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健保ニュース 2023年11月下旬号

支援金制度の具体的設計に着手
少子化財源 全世代で支える連帯の仕組み
賦課・徴収の方法など論点

こども家庭庁の「支援金制度等の具体的設計に関する大臣懇話会」(遠藤久夫座長)は9日、初会合を開催し、令和6年度から取り組む「こども・子育て支援加速化プラン」の安定財源を社会・経済の参加者全員が広く負担する「支援金制度」の創設に向けた議論に着手した。

政府が6月13日に閣議決定した「こども未来戦略方針」は、年間で3兆円半ばの予算規模を見込む「こども・子育て支援加速化プラン」等を支える安定財源を確保するために、徹底した歳出改革等を行うなかで、社会・経済の参加者全員が連帯し公平な立場で広く負担していく新たな枠組み「支援金制度(仮称)」を構築。詳細について年末に結論を出す方針を示していた。

この日の会合では、こども家庭庁が、「支援金制度」の位置づけについて、▽実質的な追加負担とならないよう取り組むなかで少子化対策を実施▽少子化対策に受益を有する全世代・全経済主体が子育て世帯を支える新しい分かち合い・連帯の仕組み─と整理。

支援金が個々人にとって過度な影響とならないようにするため、「拠出額は負担能力に応じた仕組みとするなどの設計が重要」との方向性を示した。

そのうえで、①支援金の趣旨を踏まえた支援金の充当事業②支援金の賦課・徴収の方法③費用負担の見える化を図るための新たな特別会計「こども金庫」のあり方や透明性の確保を図るための措置─を「支援金制度」設計にあたっての具体的論点として提示。

このうち、①は、▽支援金を充当する事業を法律上明確化・限定する必要性や、その際の制度設計▽これまで比較的支援が手薄だった妊娠・出産期から0~2歳の支援策にまず充当する視点─を論点とした。

②は、「戦略方針」における記載や、こども未来戦略会議における意見等も踏まえ、医療保険者が被保険者からの支援金の徴収と国への納付を担うことについて、その法的位置づけを含めた考え方を論点として示した。

そのうえで、仮に医療保険者が支援金の徴収と国への納付を担う場合、制度設計にあたって、(1)医療保険者間の費用負担のあり方(2)医療保険者における被保険者への賦課(3)低所得者に対する軽減措置、賦課上限等─の論点があると提起。

このうち、(1)は保険料総額、加入者数、総報酬額に応じた仕組みがある(2)は被用者保険では各被保険者の標準報酬月額および標準賞与額に一定の料率を乗じて得た額としている(3)は国民健康保険や後期高齢者医療制度で措置している─などを論点とした。

③は、▽支援金を充当する事業や支援金の充当割合を法律上明確化・限定▽毎年度の支援金の規模等を決定する際に、支援金を拠出する立場の関係者から意見を聴取▽子ども・子育て拠出金において事業主の拠出金率に上限が設けられていることを踏まえ、支援金についても上限を設定─する仕組みを論点として示した。

健保連の佐野雅宏副会長は、「少子化の問題は日本にとって喫緊の課題であり、国を挙げて取り組むべき待ったなしの施策だ」と述べたうえで、「支援金制度は徹底した歳出改革、既定予算の最大限の活用を前提として全世代で支える仕組みを導入し、子育て世代となる現役世代の負担軽減に資するものとすべき」と発言。

また、支援金制度について、「こども未来戦略方針」に明記された「社会保険の賦課・徴収ルートの活用」を検討するにあたっては、「国の合理的な説明により、国民が納得する必要がある」と強調した。

論点②については、「医療保険者が支援金の徴収・納付を行うのであれば、あくまでも代行徴収という位置づけにとどめるべき」との認識を示したうえで、「仮に社会保険の徴収ルートを活用するのであれば、その法的な位置づけも含め、医療保険者、被保険者、加入者等が納得できる説明が必要」と指摘した。

その場合、医療保険とは別勘定とするなど、明確に区分けすることはもとより、代行徴収である以上、「負担に関する説明責任や財政運営責任は保険者ではなく国が負う」ということを明確化するよう強く要望。

合わせて、被用者保険の費用負担は、子ども・子育て拠出金のように、国が定めた一定率による徴収方法とする対応を求めた。

村上陽子委員(日本労働組合総連合会副事務局長)は、「教育や児童福祉に関する財源が公費で賄われてきたことを踏まえれば、税財源を排除し、社会保険制度を通して法的性質や給付と負担の関係が不明確な支援金制度を新設することには大きな疑問を覚える」と言及。

さらに、「社会保険制度を通じて負担する一方、その使途はこども・子育て支援を目的とした施策であるということは、本来の社会保険制度の趣旨に沿っていないのではないか」と問題提起した。

閉会時にあいさつした加藤鮎子内閣府特命担当相(こども政策・少子化対策・若者活躍・男女共同参画)は、「こども未来戦略方針に盛り込まれた必要な制度改正のための所要法案を令和6年の通常国会に提出することとしており、現在、こども家庭庁で具体的な制度設計を進めている」と説明。

新しい分かち合いの仕組みである「支援金制度」を国民に伝えていく手法等について、皆さんから指摘された意見を踏まえつつ、具体的な制度設計に取り組んでいく意向を示した。

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