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健保ニュース 2025年8月下旬号

7年版 厚生労働白書
社会保障教育の重要性強調
若者の当事者意識を醸成

厚生労働省は7月29日の閣議に「令和7年版厚生労働白書」を報告した。「次世代の主役となる若者の皆さんへ─変化する社会における社会保障・労働施策の役割を知る─」をテーマに掲げ、社会保障教育の取り組みなどを紹介し、「若者が制度の担い手としての当事者意識を持ち、制度の意義を理解しておくことが必要だ」と訴えた。

社会保障教育をテーマにしたのは今回が初めて。次世代を担う若者に、生きていく上で必要になる社会保障について知ってもらいたい、自分事として考えてもらいたいという思いから、なるべく若者に届くような平易な形で作成したという。

厚労省が1月、高校生3000人を対象に実施したアンケート調査では、社会保障・労働施策に「とても関心がある」「やや関心がある」と答えた人の割合が医療保険で63.6%、年金で58.3%、介護で43.3%、労働時間のきまりで79.5%、賃金のきまりで80%だった。

具体的な施策ごとに理解度を尋ねたところ、「病院で健康保険証(マイナンバーカード)を提示すると、医療保険が利用できるので、自分で支払わなければならないのは一部(通常3割)である」ことについて、「よく知っている」「何となく知っている」を合わせると62%となり、他の施策と比べて最も高かった。

社会保障教育を学校の授業で受けたことがある人は65.3%で、このうち54.2%が授業の内容を覚えていると回答した。社会保障教育の経験の有無と社会保障制度への関心の関係性をみると、経験者は関心が「高い」が29.3%、「中程度」が40.5%、「低い」が30.2%だったが、未経験者はそれぞれ18.5%、31.8%、49.7%となった。

白書は「社会保障教育の経験が、社会保障制度への関心度や理解度を高める可能性がある」と考察している。

また、白書は若者が社会保障や労働施策を知ることの意義について、ミクロとマクロの2つの視点から論じている。

ミクロの視点では、アルバイトの労働条件や通勤災害、女性の出産後の働き方別の生涯可処分所得(出産後に就業継続した場合と退職した場合では約1.7億円の差)などの事例を取り上げ、社会保障や労働施策を知ることで、社会生活上で直面する課題の解決に役立つとしている。

マクロの視点では、社会保障や労働施策を知ることで、社会全体で支え合う仕組みの重要性を理解し、当事者意識を持って、現代社会をより良く生きていくための知識を得ることができると強調した。

テーマの最終章では、高校や大学での社会保障教育、労働法教育の取り組み事例を紹介した上で、社会の変化に合わせてどのような制度を選び取るか次世代を担う若者と一緒に考えていく必要があり、社会保障教育や労働法教育の重要性は高まっていくと結んだ。

白書は毎年テーマを決めて特集を組む第1部と年次行政報告の第2部「現下の政策課題への対応」の2部構成。今年の第2部は「我が国の人口動態:本格的な「少子高齢化・人口減少時代」へ」を冒頭に取り上げたほか、医療や介護など厚生労働行政の各種施策の最近の動向をまとめている。

医療保険関係は5年5月に成立した医療保険制度改革関連法について、▽こども・子育て支援の拡充▽高齢者医療を全世代で公平に支え合うための高齢者医療制度の見直し▽医療保険制度の基盤強化等──を柱に制度改正のポイントを解説した。

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