健保ニュース
健保ニュース 2025年7月下旬号
6年社会医療診療行為別統計
院外処方、診療所で8割超す
外来は改定影響で減少
厚生労働省は6月25日、「令和6年社会医療診療行為別統計」の結果を公表した。院外処方率が81.4%(前年比1.2ポイント増)で平成6年の統計開始以来最高となり、このうち診療所では初めて8割を超えた。
また、医科診療・入院外のうち、「投薬」は13.4%減の155.8点と大きく減少。厚労省は、6年度の診療報酬改定で糖尿病や高血圧性疾患の特定疾患処方管理加算が廃止されたことの影響が大きいとみている。
統計は、医療給付の受給者に関する診療行為の内容や傷病の状況、調剤の使用状況などを明らかにし、医療保険行政に必要な基礎資料を得ることを目的としている。
今回は、NDB(匿名医療保険等関連情報データベース)に蓄積されている6年8月審査分の医療保険制度の診療報酬明細書と調剤報酬明細書を対象とした。なお、6年度の診療報酬改定から改定の施行時期が6月に変更されている。(6年統計の結果概要は次の通り)
【医科診療・入院】
医科診療・入院は前年と比べてレセプト1件当たり点数が1.3%増の6万1028.2点、1日当たり点数が4.8%増の4219.9点だった。
診療行為別にみると、1件当たり点数が最も高い「入院料等」は4.0%減の2万531.2点。次いで、「診断群分類による包括評価等」が、1.9%増の1万8236.7点となっている。
診療行為別の1日当たり点数は「入院料等」(構成割合33.6%)、「診断群分類による包括評価等」(同29.9%)、「手術」(同18.7%)、「リハビリテーション」(同5.6%)の順に高かった。
また、増減率をみると、「検査」の1件当たり点数が前年比19.3%減、1日当たり点数が16.6%減と大きく減少した一方、「注射」は1件当たり点数が23.6%増、1日当たり点数が27.8%増と大きく増加した。
厚労省は、「検査」が減少した要因について、新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、5年度末に公費負担でなくなったことから、検査が減少したとみている。
診療行為の状況を年齢階級別にみると、一般医療(原則74歳まで)と後期高齢者医療では、1件当たり点数は一般5万8656点(前年比1.4%増)、後期6万3058.2点(同1.2増)だった。
1日当たり点数は一般4997.3点(同5.2%増)、後期3755点(同4.9%増)で一般の方が高かった。診療行為別の構成割合でみると、後期は一般に比べ「入院料等」と「リハビリテーション」の割合が高く、「手術」と「診断群分類による包括評価等」が低かった。
1件当たり日数は一般11.74日、後期16.79日で、後期が5日程度長くなっている。
病院と診療所に分けると、1件当たり点数は病院6万2678.3点(同1.2%増)、診療所2万3325.9点(同4.0%増)で、病院が2.7倍高い。
1日当たり点数は病院4249.4点(同4.7%増)、診療所2961.8点(同8.7%増)で病院が1.4倍高かった。病院の種類別にみると、「特定機能病院」が9140.4点で最も高く、「精神科病院」が1492.9点で最も低い。
1件当たり日数は病院14.75日、診療所7.88日で病院が長くなっている。病院の種類別にみると、「精神科病院」が28.22日で最も長く、「特定機能病院」が9.32日で最も短い。
DPC/PDPSに基づく入院1日当たり定額レセプトと、それ以外の入院レセプトを比較すると、1件当たり点数はDPC/PDPSが7万578点(同1.5%増)、それ以外が5万2224.7点(同0.6%増)だった。
1日当たり点数はDPC/PDPSが7512.5点(同4.1%増)、それ以外が2729.5点(3.7%増)でいずれも増加した。診療行為別の構成割合は、DPC/PDPSで「診断群分類による包括評価等」が53.9%、それ以外で「入院料等」が68.5%と最も多くを占めた。
1件当たり日数はDPC/PDPSが9.39日、それ以外が19.13日で、10日間の開きがあった。
【医科診療・入院外】
医科診療・入院外は、1件当たり点数が1478.5点(同0.2%減)、1日当たり点数は996.6点(同1.0%減)で、いずれも減少した。
診療行為別にみると、1件当たりの点数が最も高かったのは「検査」の280.4点(同2.7%増)、次いで「注射」が209.5点(同6.4%増)、「初・再診」が192.7点(同0.0%増)となった。
1件当たり日数は1.48日で同0.01日増加した。
1日当たり点数で最も高いのは「検査」の189点(同1.8%増)、次いで、「注射」の141.2点(同5.4%増)、「初.再診」の129.9点(同0.9%減)だった。
入院外を一般医療と後期医療に分けると、1件当たり点数が一般1338.4点(同0.9%減)に対し後期1826.9点(同0.8%増)となっている。また、1日当たり点数が一般950.6点(同1.6%減)に対し後期1093点(同0.1%減)で、1件当たりと1日当たりの点数のいずれも後期が一般を上回った。診療行為別に構成割合をみると、後期は一般より「在宅医療」が高く、「初・再診」が低い。
1件当たり日数は一般1.41日、後期1.67日だった。
病院と診療所で比較すると1件当たり点数は病院2822.4点(同1.7%増)、診療所1087.7点(同1.5%減)、1日当たり点数は病院1890.6点(同0.9%増)、診療所734.7点(同2.3%減)だった。
