定だと説明し、「マイナ保険証の利用促進に向け、国や医療機関、保険者が一体となって、このタイミングを活用したい」と述べた。
前葉泰幸委員(全国市長会相談役・津市長)は8月の保険証有効期限切れに際し「自治体には多くの問い合わせがあった」と話した。
同一世帯でも資格確認書と資格情報のお知らせが混在することがあるなど、自治体には多岐にわたる説明が求められているため、「正確な情報をわかりやすく周知してほしい」と訴えた。
城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、スマホでのマイナ保険証利用には汎用カードリーダーの準備が必要なため、「9月19日から、全国一律にスマホで資格確認できるわけではないことと、特に初めて受診する医療機関にはマイナ保険証も携帯するよう周知が必要だ」と述べた。
また、オンライン資格確認に必要な顔認証付きカードリーダーと専用端末を早期に導入した医療機関では、保守期限が迫り、機器の更新に50万~100万円かかる場合もあるとして、「更新費用について全面的な財政支援を政府にお願いしたい」と要望した。