健保ニュース
健保ニュース 2025年7月上旬号
社会保障の担い手確保へ
佐野会長代理 適用拡大、着実な実施を
特例措置対応の健保組合に配慮も
療保険部会は6月19日、同13日に成立した年金改革関連法の柱の一つである被用者保険の適用拡大について議論した。健保連の佐野会長代理は、社会保障制度の維持に向けて担い手を確保し、働き方に中立的な制度を構築する観点から、被用者保険の適用拡大を「着実に進めてほしい」と述べるとともに、社会保険料負担の特例措置への対応で負担がかかる健保組合への「最大限の配慮」を要望した。
厚生労働省はこの日の部会に、年金改革関連法の成立を報告した。
関連法の柱の一つである被用者保険の適用拡大については、短時間労働者の適用要件から賃金要件を撤廃するとともに、企業規模要件を段階的に引き下げ、廃止する。
また、これまで社会保険非適用とされてきた個人事業所の非適用業種を解消することで、フルタイムの労働者も含めた適用拡大を進める。
併せて、事業主が労使折半を超えて負担した社会保険料を制度的に支援する特例措置により、社会保険に加入する小規模事業所の事業主や被保険者の社会保険料負担を軽減する。
衆院厚労委員会では、特例措置に対する支援や特例措置の支援対象になる第2号被保険者の範囲の整理、早期の任意適用推進の検討とさらなる適用拡大について検討し、必要な措置を講じることなどが附帯決議された。
参院厚労委員会では、在外公館で働く日本採用の労働者の被用者保険適用の検討が附帯決議に追加された。
佐野会長代理は適用拡大の推進にあたり、「短時間労働者や事業主への支援は必要だ」として保険料の特例措置の趣旨に理解を示しつつ、「健保組合には財源手当てと事務負担の2つの課題がある」と指摘。衆院厚労委員会の附帯決議を踏まえ、「財源は国が手当てすべき」「特に小規模事業所の多い健保組合での負担割合の管理、保険料還付作業などで大規模なシステム改修を含む対応が見込まれる」として、健保組合への最大限の配慮を求めた。
北川委員も、適用拡大を「着実に進めてほしい」と述べるとともに、特例措置の理解促進に取り組むことや、事業所の実務面への支援といった配慮を求めた。
村上委員は、附帯決議に記載された「企業規模要件の撤廃を待たずに、早期に任意適用を進める」ための具体策を尋ねた。
これに対し、厚労省は制度として以前から任意適用は可能だとして、特例措置を含めた周知広報に取り組むことで、強制適用になる前に、より多くの人に任意適用を活用して社会保険に加入してもらう考えを示した。
伊奈川秀和委員(国際医療福祉大教授)は、雇用保険の適用要件との齟齬や、ギグワークなど新たな働き方の課題が残るとして、「長期保険である年金制度と異なり、短期保険である医療保険制度の特徴を踏まえた議論が必要だ」と主張した。
城守委員は適用拡大の趣旨に理解を示し、「医療機関の安定的な継続性が損なわれない制度設計にしてほしい」と述べた。
池田参考人(国民健康保険中央会)は、被用者保険の適用拡大が国民健康保険の被保険者減少につながり、国保の財政や保険者機能に不安が生じるとして、「国保が安定した、持続可能な制度になるよう支援してほしい」と訴えた。
前川参考人も同様に国保への支援を求めた。また、附帯決議の「さらなる適用拡大」の検討にあたり、「医療保険制度の一本化を含めた抜本的な見直しなど、制度の将来像についても議論してほしい」と要望した。