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健保ニュース

健保ニュース 2025年9月上旬号

5年度 市町村国保の財政状況
実質収支1803億円の赤字

厚生労働省は8月25日、国民健康保険(市町村国保)の令和5年度の財政状況を公表した。単年度の収支差引額は3937億円の黒字を計上したが、決算補填などを目的とする一般会計繰入金を除いた実質収支である「精算後単年度収支差引額」は1803億円の赤字となり、前年度に比べ736億円悪化した。赤字は3年連続。

厚労省は「団塊の世代の一部が後期高齢者に移行したことによる加入者の減少などが要因」と分析するとともに、「医療費適正化の推進などで持続可能な財政状況にしたい」とした。

医療給付分と介護分を合わせた5年度の収支状況は、市町村と都道府県の各特別会計の合計額を計上している。収入総額が23兆3876億円(前年度比0.6%減)、支出総額が23兆5164億円(同0.5%減)で、収支差引額は3937億円(同13.2%減)の黒字を計上した。

ここから、前年度からの繰越金や基金繰入金、基金積立金などを除いた単年度収支差引額は1288億円の赤字に転じる。

さらに、国庫支出金を精算するとともに、一般会計繰入金(法定外)のうち決算補填などを目的とした1220億円を除くと、実質収支は1803億円の赤字になる。

また、被保険者数は6年3月末時点で4.3%減の2309万人となり過去最少を更新した。
 このほか、保険料収納率は94.20%で0.06ポイントの微増となった。

法定外の一般会計繰入
5割超を保険料軽減に充当

5年度の法定外一般会計繰入金は1976億円(前年度比37.3%増)で、決算補填目的分が1220億円(構成割合61.8%)、それ以外が755億円(同38.2%)となった。

決算補填等目的分の主な内訳は、保険者政策による保険料(税)の負担緩和や軽減に1077億円(法定外一般会計繰入金の54.5%)や保険料収納不足の補填に120億円(同6.1%)などで、保険料の負担軽減に対して5割以上を充当している。

厚労省は、法定外一般会計繰入金について、「全体としては解消に向けて着実に進んでいるが、特定の都道府県で進んでいない」と指摘。今後も解消に向けて取り組むとした。

市町村と都道府県の単年度収支をみると、都道府県は234億円の赤字で、前年度から833億円改善した一方、市町村は1054億円の赤字で929億円悪化した。赤字の保険者数は、都道府県が1減の32保険者(全体の68%)、市町村が218増の1156保険者(同67%)となっている。

1人あたり保険料調定額
初の10万円超え

収入面をみると、保険料収入は加入者の減少で3.3%減の2兆3697億円。保険料収納率(現年度分)の全国平均は94.20%で、市部平均は0.08ポイント増の94.01%、町村部平均は0.06ポイント減の96.16%となっている。

1世帯・1人あたりの保険料調定額はそれぞれ、14万7926円(前年度比0.0%増)、10万997円(同1.6%増)で1人あたり保険料調定額は初めて10万円超となった。同省は1人あたり保険給付費の伸びが影響しているとみている。

前期高齢者交付金は3兆5966億円で1.6%増加した。厚労省によると「前々年度の3年度がコロナ禍明けの年度であったため、受診控えが解消されたことが精算に影響した」という。

国庫支出金は3兆2383億円で3.8%減、都道府県支出金は1兆1147億円で0.2%増だった。国庫支出金は、被保険者の減少によって保険給付費が減ったことに伴い縮小した。

一方、支出面では、保険給付費が1.1%減の8兆5315億円。前期高齢者納付金が1.2%減の40億円、後期高齢者支援金が8.1%増の1兆6300億円、介護給付金が2.3%減の5726億円となった。

1人あたり保険給付費は35万7261円(前年度比4.0%増)、1世帯・1人あたりの所得は、それぞれ112.7万円(同3.2%増)、77.0万円(同4.7%増)。

このほか、6年6月1日時点の保険料滞納世帯は183万世帯で、前年に比べ7万世帯減少し、全世帯に占める割合は0.1ポイント減の11.4%となった。

滞納世帯のうち、資格証明書交付世帯は7万7413世帯(同4682世帯減)、短期被保険者証交付世帯は33万7142世帯(同4万1029世帯減)だった。

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