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健保ニュース 2025年7月中旬号

高額療養費の専門委
患者団体からヒアリング
次回以降、保険者や医療提供者も

高額療養費制度の在り方に関する専門委員会(委員長・田辺国昭東京大大学院教授)は6月30日、患者団体などから意見を聴取した。次回もヒアリングを行う予定で、佐藤康弘保険課長によると、保険者や医療提供者、学識経験者などを招致する見通しだ。

この日の会議には、慢性骨髄性白血病患者・家族の会「いずみの会」の河田純一副代表、日本アレルギー友の会の武川篤之理事長、血液情報広場・つばさの橋本明子理事長、ささえあい医療人権センターCOMLの山口育子理事長の4人が参考人として出席した。

河田参考人は、慢性骨髄性白血病患者は長期にわたり高額な薬剤を使い続ける必要があるとし、経済的な負担を理由に治療を中断する患者がいる実情を訴えた。

また、症状が安定している患者への薬の90日処方の対応に地域差があり、負担額の差につながっていることや、加入する保険者が変わると多数回該当が継続されないことも問題視した。

その上で、「高額療養費制度の見直しは長期療養者の命や生活、人生に直結する」「セーフティーネットとしての高額療養費制度の維持を望んでいるが、現行の制度でも必ずしもその役割が果たされていない」「所得と年齢のみを考慮した制度設計では、長期間の負担が十分に考慮されない」などと述べた。

武川参考人は、症状の重いアレルギー患者にとって、生物学的製剤などの新薬は効果が大きく、患者の安定した就労や社会復帰につながっていると強調した。一方、薬価が高額なため家計への負担が大きいと指摘し、多数回該当について「最低でも現状を維持してほしい」と要望した。

また、アトピー性皮膚炎やぜんそくは患者の日常生活の負担が大きいとし、「さらに経済的負担が増えると、患者を追い詰めてしまう」と懸念を示した。

橋本参考人は、自身が代表を務める「つばさ支援基金」の血液がん患者への金銭的な支援活動を紹介した。

山口参考人は高額療養費の自己負担上限額の引き上げが患者に与える影響に配慮しなければならないとしたが、「財源がなくなって突然はしごを外されると、より多くの人が路頭に迷う。そういった事態だけは避けなければならない」と述べた。その上で、「多数回該当に当てはまる人は一部であり、それ以外の人の負担増は避けられない状況ではないか」と主張した。

また、高額化する医薬品の効果検証の必要性も訴えた。

患者に寄り添った対応必要
健保連・佐野会長代理

健保連の佐野雅宏会長代理は患者の経済的、精神的負担の重さに理解を示し、多数回該当など制度面の課題について、「患者に寄り添った対応が必要だ」と述べた。

一方で、保険者の使命として正確な給付を挙げ、被用者保険全体で7700万人の加入者について、年間約10億件に上るレセプトに基づき給付を行っていると説明した。

その上で、高額療養費制度の見直しにあたっては「患者の納得感と公平性が重要だ」として、保険者や制度に期待する役割を各参考人に尋ねた。

河田参考人は薬の処方日数の地域差を挙げ、「審査支払機関が認めてくれないという声がある。均一な対応に向けて検討してほしい」と応じた。

山口参考人は医療費通知について、医療費全額がわかるような工夫を保険者に求めた。
 武川参考人は制度導入当初からの社会情勢の変化や今後の医療の高額化に対し、「保険者としてどう考えているのか」と逆にただしたほか、多数の保険者が存在する非効率性も指摘した。

これに対し、佐野会長代理は「患者と保険料を負担している加入者の双方にとっていい形を見いだしたい」と答えた。

村上陽子委員(日本労働組合総連合会副事務局長)は、ステークホルダーが関与しながら合意形成するのが重要だとし、「給付と負担の関係についても、つらい部分もあるが議論したい」と述べた。

大黒宏司委員(日本難病・疾病団体協議会代表理事)は患者団体の意見を踏まえ、「まず立ち止まって現状を把握することが重要だ」と訴えた。

城守国斗委員(日本医師会常任理事)は薬の有効性の考え方についての検討と国民の医療に対するリテラシー向上が必要だと主張した。

その上で、「国民みんなで病気になった人を支えるという国民皆保険の基本的な考え方をいま一度持って、政策を検討する必要がある」と述べた。

菊池馨実委員(早稲田大法学学術院教授)は、10年前の見直しの際の「患者の負担を踏まえ、さらなる引き下げが必要だ」という議論の答えを見つける作業と、高額な薬剤に医療保険財政がどう対応し、持続可能性を確保するかという現在の問題を考える作業を提案。「段階を分けて捉えることで、整理できるのではないか」と述べた。

会議終了後、記者団の取材に応じた佐藤保険課長は、審査支払機関の地域差について、「まずは状況を把握する」と述べた。

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