健保ニュース
健保ニュース 2025年7月上旬号
高療専門委の議論を注視
超党派議連が論点整理
厚労相に提出
超党派の国会議員で構成する「高額療養費制度と社会保障を考える議員連盟」(会長・武見敬三前厚生労働相)は6月17日、第4回総会を開き、「よりよい社会保障のあり方、国民皆保険と適切な高額療養費制度のあり方に関する論点整理案」を会長一任でまとめ、同25日、福岡厚労相に提出した。議連は厚労省の「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」の議論が論点整理案に沿って進んでいるか注視する方針だ。
武見会長は総会の冒頭にあいさつし、「まだ課題に対する共通認識の形成には至っていないが、一定の論点をまとめた上で、今後の超党派の議論を進めたい」と述べた。
議連は17日の総会に、これまでの有識者からのヒアリングや議員との議論、患者団体の要望などを踏まえて作成した論点整理案を提示し、出席議員と意見交換した。
論点整理案は、療養費用の負担が家計に与える影響や受診への影響分析の結果と、制度変更の影響を受ける患者の意見を専門委の議論に反映させることを政府に求める。併せて、「保険とは「大きなリスクに備える」もの」であり、「高額療養費制度は「最後のセーフティネット」として保険の根幹を成す優先すべきもの」であることを踏まえ、保険者、医療従事者などの関係者から十分に意見を聞いて、慎重かつ丁寧に進めることも求める。
また、議連の活動については、高額な高度先進医療へのアクセスをいかに確保するかなど、「よりよい社会保障のあり方について、党派を超えて共通の理解を求めて議論を続けていく」としている。
議連の中島克仁事務局長は総会終了後、記者団の取材に応じ、出席議員から「各党の主張はあるが、この2点が超党派の共通項だろう」という意見があったと紹介した。
また、政府が高額療養費制度の方針を決める「秋まで」の期限の延長を求める意見もあったが、「超党派の共通項を見いだすことが重要だ」として、論点整理案に盛り込まなかったと説明した。期限については「単に時間をかけても「丁寧かつ慎重」な議論にはならない。(論点整理案は)期限より内容を重視した」と述べ、「超党派の論点整理案には重みがある」と強調した。
今後の議連の活動については、専門委の議論の注視を優先し、議連として見直し案などをまとめ専門委に提示する考えはないと語った。(論点整理の全文は次の通り)
よりよい社会保障のあり方、国民皆保険と
適切な高額療養費制度のあり方に関する論点整理
令和7年6月25日
高額療養費制度と社会保障を考える議員連盟
政府は、高額療養費制度について、保険料負担を抑制するとともに、大切なセーフティーネットを次の世代にも持続可能なものとするため、その見直しを行うこととした。
しかし、この見直しは、がん患者や難病患者など当該制度を利用している当事者の意見を聴くこともなく短期間の審議会による議論で決定するなどプロセスが不適切であった。
今回の高額療養費制度の見直しは、衆参両院の熟議の結果もあり、凍結となった。加えて、衆議院厚生労働委員会の決議では、今後の高額療養費制度の制度変更については、家計への影響の分析や受診への影響に留意することとされるとともに、長期にわたり高額療養費の支給を受けた者等の意見を聞いて行うこととされた。
本議員連盟は、今回の高額療養費制度見直し凍結を契機として、本年3月、よりよい社会保障のあり方、国民皆保険と適切な高額療養費制度のあり方を議論するために超党派の議員により設立された。
議連総会では、有識者をお招きしてご説明をいただき、活発な議論を行ってきた。有識者の方々からは、高額療養費制度は「最後のセーフティネット」であることが強調され、給付抑制には他の制度を含む幅広な検討を行うべきことが示された。
そして、今般、議連総会でのヒアリングや議論を踏まえ、今後の高額療養費制度の制度変更について、以下の論点整理を行ったところである。
1.制度変更により多大な影響を受けることが見込まれる患者等の意見が十分に反映されるようにするとともに、療養費用負担の家計への影響や必要かつ適切な受診への影響について分析し、その結果を社会保障審議会医療保険部会高額療養費制度の在り方に関する専門委員会での制度変更の検討に用いられるようにすること。
2.専門委員会での検討は、保険とは「大きなリスクに備える」ものであり、高額療養費制度は「最後のセーフティネット」として保険の根幹を成す優先すべきものであることを踏まえ、保険者、医療の担い手等の関係者から十分に意見を聴いた上で、慎重かつ丁寧に進めること。
本議員連盟は、高コスト化する高度先進医療をどのようにして国民一人一人が持続可能な形でアクセスできるようにするかなど、よりよい社会保障のあり方について、党派を超えて共通の理解を求めて議論を続けていく。