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健保ニュース 2023年11月中旬号

利用者負担の所得判断基準など
介護部会が「給付と負担」議論
伊藤常務理事 原則2割への見直し必要

社会保障審議会介護保険部会(菊池馨実部会長)は6日、政府方針を踏まえた年末の結論に向けて、利用者負担の一定以上所得の判断基準の取り扱いなど、介護保険制度の「給付と負担」をテーマに議論した。

政府が今年の6月16日に閣議決定した「経済財政と改革の基本方針2023(骨太方針2023)」は、「介護保険料の上昇を抑えるため、利用者負担の一定以上所得の範囲の取り扱いなどについて検討を行い、年末までに結論を得る」との方向性を明示。

これを受け、介護保険部会は7月10日に「給付と負担」の見直しに向けた議論を再開した。同部会はそれ以来、約4か月ぶりの開催となる。

介護保険制度における利用者負担は、平成12年4月の制度創設以来、1割だったが、世代間・世代内の公平性を確保しつつ、制度の持続可能性を高める観点から、27年8月に被保険者の上位20%を2割負担、30年8月に現役並み所得者を3割負担へと見直した。

このうち、利用者負担が2割負担となる「被保険者の上位20%」は、「合計所得金額160万円以上」かつ「年金収入+その他合計所得金額280万円以上(単身世帯の場合。夫婦世帯の場合346万円以上)」の場合に該当。利用者に占める割合は4.6%となる。

一方、75歳以上の後期高齢者における医療保険の患者負担は、令和4年10月から「被保険者の上位30%」を2割とする見直しを実施。75歳以上の被保険者に占める割合は約20%となる。

この日の会合では、厚生労働省が前回会合の議論を踏まえ、「75歳以上における単身・夫婦2人世帯の収入と支出の状況(年収別モデル)」について、それぞれ4つの試算を提示した。

「75歳以上の単身世帯」は、前回会合で示した①年収280万円(上位20%)②年収220万円(上位30%)の間となる③年収260万円④年収240万円の試算を追加。

同様に、「75歳以上の夫婦2人世帯」は、前回示した⑤年収346万円(上位20%)⑥年収286万円(上位30%)の間となる⑦年収326万円⑧年収306万円の試算を追加した。

このうち、①は支出258万円(うち税・社会保険料49万円)で差額22万円、③は同248万円(同45万円)で同12万円、④は同228万円(同39万円)で同12万円、②は同211万円(同33万円)で同9万円。

また、⑤は同328万円(同55万円)で同18万円、⑦は同309万円(同48万円)で同17万円、⑧は同286万円(同43万円)で同20万円、⑥は同265万円(同34万円)で同21万円だった。

このほか、厚労省は、この日の会合に、「介護保険における2割負担の導入による影響に関する調査」を示した。

2割負担の導入後5か月以内における週間サービス計画表の1週間当たりの利用単位数の合計値の変化をみると、「合計利用単位数が減った/サービス利用を中止した」割合は、1割負担の利用者が1.3%、2割負担の利用者は3.8%。

また、「合計利用単位数が減った者」のうち、「介護にかかる支出が重い」ことを理由に挙げた割合は、1割負担利用者全体の0.1%、2割負担利用者全体の1.3%だった。

健保連の伊藤悦郎常務理事は、介護給付費が医療費の伸びを上回る勢いで増加する見込みの一方、現役世代の負担は既に限界に達し、今後さらに現役世代が急減していく状況のなか、制度の安定性・持続性確保や現役世代の負担軽減に資する見直しを進めていくべきと強調。

このため、利用者負担は、低所得者に配慮しつつ、原則2割負担とする見直しが必要との考えを示した。

そのうえで、より踏み込んだ議論を進めていくためにも、所得水準として想定される幅広い選択肢と財政影響を提示するよう厚労省に要望。

住民税非課税の低所得者を除いたすべての者を2割負担とするケースなど、あらゆる選択肢を提示したうえで、後期高齢者の2割負担の範囲も参考にしつつ、判断基準の妥当性について議論していくべきと発言した。

他方、高齢者は現役世代と比べ、収入は低いが貯蓄は大きい傾向があると指摘し、「世代間のバランスを考える際はフローだけでなく、ストックも考慮すべき」と主張した。

厚労省は、年末の6年度予算編成過程を視野に入れ、財政影響等のデータにもとづき同部会で引き続き議論を進めていく意向を示した。

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