健保ニュース
健保ニュース 2025年7月上旬号
入院・外来医療分科会
かかりつけ医機能の評価を議論
中野参与 報告制度即した体制評価に
入院・外来医療等の調査・評価分科会(分科会長・尾形裕也九州大名誉教授)は6月19日、かかりつけ医機能報告制度で必要とされる「かかりつけ医機能」を踏まえた診療報酬上の評価について議論した。機能強化加算の届出数の停滞、生活習慣病管理料の継続率の低減などの課題が浮かび、今後さらに検討を深めていくとした。
厚労省はこの日の会合に、かかりつけ医機能に関する主な評価について①体制整備②診療行為③その他、連携や紹介──の3区分に整理した資料を提示した。新たに必要とされるかかりつけ医機能のうち、「一次診療可能な診療領域・疾患」と「臨床研修医の教育」には、対応する診療報酬が設けられていないことも明らかにした。
①は時間外対応加算や機能強化加算が該当する。このうち機能強化加算は、地域包括診療料などかかりつけ医機能を評価する診療報酬を届け出ており、体制が確保されている医療機関が初診時に加算できる。
社会医療診療行為別統計で届出医療機関数の推移をみると、令和3年は病院1302施設、診療所1万3888施設、4年は病院1304施設、診療所1万3438施設、5年は病院1289施設、診療所1万3518施設となっており、3年以降、大きな増減はなかった。
②は地域包括診療料・加算、小児かかりつけ診療料、生活習慣病管理料が該当する。このうち生活習慣病管理料は、脂質異常症、高血圧症、糖尿病を主病とする患者の治療計画を策定し、計画に基づく栄養や運動指導、服薬、療養など総合的な治療管理を行う。6年度改定では、外来管理加算との併算定不可、療養計画書の簡素化などが図られた。
NDBデータによると、3年上期に生活習慣病管理料を算定していた医療機関(3898施設)の継続算定率(同一医療機関で同一の管理料を継続して算定された率)は、4年下期は7割に、5年下期は5割と時間の経過に伴って低下していた。
また、「6年度入院・外来医療等における実態調査」の患者調査では、定期的な受診を続ける上で必要なことについて、66%の人が「予約診療を行っていること」と回答し、53%の人が「28日以上の長期処方に対応していること」と回答している。
4月から施行されたかかりつけ医機能報告制度は、国民・患者の適切な医療機関の選択と医療機関の連携強化による地域で不足する機能確保が目的で、8年1月から医療機関による都道府県への報告が開始され、同年4月の公表が予定されている。
健保連の中野惠参与は、現行の機能強化加算は、届け出があれば「かかりつけ医機能が高い」とする考え方だとして、「報告制度で明確化されたかかりつけ医機能の考え方にそぐわない」と指摘した。その上で、制度に沿った報酬上の体制評価を改めて検討するよう提案した。
また、生活習慣病管理料については、「患者が治療から脱落しないようにすることが重要」として、調査結果を踏まえ、予約診療と長期処方への対応を検討するよう求めた。
今村英仁委員(日本医師会常任理事)は、生活習慣病管理料の継続算定率の低減が示されたが、管理が継続していない患者が多いと一律に解釈していいのかと疑問を呈し、「高齢者の多くは疾患の変化により、医師の判断で別の医療機関で治療を継続することもある」と述べた。「こうしたかかりつけ医機能を病院や診療所間連携による「面」で担う良さを今後も出せるのか、それとも1人の医師が診るべきとの方向性なのか、評価は慎重にすべき」とした。
このほか、この日の会合では、データ提出加算、情報通信機器を用いた診療についても現状と課題を確認した。