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健保ニュース 2025年7月下旬号

レケンビの費用対効果評価
中医協 介護含む評価手法が課題に
薬価算定組織でも検討

中央社会保険医療協議会(会長・小塩隆士一橋大経済研究所特任教授)は9日の総会で、アルツハイマー病による軽度認知障害と軽度認知症の進行を抑制するレケンビ点滴静注(レカネマブ)の費用対効果評価について、介護費用を含めた評価案を議論した。製薬企業からの求めに応じて実施する前例のない評価となるため、評価方法の明確化を求める意見が支払側と診療側の双方から出た。

こうした意見を踏まえ、厚生労働省は、新薬の具体的な薬価を算定する薬価算定組織で、「公的医療」と介護費用を含めた「公的医療・介護」の両方の立場で価格調整後の薬価を検討し、その上でどちらの評価案が妥当か総会で議論することを提案し、了承された。

総会では、費用対効果評価専門組織が6月27日に決定したレケンビの総合評価案を報告した。評価案は、レケンビの評価を「公的医療」と「公的医療・介護」で比較するため、費用対効果を測る指標となる「ICER500万円/QALY」に該当すると仮定した場合の参考価格をそれぞれ示した。

200㎎2mL1瓶当たりの価格は、「公的医療」が1万3567円、「公的医療・介護」が1万6329円で、差額は2762円。500㎎5mL1瓶当たりの価格は、「公的医療」が3万3917円、「公的医療・介護」が4万822円で、差額は6905円となった。

なお、特例的な価格調整を適用した場合は、「公的医療のみ」「公的医療・介護」いずれも200㎎2mL1瓶当たり3万8910円、500㎎5mL1瓶当たり9万7277円と同額になっている。

レケンビは令和5年12月に薬価収載されたが、ピーク時の市場規模が986億円相当の高額医薬品目になると見込まれるため、中医協は、費用対効果評価の価格調整に現行のルールを適用せず、特例的に対応することを了承した。併せて、介護費用を含む費用対効果評価について審議することも了承した。

健保連の松本真人理事は、「介護費用の軽減効果を医療保険の財源で評価することは、公的医療保険の根幹に関わる重大な案件だ」と強調した。「1瓶当たりについて介護費用を含む金額と含まない金額が示されたが、介護保険費用分を医療保険で評価するものと考えると医療保険制度への影響は決して小さくない」と指摘した。

さらに、介護費用を含む評価方法については、「中医協で判断するには情報不足」と述べ、詳細な情報の開示を求めた。

長島公之委員(日本医師会常任理事)は、初めての介護費用を含めた評価になることから、「今後の評価にも影響が大きい」と述べ、「評価手法を明確化して示すことが大事」との考えを示した。

森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、介護費用を費用対効果評価で取り扱うにあたり、「何を軸に評価するのかをはじめ、どこまでこの制度で対応するのかも、まだ議論が詰め切れていないのではないか」と指摘した。

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