健保ニュース
健保ニュース 2025年7月下旬号
新たな地域医療構想での急性期機能
厚労省 救急・手術・総合性を評価軸に
厚生労働省は4日、入院・外来医療等の調査・評価分科会(分科会長・尾形裕也九州大名誉教授)に、急性期機能を担う病院について、新たな地域医療構想を踏まえて診療報酬上で評価する観点から、救急医療提供体制と手術実績、幅広い診療科に対応可能な総合診療体制の3つを評価軸に据え、現況と課題を示した。
厚労省は、新構想で急性期を担う医療機関の役割が「高齢者救急・地域急性期機能」と「急性期拠点機能」であることを踏まえ、それぞれに対応する形で、「一般的な急性期機能」と「拠点的な急性期機能」に整理し、3つの評価軸で現状を分析した。
現在、「急性期拠点機能」を担う病院の診療報酬上の評価には、内科や精神科、小児科、外科など多くの診療科に対応可能な体制を促す「総合入院体制加算」と、かかりつけ医などからの紹介状を持って受診する紹介受診重点医療機関の届出などを要件に外来機能との分化を促す「急性期充実体制加算」がある。
いずれも24時間の救急医療体制、救急搬送数年間2000件以上、全身麻酔手術件数年間2000件以上などを実積要件とする。
救急搬送件数別に病院の分布をみると、4000件以上は総合入院体制加算か急性期充実体制加算のいずれかを届け出ている病院が多いが、2000~4000件は加算を届け出ていない病院も一定程度存在した。
各2次医療圏で救急搬送件数が最も多い病院を抽出し、地域シェア率を算出した上で、救急搬送件数と地域シェア率の分布をみると、搬送件数自体は少なくても、その医療圏では総搬送件数の半分以上に対応しているなど、地域シェア率が高い病院があった。
また、DPC病院の手術実施件数に対して、手術の難易度などから算出される「外保連手術指数」の分布をみた。実施件数が同程度でも指数にはばらつきがあったが、実施件数が多くなるほど指数も高くなり、難易度が高い手術を実施している傾向がみられた。
さらに、複数診療科の標榜割合について、総合入院体制加算か急性期充実体制加算のいずれかを届け出ている病院とその他の病院を比べると、加算を届け出ている病院の方が標榜割合が高かった。
DPC病院の総合的な体制を評価する「カバー率指数」を病院規模別にみると、同規模で比較しても加算を届け出ている病院の方がカバー率指数が高く、多くの診療科に対応している傾向がうかがえる。
健保連の中野惠委員は、救急搬送の拠点的機能を強化するには、「救急搬送件数4000件を要件とすることもあり得る」と述べた。また、手術実績を評価するためには「件数だけではなく、難易度も考慮する必要性がある」と指摘。病院の総合性の適正な評価には、加算の届出と様々な疾患に対応できるカバー率を組み合わせた評価を検討するよう求めた。
牧野憲一委員(旭川赤十字病院名誉院長)は、同じ2次医療圏でも近隣医療機関の有無や地域面積などにも影響され、一律の基準で評価することは難しいとした。その上で、「地域医療を支える観点から救急医療提供体制に特化した評価は必要」と述べた。
津留英智委員(全日本病院協会常任理事)は、「一般的」「拠点的」といった機能を前提とした評価が示されたことに対し、「完全に分けていいのか」と疑問視し、「両機能を併せ持つ多機能型のケアミックス病院の役割も地域に求められている」と指摘した。