健保ニュース
健保ニュース 2025年9月上旬号
厚労省概算要求
自然増3500億円 社会保障費32.9兆円
物価高対応は年末までに検討
厚生労働省は8月29日、令和8年度予算の概算要求をまとめ、財務省に提出した。一般会計総額は34兆7929億円で、7年度当初予算から4865億円増え、過去最大となった。医療や年金などの社会保障費は、高齢化による自然増3516億円を反映し、32兆9387億円を計上。自然増のうち医療は2300億円と見込む。
8月の閣議で了解された概算要求基準では、社会保障費への物価動向の反映や物価高対策を含む重要政策などを年末までの予算編成過程で検討することとしており、予算額はさらに膨らむ可能性がある。
概算要求基準で物価高対策などの重要政策の推進を目的に20%の増額が認められていた裁量的経費は8245億円(前年度比982億円増)を計上した。義務的経費は1兆297億円(同367億円増)と見積もった。
金額を明示しない「事項要求」は物価高対策などの重要施策のほか、診療報酬改定と薬価改定への対応や、消費税率引き上げとあわせて行う社会保障の充実分など計6項目で、予算編成過程で検討する。
8年度は重点要求の柱の一つに「社会の構造変化に対応した保健・医療・介護の構築」を据え、①医療・介護分野の賃上げ・経営の安定・人材確保②地域医療・介護の提供体制の確保③医療・介護分野におけるDXの推進④医薬品の安定供給や品質・安全性の確保⑤予防・重症化予防、女性の健康づくり⑥安定的で持続可能な医療保険制度の運営確保──などを挙げた。
⑥は各医療保険制度に関する医療費国庫負担=10兆4849億円(同2070億円増)、国保への財政支援=3071億円(前年度同額)、被用者保険への財政支援=1253億円(前年度同額)をそれぞれ計上した。
医療費国庫負担の制度別内訳は、全国健康保険協会=1兆2264億円(前年度比163億円増)、国民健康保険=3兆292億円(同28億円減)、後期高齢者医療=6兆2292億円(同1935億円増)。公費負担医療=1兆9035億円(同230億円増)を合わせると12兆3884億円(同2300億円増)に上る。
被用者保険への財政支援の内訳は、高齢者医療特別負担調整交付金=200億円、高齢者医療運営円滑化等補助金=950.4億円、健康保険組合連合会交付金交付事業費負担金=100億円、被用者保険の適用拡大に係る健保組合への支援=2.5億円となっている。
①は医療や介護の現場で働く幅広い職種の賃上げや物価高への的確な対応とともに、計画的にDXやタスクシフト・シェアを進め、賃上げや経営の安定、人材確保などにつながるよう、次期診療報酬改定をはじめ必要な対策を講じる。物価高対策などの重要政策の一環として、事項要求とした。
②は新たな地域医療構想の推進や医師偏在是正対策の推進など「質が高く効率的な医療提供体制の確保」に806億円(同47億円増)を計上した。
また、地域医療介護総合確保基金などによる地域の事情に応じた介護サービス提供体制の整備など「地域包括ケアシステムのさらなる深化・推進」に2457億円(同165億円増)などを要求した。
③は全国医療情報プラットフォームにおける公費負担医療制度のオンライン資格確認の推進や、電子処方箋の利用拡大など「医療・介護分野におけるDXの推進」に162億円(同118億円増)などを盛り込んだ。
④は製薬企業の出荷量や医薬品の需給状況把握のための体制整備など、「医薬品の安定供給推進、後発医薬品業界の再編推進」に23億円(同21億円増)などを計上した。
⑤は女性の健康支援の推進や糖尿病性腎症の重症化予防事業への支援など「予防・重症化予防の推進、女性の健康づくり」に21億円(同6億円増)を要求。このほか、「認知症施策の総合的な推進」に130億円(同5億円増)、「がん対策、循環器病対策などの推進」に449億円(同50億円増)などを要求した。