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健保ニュース 2025年7月中旬号

創薬力向上へ官民協議会が初会合
予算にらみ秋までに議論整理
関係審議会に報告し具体化

政府は6月26日、創薬力向上のための官民協議会の初会合を首相官邸で開き、今後の議論の進め方を決めた。協議会の下にワーキンググループ(WG)を設置し、まずは「投資とイノベーションの循環が持続する社会システムの構築」について議論する。来年度予算編成を見据え、秋に議論をまとめた後、中央社会保険医療協議会(中医協)をはじめ関係審議会に報告し、具体的な議論を促す方針だ。

この日の会合には、石破首相や林官房長官、福岡厚生労働相らのほか、国内外の製薬企業や関係団体、ベンチャーキャピタル、有識者など総勢30人が出席。製薬企業や研究機関、ベンチャー企業、政府、投資家などの連携により医薬品を実用化し、さらなる開発につなげる「創薬エコシステム」に資する取り組みと今後のスケジュールを議論した。

石破首相は、官民協議会について、「開かれた制度形成を可能にする、創薬における官民連携の新しい形になる」と述べ、会合を締めくくった。

WGの議題の柱は①我が国の創薬力の強化②国民に最新の医薬品を迅速に届ける③投資とイノベーションの循環が持続する社会システムの構築──の3つ。

9月上旬から③を中心に議論に着手し、秋ごろまでに取りまとめる。その内容に応じて、関係審議会に報告する。

取りまとめ後、①と②についても議論を重ね、来年5月ごろの開催を見込む官民協議会に整理した論点を報告する。

WGは、製薬業界団体や有識者、内閣府や厚労省などの関係省庁で構成する。
 会合終了後、記者団の取材に応じた厚労省医薬産業振興・医療情報企画課の水谷忠由課長(当時)は「WGでは産業政策の視点から、大きな方向性を整理することになるだろう」と述べた。また、「大きな方向性」を関係審議会に報告し、具体的な検討を委ねるとした。

③の議論を優先する理由には、来年度に改定を控える薬価への影響を挙げ、「秋ごろまでに報告しないと、審議会での検討が予算編成に間に合わない」と話した。

中医協での議論については、「企業が投資し、ビジネスとして医薬品を製造、供給する流れを踏まえ、薬価や診療報酬を決めている」と説明し、企業の投資をより適切に薬価などに反映させる必要があるとの考えを示した。

官民協議会は、昨年5月の「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議(創薬力構想会議)」の中間取りまとめや、今年2月に政府が閣議決定した「健康・医療戦略」を踏まえて設置された。

創薬力構想会議の中間取りまとめはドラッグ・ラグやドラッグ・ロス、医薬品産業の国際競争力低下などの課題認識の下、医薬品産業・医療産業全体を我が国の科学技術力を生かせる重要な成長産業と捉え、政策を力強く推進すべきだとした。

戦略目標に「治療法を求めるすべての患者の期待に応えて最新の医薬品を速やかに届ける」「我が国が世界有数の創薬の地となる」「投資とイノベーションの循環が持続する社会システムを構築する」などを掲げている。

健康・医療戦略は、「ドラッグ・ロス解消のため、我が国で当該疾患の既存薬がない薬剤等について、8年度までに開発に着手する」「官民協議会の議論を踏まえた各施策を通じて、事業予見性を拡大し、製薬産業の投資拡大を図る」といった成果目標を定めている。(WGの構成員とオブザーバーは次の通り。敬称略)


【業界団体】
▽日本製薬工業協会
▽米国研究製薬工業協会(PhRMA)
▽欧州製薬団体連合会(EFPIA)
【有識者】
▽伊藤由希子(慶応義塾大大学院教授)
▽菅原琢磨(法政大教授)
▽成川衛(北里大教授)
▽牧兼充(早稲田大ビジネススクール准教授)
【関係省庁】
▽内閣府健康・医療戦略推進事務局参事官
▽厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課長
▽経済産業省商務・サービスグループ生物化学産業課長
▽文部科学省研究振興局ライフサイエンス課長
【オブザーバー】
▽財務省主計局主計官
▽厚生労働省保険局総務課長

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