健保ニュース
健保ニュース 2025年9月上旬号
医療機関の5年度経営状況
医業利益 病院マイナス0.7%
診療所はプラス6.9%
厚生労働省は8月27日、中央社会保険医療協議会(会長・小塩隆士一橋大経済研究所特任教授)に、医療機関の令和5年度の経営状況を示した。医業利益率(平均)は、病院がマイナス0.7%だったのに対し、医科診療所はプラス6.9%だった。
支払側は病院と診療所の経営状況の差を踏まえて診療報酬の評価を検討するよう求めたが、診療側は年々物価や人件費が高騰し、経営は厳しさを増していると訴えた。
厚労省は、4月の会合での委員からの要望に応じ、医療法人経営情報データベースシステム(MCDB)から、病院類型、機能分類などの切り口で医療機関の経営状況を分析した。分析対象は、病院3014施設(医療法人立施設の53%)、医科診療所1万6606施設(同35%)。
病院の医業利益率(平均値)を類型別にみると、一般病院はマイナス1.7%だったが、療養型病院はプラス1.4%だった。病院全体の赤字割合は55.2%で、過半数を占めた。
病床規模別では、一般病院は「200床以上299床以下」がマイナス3.1%と最も低いが、「300床以上499床以下」はマイナス2.8%、「500床以上」はマイナス0.9%となり、規模が大きくなるほど利益率が改善していた。療養型病院も病床規模に応じて利益率が高くなる傾向があった。
機能大分類別にみると、高度急性期はマイナス2.3%、急性期Aはマイナス2.7%、急性期Bがマイナス2.5%となる一方、回復期はプラス3.8%、慢性期はプラス0.5%だった。
医科診療所の医療利益率は、入院収益「なし」はプラス7.8%で、「あり」もプラス2.0%だった。黒字割合は全体が66.6%、入院収益「なし」が67.9%、「あり」が50.1%だった。
また、病院のみを経営する医療法人の自己資本比率は平均49.8%で、現預金回転期間(現預金/(事業収益/12))の中央値が3.0か月だった。厚労省は、「自己資本比率は資金構成の面からは問題ないが、現預金回転期間が短く、最低限の水準で事業運営されている可能性がある」とした。
健保連の松本真人理事は、「病床規模が大きくなるほど利益率が良くなっている」と指摘し、「病院の集約化を進めることが経営改善に寄与する可能性がある」と述べた。
また、急性期病院は利益率の低下が顕著だとして、病床規模とのクロス分析を行い、病院機能に着目した分化・連携の検討に活用するよう求めた。
医科診療所については、診療科や地域別にみても「かなり高い利益率の法人がある」と強調した。
奥田好秀委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会長代理)は、「病院の機能や診療科によって利益率に違いがある」と指摘し、診療報酬は医療機能に応じたメリハリのある評価にすべきとした。
診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「自己資本比率が低下し、現預金回転期間が短期化する医療機関が増えている」とし、診療報酬や補助金で早急に支援するよう求めた。
太田圭洋委員(日本医療法人協会副会長)は、「5年度は期中までコロナ補助金が手当されていたが、厳しい状況が示された」と指摘。「前回改定では十分な改定率が示されず、6年度は大幅に経営状況が悪化している」として、6年度のMCDBの結果も早期に公表するよう要望した。