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健保ニュース 2025年8月合併号

セルフメディケーション税制対象拡大など
厚労省検討会 「議論の整理」を大筋了承
8年度税制改正要望に反映

セルフケア・セルフメディケーション推進に関する有識者検討会(座長・井深陽子慶応義塾大教授)は7月25日、令和8年末を適用期限とするセルフメディケーション税制の延長を見据え、税制対象となる医薬品の範囲拡大などを盛り込んだ「議論の整理」をおおむね了承した。

厚生労働省は、議論の整理を踏まえた具体的な要望事項を、8月末に財務省に提出する税制改正要望に反映させる方針を示した。最終的には、12月末に政府が閣議決定する8年度税制改正大綱への反映を目指す。

議論の整理は、セルフメディケーション税制の対象に、「OTC検査薬」「胃腸薬、止瀉薬、瀉下薬」「生薬のみからなる鎮咳去痰薬」を追加するよう求めた。

同検討会では、スイッチOTC医薬品のうち強心剤やビタミン剤などについて、「医療費適正化効果が低い」として3年度税制改正で対象から除外したことが問題提起され、「利用者にとってわかりやすい制度にするためには、全てのOTC医薬品やOTC検査薬を税制対象にすべきではないか」との構成員の意見が多数挙げられた。こうした議論を踏まえ、議論の整理では対象医薬品の大幅な拡大も求めた。

なお、セルフメディケーション税制は医療費適正化効果が高い医療用医薬品からの代替に重点を置いており、現行では、スイッチOTC医薬品や解熱鎮痛剤などの4薬効に対応する非スイッチOTC医薬品が対象となっている。

議論の整理は、セルフメディケーション税制の対象として追加することを求めた医薬品のうち、OTC検査薬について、利用者が新型コロナ検査薬や新型コロナ・インフルエンザ検査後に税制対象医薬品の治療薬を購入して自宅療養することも考えられるとして、医療費適正化効果が期待できるとした。

胃腸症状も薬局で相談される症状として、風邪や鼻水、咳、関節痛に次いで多く、医療費適正化効果が見込めるとした。鎮咳去痰薬は、含有する生薬によって税制対象に該当するものと、しないものがあることから、「利用者にわかりにくい状況」と指摘し、全ての鎮咳去痰薬を税制対象とすることを求めた。

一方、痩身・美容目的で実質的に使用されている医薬品は、医療費適正化に直接つながらないとの観点から、除外を検討すべきとした。

さらに、税制申告について、医薬品の購入費から差し引く金額(現行1万2000円以上を条件)の引き下げや所得控除の上限額(現行8万8000円)の引き上げ、紙のレシート保存要件の見直し、税制の年限の恒久化についても提案した。

税制の効果検証について、6年度厚生労働科学研究で、セルフメディケーション税制利用者と非利用者の医療費の経年変化を比較したところ、税制利用者の方が年間医療費が低い結果が得られたとしつつ、レセプト情報と税制申告者とのひも付けができない中、「医療費適正化効果の検証には限界がある」とし、新たな調査手法が必要と指摘した。

また、6年度のセルフメディケーション税制の利用者数は5万3千人程度で、医療費控除の利用者数約800万人に比べて少ないとし、さらなる利用者数の増加を促すため、関係者の協力を得ながら効果的な税制の周知方法を検討すべきとした。

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