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健保ニュース 2025年8月下旬号

新地域医療構想ガイドライン策定へ
過疎地の急性期拠点機能を議論
厚労省提案 区域内に1か所確保

地域医療構想及び医療計画等に関する検討会(座長・遠藤久夫学習院大学長)は8日、2回目の会議を開き、新たな地域医療構想策定のためのガイドラインに向けた医療機関機能や医療従事者の確保策を議論した。人口30万人未満の人口少数地域で、急性期拠点機能を担う医療機関を1か所確保するという厚生労働省の提案に意見が集中した。

厚労省はこの日の検討会に、前回示した区域の人口規模別に求められる医療機関機能の考え方のイメージに、大都市は100万人以上、地方都市は50万人程度、人口少数地域は30万人未満といった人口の目安を追加し、提示した。

また、各都道府県での医療機関機能の協議にあたり、急性期拠点機能については、▽救急車の受け入れ件数▽全身麻酔手術の件数▽医療従事者数▽急性期の病床数と稼働数▽医療機関の築年数──などのデータを医療機関ごとにそろえ、区域内でのシェアなども踏まえ検討することを提案した。

人口少数地域の急性期拠点医療機関について、健保連の伊藤悦郎常務理事は医療資源の集約が地域医療の効率化と病院経営の改善につながるとして、「1か所への集約に向けて取り組むことが重要だ」と賛同した。

東憲太郎構成員(全国老人保健施設協会会長)も1医療機関を確保する方針に賛同した上で、医療機関の再編統合に向け、厚労省がリーダーシップを発揮するよう求めた。

今村知明構成員(奈良県立医科大教授)は、1か所への集約が難しい区域もあるとして、「機能分化する場合や区域に大学病院がある場合などは、複数でもいいのではないか」と述べた。

伊藤伸一構成員(日本医療法人協会会長)は「1から2など地域でフレキシブルに決められるように記載すべきではないか」と提案した。

尾﨑誠構成員(長崎大病院長)は限られた医療資源を効率的に活用するため、人口少数地域では「複数の2次医療圏単位で集約を進めるのが合理的だ」と述べた。

あわせて、急性期拠点機能について、「人口少数地域では、緊急性の高い疾患に対応する医療機関が1か所あればいいのではないか」と述べ、緊急性の高さによって機能を分けて検討するよう提案した。

地域での協議のためのデータついて、伊藤常務理事は客観的なデータを基に協議する方向性に賛同しつつ、円滑な進行に向けて「目安になる基準値を明確にする必要がある」と指摘した。

また、医療機関と介護保険施設の連携を踏まえ、高齢者救急・地域急性期機能と在宅医療等連携機能の協議に向け、協力関係にある介護施設も把握すべきだと主張した。

川又竹男構成員(全国健康保険協会理事)も「最低限の基本的な指標について、定量的な基準をガイドラインに示すことが望ましい」と訴えた。

坂本泰三構成員(日本医師会常任理事)は「数字を絶対的な基準にすると、地域医療提供体制をゆがめてしまう恐れがある」と懸念し、データに基づき地域で協議する仕組みにするようくぎを刺した。

また、医療機関が協力医療機関として介護施設から患者を受け入れている状況を指標に追加するよう求めた。

土居丈朗構成員(慶応大経済学部教授)は「病床機能ごとに必要な病床数を客観的に推計した上で、データ提供すべきだ」と主張した。

医療従事者の確保
各検討会の議論を基に検討

厚労省は医療従事者の確保に向け、歯科医師や薬剤師、看護職員など各職種の検討会での議論の内容を踏まえ、地域医療構想の策定や推進に必要な事項のガイドラインへの反映を検討すると提案した。構成員から異論はなかった。

尾﨑構成員は「医師不足の原因が絶対数の不足だとすれば、医師偏在是正対策では根本的な解決にならない」と指摘した。

その上で、中長期的な視点として大学医学部の定員の見直し、短期的な視点として臨床研修制度の見直しなどを挙げ、両面から戦略的かつ柔軟に取り組むよう提案した。

橋本美穂構成員(日本看護協会常任理事)は「限られた医療資源の活用には、タスクシフト・シェアの一層の推進やDXによる業務効率化が欠かせない」と訴え、そうした視点も含め地域で実効性ある医療従事者の確保策を計画できるように、ガイドラインに記載することを求めた。

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