健保ニュース
健保ニュース 2025年7月中旬号
医療部会が検討会新設を了承
新地域「構想」手引き策定へ 年度内取りまとめ
医師偏在対策も併せ議論
社会保障審議会医療部会(部会長・遠藤久夫学習院大学長)は4日、都道府県が新たな地域医療構想を策定する際のガイドラインの整備などに向け、「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」を新設することを了承した。
同検討会は、昨年12月に公表された新たな地域医療構想に関する取りまとめを踏まえ、2040年ごろを見据え、病院の機能だけではなく、かかりつけ医機能や在宅医療、医療介護連携を含めて検討する。
この中で、地域医療構想の策定と施策の実施に必要な内容、医師偏在是正の総合的な対策パッケージに関する事項などを議論し、今年度中に取りまとめる。医療計画のうち3年ごとに見直す外来医療計画も、今年度中に結論を出す予定だ。
取りまとめを踏まえ、厚生労働省は、新たな地域医療構想策定ガイドラインと第8次医療計画(後期)指針を策定し、都道府県に発出する。都道府県は26年に新構想や医療計画の策定に着手、27年からの一斉スタートを見込む。
また、医療計画策定に向け集中的な検討が必要な項目について、検討会の下に、▽在宅医療及び医療・介護連携▽小児医療及び周産期医療の提供体制等▽救急医療等▽災害医療・新興感染症医療──に関するワーキンググループを設置して議論するとした。
厚労省は、同検討会の主な審議事項の例として、▽圏域のあり方▽必要病床数▽医療機関機能▽外来、在宅医療▽医師偏在対策▽救急医療──などを挙げた。
圏域については、新たな地域医療構想で求める医療機関の機能となる「急性期拠点機能」や「高齢者救急・地域急性期機能」を地域ごとに確保する観点から、2次医療圏を基本とした構想区域を見直し、地域によって他圏域との統合を含む広域化の検討が必要とした。
先の通常国会に提出された医療法改正案に地域医療構想の見直しや医師偏在対策が盛り込まれていたが、継続審議となった。これを受け、同検討会では、法改正に関する部分である保険者からの拠出による重点医師偏在対策支援区域の医師への手当支給と、新たな地域医療構想への精神医療の位置づけ以外の検討事項を先行して議論するとした。
健保連の河本滋史専務理事は、現在でも人口規模の小さい2次医療圏がある中、「どの程度の圏域で医療を完結させるかという議論は不可欠だ」と述べた。
また、新たな地域医療構想で求められる地域での協議の場に保険者が関与することを踏まえ、協議の進め方や構想全体のPDCAの回し方についてあらかじめ方向性を示すよう要請した。
黒瀨巌委員(日本医師会常任理事)は、医療機能の集約化を目的とすることに異議を唱え、「あくまでも将来の医療ニーズと医療資源を踏まえた結果だ」と指摘した。その上で、集約先の病院と連携する診療所や中小病院への支援と合わせて、病床機能の転換や経営規模を縮小する医療機関への財政支援を求めた。
神野正博委員(全日本病院協会会長)は、人口が多い地域に在宅医療の提供が集中しているのは医療機関側の都合だと指摘し、人口が少ない地域での提供量を増やす必要があるとした。
島崎謙治委員(国際医療福祉大大学院教授)は、出生数の減少などで施設集約化や施設間連携の取り組みが求められるが、住民は住み慣れた場所で出産できなくなることを不安視していると指摘。医療安全と医療の質の維持に加え、妊産婦の施設までのアクセスや経費負担まで問題が山積していると述べた。