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健保ニュース 2025年7月上旬号

今年度末期限の病床転換助成
「延長」「廃止」意見割れる
剰余金返還の声も

医療保険部会は6月19日、今年度末に期限を迎える病床転換助成事業について、都道府県と医療機関を対象に実施したアンケート調査とヒアリングの結果を踏まえた今後の対応を議論した。同事業の今後のニーズが限定的であることから廃止を求める意見があった一方、手続きの簡素化など見直しを図って継続するよう求める意見もあった。また、令和5年度時点で約45億円に積み上がった病床転換支援金の剰余金の活用や返還も課題に挙がり、引き続き検討することとした。

同事業は、医療の必要性に応じた機能分担の推進を目的とした転換支援措置の一つで、医療療養病床を介護医療院やケアハウス、介護老人保健施設などに転換する医療機関に対し、その整備費用を都道府県が助成する。国と都道府県と保険者がそれぞれ10:5:12の割合で費用を負担している。平成20年度に開始し、3度の延長を経て、今年度末に事業期限を迎える。

これまで、医療療養病床7465床の転換に活用された一方、都道府県ごとの活用状況に大きな差がある。このため、事業の実態調査や効果検証を行うこととされていた。

これを踏まえ、厚生労働省は6年度に調査を実施。アンケートは42都道府県(回答率89.4%)と医療機関439施設(回答率21.6%)から回答を得た。ヒアリングは6都道府県と8医療機関に対して行った。その結果を事業の実績と効果、今後の活用見込みに分けて、この日の部会に報告した。

実績については、人口当たり医療療養病床数が全国平均以上の二次医療圏の45.3%で同事業が利用され、平均未満の二次医療圏より16.3ポイント高かった。

一方、同事業を活用しない理由には、申請手続きの煩雑さや他の公的な補助金・助成事業の活用が挙げられた。

効果に関しては、医療機関へのアンケートの結果、「地域の患者ニーズを満たすことができた」が66.7%で最多だった。次いで「施設やサービスの充実につながった」が56.7%、「経営判断上転換の後押しになった」が46.7%と続いた。

今後の活用見込みは、都道府県の52.4%が「今後、事業の活用を希望する医療機関が現れる可能性は高くない」と回答するなど限定的だった。

厚労省はこうした調査結果に加え、療養病床以外からの転換も助成対象にすることや、医療介護総合確保基金など既存の支援制度の存在などを論点として提示した。

健保連の佐野会長代理は調査結果を受け、「本事業が十分に機能していないという印象は拭えない」と指摘した。その上で、地域医療構想を進める中で、病床再編や集約化は重要だとしつつも、ほかの支援制度があることも踏まえ、同事業を「廃止すべきではないか」と主張した。

北川委員も同様に、「単に延長とはならない」と述べた。
 一方、城守委員は今後の介護ニーズの増加や医療と介護の連携強化の方針などを踏まえ、医療機関は病床削減や介護保険施設への転換を検討していると説明。「しっかりとした財政支援がないと転換できない」と述べ、円滑な介護保険給付確保の指針である介護保険事業計画との整合性に配慮しつつ、「当面の間、延長するのが適切だ」と主張した。

その上で、申請手続きの簡素化や円滑な交付、医療療養病床以外の病床への対象拡大など、事業がより活用されるよう検討を求めた。

中村さやか委員(上智大教授)は、「目立った効果がないので、中止を検討すべき」としつつも、継続する場合は、地域で不足している病棟に転換した医療機関のみを対象に、より手厚く助成するなど使いやすくする方法もあるとした。

また、医療機関のアンケート回答率(21.6%)が低すぎると指摘し、結果の信頼性に疑問を呈した。

前川参考人(全国市長会)は、仮に事業を延長する場合は、新たに支援金を徴収するのではなく、剰余金を活用することを提案した。また、終了する際は剰余金の返還を検討する必要があると述べた。

委員の意見を受け、田辺部会長は厚労省に事業の今後の対応を検討するよう指示した。

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