病院の種類別にみると、1日当たり点数が最も高かったのは「特定機能病院」で3801.5点、最も低かったのは「精神科病院」で847.4点だった。診療行為別の構成割合をみると、診療所は病院より「初・再診」と「医学管理」が高く、「注射」と「画像診断」が低い。
1件当たり日数は病院1.49日、診療所1.48日で、大きな差はなかった。
【院外処方】
医科の入院外における処方件数をベースにした院外処方率は81.4%(同1.2ポイント増)だった。
病院・診療所別にみると、病院は83.6%(同1.1ポイント増)、診療所は80.9%(同1.3ポイント増)となりそれぞれ上昇した。
【歯科診療】
歯科診療の1件当たり点数は1315.8点(同2.8%増)、1日当たり点数は835.8点(同3.6%増)だった。また、診療行為別の1件当たり点数は、「歯冠修復及び欠損補綴」が最も高く393.1点(同1.1%減)だった。
診療行為別の1日当たり点数においても、「歯冠修復及び欠損補綴」が249.7点(同0.3%減)で最も高かった。次いで「処置」が174.8点(同9.0%増)、「医学管理等」が121.9点(同1.8%増)と続く。
1件当たり日数は1.57日で前年に比べ0.01日減少している。
一般医療と後期医療に分けると、1件当たり点数が一般1277.7点(同3.0%増)、後期1460.4点(同2.4%増)、1日当たり点数が一般834.2点(3.9%増)、後期841.2点(2.7%増)で、いずれも後期が一般を上回った。
年齢階層別にみると、75歳以上が1件当たり点数で1457.1点と最も高くなっているが、1日当たり点数では、15~39歳が873.1点と最も高くなっている。なお、0~14歳が1件当たり点数988.7点、1日当たり点数820.2点で、それぞれ最も低くなっている。
診療行為別の1日当たり点数の構成割合を一般と比較すると、後期は「在宅医療」と「歯冠修復及び欠損補綴」の割合が高い一方、「処置」と「初・再診」が低い。1件当たり日数は一般1.53日、後期1.74日で後期が長かった。
【薬局調剤】
薬局調剤の1件当たり点数は1115.4点(同4.7%増)で50.1点の増加となった。処方箋受付1回当たり点数は925.6点(同4.0%増)で35.7点の増加だった。
調剤行為別にみると、「薬剤料」は1件当たり点数が807.6点(同5.8%増)、受付1回当たり点数が670.2点(同5.1%増)で最も高く、次いで「調剤技術料」が1件当たり点数161.3点(同4.7%増)、受付1回当たり点数133.8点(同5.1%増)となった。
厚労省は、1件当たりの点数が増加に転じたことについて、前回改定で基本料が上昇した影響が大きいとみている。
受付1回当たり点数の構成割合は、「薬剤料」が72.4%を占め、「調剤技術料」が14.5%、「薬学管理料」が13%を占める。レセプト1件当たり処方箋受付回数は1.21回(同0.01回増)だった。
一般医療と後期医療に分けると、1件当たり点数は一般10006.8点(同4.1%増)に対し後期1368.4点(同5.3%増)、受付1回当たり点数は一般852.6点(同3.8%増)に対し後期1084.8点(同3.9%増)で、いずれも後期が1.3倍高かった。
受付1回当たり点数に占める「薬剤料」の割合は一般71.7%、後期73.6%。年齢階級の上昇に比例して点数は高くなっている。1件当たり受付回数は一般1.18回、後期1.26回だった。
【薬剤の使用状況】
レセプト1件当たりの薬剤点数階級別件数の構成割合は、「500点未満」が院内処方76.7%、院外処方68.8%でいずれも7割を占めた。
年齢が高くなるほど「500点未満」の割合が低下し、0~14歳では院内93.2%、院外89.0%だが、75歳以上では院内68 .8%、院外56.7%まで落ち込む。
1件当たり薬剤種類数別件数の構成割合は、「1種類」が院内(構成割合の27.4%)、院外(同21.3%)とも最も高く、平均すると院内は3.22種類、院外は3.72種類だった。年齢階級ごとでは、院内・院外ともに75歳以上で「7種類以上」の割合が高くなった。
薬効分類別点数の構成割合は、入院の場合、「腫瘍用薬」が27.7%で最も高い。院内処方では「腫瘍用薬」が25.1%、院外処方では「その他の代謝性医薬品」が17.8%とそれぞれ最も高かった。
後発医薬品の薬剤点数に占める割合は0.6ポイント減の18.9%(一般医療17.8%、後期医療20.7%)となる。
このうち入院が14.6%(前年比0.8ポイント減)、入院外の院内処方が17.4%(同0.8ポイント増)、院外処方が19.2%(同0.9ポイント減)だった。
薬剤種類数(後発品のない先発品を除いた)に占める後発医薬品の種類数の割合は82.4%(同2.4ポイント増)となった。このうち入院は77.2%(同2.6ポイント増)、院内処方が70.8%(同3.1ポイント増)、院外処方が84.6%(同2.1ポイント増)。病院は82.9%、診療所は82.2%だった。
薬効分類別点数の構成割合をみると、入院は「抗生物質製剤」が最も高く20.0%を占め、院内処方と院外処方では「循環器官用薬」が最も高く、それぞれ21.2%、26.3%を占めた。
このほか、医科と薬局調剤を合算した総点数に占める薬剤料の割合のうち、入院は11.7%(同1.4ポイント増)、入院外が41.0%(同1.3ポイント増)だった。入院の内訳は投薬2.2%、注射8.8%で、入院外の内訳は投薬27.2%、注射12.1%となっている。