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健保ニュース 2024年1月中旬号

こども戦略と改革工程を閣議決定
支援金制度構築で1兆円確保
医療等28年度までに歳出改革

政府は12月22日、次元の異なる少子化対策の実現に向けた「こども未来戦略」と、その財源確保や社会保障の持続可能性に向けた「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」を閣議決定した。年間3.6兆円の予算規模を見込む「こども・子育て支援加速化プラン」を支える財源は、▽歳出改革(1.1兆円)▽既定予算の最大限の活用等(1.5兆円)▽歳出改革による公費節減および支援金制度の構築(1.0兆円)─で確保。「加速化プラン」が完了する2028年度までに実施を検討する「医療・介護制度等の改革」として、「医療DXによる効率化・質の向上」など具体策を明示した。

政府の「こども未来戦略」は、少子化・人口減少のトレンドを反転させるために、これまでとは次元の異なる少子化対策の実現に向けて取り組むべき政策強化の基本的方向を取りまとめた内容で、将来的なこども・子育て予算の倍増に向けた大枠を示した。

児童手当の抜本的拡充や出産等の経済的負担の軽減などを盛り込み、全体として年間3.6兆円程度の予算規模を見込む「こども・子育て支援加速化プラン」を支える財源については、①歳出改革(1.1兆円程度)②既定予算の最大限の活用等(1.5兆円程度)③歳出改革による公費節減および支援金制度の構築(1.0兆円程度)─で確保する。

①は「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」における医療・介護制度等の改革を実現することを中心に取り組み、これまでの実績も踏まえ、2028年度までに公費節減効果について1.1兆円程度、②は子ども・子育て拠出金など既定の保険料財源や、社会保障と税の一体改革における社会保障充実枠の執行残等の活用などにより、2028年度までに全体として1.5兆円程度を確保。

また、③は歳出改革と賃上げにより実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で2026年度から段階的に「こども・子育て支援金制度」を構築し、2028年度に1.0兆円程度を確保する。

歳出改革による社会保険負担軽減額から医療・介護の制度改正による追加的な社会保険負担額を差し引いて計算した実質的な社会保険負担軽減の効果は、2023・2024年度分で0.33兆円程度と見込む。前期財政調整における報酬調整(1/3)の導入など、能力に応じた全世代の支え合いの観点から実施する制度改革等による影響額は、追加的な社会保険負担額から控除して計算した。

「こども・子育て支援金制度」は、支援金の充当対象事業にかかる費用の拠出のため、医療保険者が、こども・子育て支援納付金を納付する。納付に充てる費用として、医療保険者が被保険者等から保険料と合わせて支援金を徴収。2026年度から開始し、2028年度までに段階的に構築する。

各年度における支援納付金の総額は、毎年末の予算編成過程で見込み額を基に、こども家庭庁が支援金を拠出する立場にある関係者等の意見を聴取。その年度までに生じた実質的な社会保険負担軽減の効果の範囲内で決定する。

支援納付金総額に対する医療保険者間での費用負担の分担は、▽後期高齢者医療制度とその他の医療保険制度は後期高齢者と現役世代の医療保険料負担(現行の出産育児支援金における按分と同様)▽被用者保険と国民健康保険は加入者数(現行の介護納付金、後期高齢者支援金における按分と同様)▽被用者保険間は総報酬(同)─に応じて按分。

医療保険者が被保険者から徴収する支援金は、被用者保険、国民健康保険・後期高齢者医療制度それぞれの各医療保険者の支援納付金総額に照らし、医療保険料の賦課・徴収の方法を踏まえ、医療保険者ごとに設定する。被用者保険は、実務上、国が一律に示す。

医療保険者への財政支援として、保険者の支援納付金の納付業務にかかる事務費の国庫負担等の措置を講じるほか、施行時の医療保険者における準備金等の必要な経費について、必要な措置を検討するとした。

「加速化プラン」に持ち込まれた施策を実施するために必要な法案とともに、支援金制度の導入等に関する法案を来年の次期通常国会に提出する。

全社構築の改革工程
少子化財源へ歳出削減

政府の「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」は、(1)働き方に中立的な社会保障制度等の構築(2)医療・介護制度等の改革(3)「地域共生社会」の実現─の3分野について、歳出改革の見直しに取り組む。

改革を進めるにあたり、(Ⅰ)来年度(2024年度)に実施する取り組み(Ⅱ)「こども・子育て支援加速化プラン」の実施が完了する2028年度までに実施について検討する取り組み(Ⅲ)2040年頃を見据えた中長期的な課題に対して必要となる取り組み─の3つの時間軸に整理。(Ⅱ)については、2028年度までの各年度の予算編成過程で実施すべき施策を検討・決定する。

(2)の(Ⅰ)は、法改正実施済みの「前期財政調整における報酬調整(1/3)の導入」や「後期高齢者負担率の見直し」を盛り込んだ。

(2)の(Ⅱ)は、▽医療DXによる効率化・質の向上▽医療提供体制改革の推進▽効率的で質の高いサービス提供体制の構築▽イノベーションの推進、安定供給の確保と薬剤保険給付のあり方の見直し▽介護保険制度改革(利用者2割負担の範囲見直し、多床室の室料負担の見直し)▽医療・介護の3割負担(現役並み所得)の適切な判断基準設定▽高額療養費自己負担限度額の見直し─などを列挙した。

このうち、「医療DXによる効率化・質の向上」は、2026年度に共通算定モジュールを本格的に提供したうえで、医療機関等のシステムを抜本的に改革し、効率的で質の高い医療を実現。また、社会保険診療報酬支払基金について、医療DXに関するシステムの開発・運営主体の母体とし、抜本的に改組する工程を示した。

「介護保険制度改革」は、利用者負担が2割となる「一定以上所得」の判断基準の見直しについて、2027年度から開始する「第10期介護保険事業計画期間」の前までに結論を得るとした。

全社構築本部で岸田首相
関係大臣に改革推進指示

岸田首相は、12月22日に開催された第10回全世代型社会保障構築本部で、「こども未来戦略で示した3.6兆円規模の加速化プランの実施で、日本の子ども1人当たり家族関係支出はOECDトップのスウェーデンに達する水準となり、画期的に前進する」と発言した。

加速化プランを支える財源を確保するための歳出改革は、改革工程に沿って、全世代型社会保障制度を構築する観点から取り組むこととしていると言及。

少子化対策の財源確保のためだけでなく、社会保障を持続可能なものとするため、全世代が負担能力に応じて公平に支え合う仕組みを構築するとの考えに沿って取り組みを進めるよう、関係大臣に指示した。

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