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健保ニュース 2024年1月下旬号

該当患者割合をシミュレーション
急性期入院1 厳格化ケースで2割減
支払・診療側の意見は不一致

厚生労働省は、「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」にかかる該当患者割合のシミュレーション結果をまとめ、10日の中医協総会に提示した。

「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」の評価項目と該当患者割合について、複数の基準から最も厳しい基準を組み合わせた場合、旧7対1入院基本料に相当する「急性期一般入院料1」の基準を満たす医療機関が2割減少することが明らかになった。

支払側は、病床機能の分化、強化の推進に向けて、厳格な基準を設定するよう主張。一方、診療側は医療機関に与える影響を懸念し、見直し案をさらに緩和した基準も含めて検討するよう求めた。

シミュレーションは、「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」の評価項目のうち、A項目の▽救急搬送後の入院/緊急に入院を必要とする状態の「評価日数」▽抗悪性腫瘍剤の使用(注射剤のみ)の「評価点数」─について、それぞれ2パターンを組み合わせた4つの見直し案により実施。見直し案の組み合わせは、▽案1が「評価日数」を1日、「評価点数」を2点(現行通り)▽案2が同2日、同2点▽案3が同1日、同3点▽案4が同2日、同3点─とした。

このうち、「急性期一般入院料1」の医療機関を対象としたシミュレーションでは、▽該当患者割合の基準▽病床数▽平均在院日数─ごとに基準を満たす医療機関割合の増減を示した。

なお、該当患者割合は、現行のB項目(患者の状況等)を除外し、「A得点3点以上またはC得点1点以上の者の割合」(該当患者割合①)と「A得点2点以上またはC得点1点以上の者の割合」(該当患者割合②)の2つの基準を設ける見直しが検討されていることを踏まえ、基準値を設定。該当患者割合①は「15%」、「18%」、同②は「24%」、「28%」を用い、それぞれを組み合わせた計4パターンで試算している。

シミュレーション結果から、現行の判定基準を見直したことによる基準該当医療機関の割合の推移をみると、「見直し案1」の基準を満たす医療機関数は、該当患者割合①の基準を「18%」、同②の基準を「28%」と最も厳格化したケースで19.7%減少(必要度Ⅰ 29.6%減、必要度Ⅱ 17.4%減)した。

病床数別では、「200床以上」15.4%減(同28.6%減、同15.1%減)、「200床未満」29.8%減(同29.7%減、同28.0%減)。

平均在院日数別では、「14日以内」12.8%減(同22.3%減、同10.6%減)、「15日以内」14.8%減(同24.1%減、同12.7%減)、「16日以内」16.5%減(同24.7%減、同14.6%減)、「17日以内」18.4%減(同28.0%減、同16.2%減)だった。

「見直し案4」の基準を満たす医療機関数は、該当患者割合①の基準を「15%」、同②の基準を「24%」と最も緩和したケースで1.5%減少(同5.4%減、同0.9%減)。

病床数別では、「200床以上」0.6%増(同9.5%増、同0.2%増)、「200床未満」6.6%減(同6.9%減、同5.8%減)。

平均在院日数別では、「14日以内」0.8%減(同1.1%減、同0.6%減)、「15日以内」1.0%減(同1.2%減、同0.7%減)、「16日以内」0.9%減(同2.1%減、同0.6%減)、「17日以内」1.3%減(同4.3%減、同0.8%減)。

基準が最も緩い見直し案でも基準を満たす医療機関は2%弱減少する。

基準の厳格化を支持
健保連・松本理事

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、見直し案のなかで最も影響が小さい「見直し案4」よりさらに影響が小さい見直し案も含めて検討すべきと主張。平均在院日数は、現行の18日から変更しないよう訴えた。

急性期一般入院料1における重症度、医療・看護必要度の該当患者割合にかかる判断基準の見直しは、「深刻な打撃を急性期病棟に与える」と言及。特に病床数200床未満の医療機関で、より大きく影響するとして、十分な配慮を求めた。

健保連の松本真人理事は、最適な入院医療体制を構築するため、患者の状態や医療資源投入量に応じた評価をエビデンスにもとづいて判断することが不可欠と指摘。入院・外来医療等の調査・評価分科会における技術的な検討結果を尊重しつつ、厚生労働省から提出されたシミュレーションを踏まえ、病床機能の分化・強化を着実に推進すべきと強調した。

急性期一般入院料1における重症度、医療・看護必要度の該当患者割合の基準について、「4年度診療報酬改定で、病床数200床以上の必要度Ⅱの該当患者割合を29%から28%に変更した背景に、コロナ禍を踏まえた地域医療への配慮があった」と言及。今回の改定は平時が前提として、病床数200床以上の必要度Ⅱの該当患者割合を29%へ厳格化することを提案した。

見直し案の選択は、入院1日目から2日目にかけて医療資源投入量が非常に大きく落ち込んでいることを理由に、「見直し案1もしくは3を支持する」と表明。該当患者割合①は、「14~16%あたりが境界となる」との認識を示した。

平均在院日数は、特定入院料の届出状況や医療提供の実績をもとに、「12~14日」と「15日以上」で病床機能や手術の実績等が異なっている、「15日超」では実質的な医療資源投入量が急性期一般入院料2や同4と大きく変わらないと指摘。「14日を基準とすべき」と主張した。

支払側の眞田享委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理)は、松本理事の意見に賛同し、「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」について、「今回の改定で機能分化を一層促進するため、少なくとも現行水準以上の基準を設定することが必要」と強調した。

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