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健保ニュース 2023年11月中旬号

財務省が次期診療報酬改定など提言
本体マイナスへ 診療所の報酬単価引き下げ
リフィル処方箋は適正化措置

財政制度等審議会(十倉雅和会長)の財政制度分科会は1日、令和6年度予算編成と今後の財政運営への考え方を提言する「建議」の取りまとめへ、財務省の社会保障改革案にもとづき議論した。財務省は、次期診療報酬改定に向け、診療所の初・再診料を中心に報酬単価を引き下げることで診療報酬本体をマイナス改定とする改革を提言。前回改定で導入したリフィル処方箋は適正化効果が未達成なことから、処方箋料の引き下げなど、適正化効果分を差し引く調整措置を講じるべきとした。他方、保険給付範囲の見直しに向けては、OTC類似薬にかかる自己負担のあり方を検討するよう訴えた。

財務省が1日の財政制度等審議会・財政制度分科会で示した社会保障改革案は、全世代型社会保障制度の構築や令和6年度の診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬のトリプル改定などに対する改革の方向性を提言した。

診療報酬改定については、本体、薬価など、保険償還の対象となるサービスの価格は国民負担を軽減する観点から、できる限り効率的に提供するよう、診療報酬の合理化・適正化等を進めていく必要があると指摘。

6年度診療報酬改定では、診療所の極めて良好な経営状況等を踏まえ、診療所の初診料・再診料を中心に報酬単価を引き下げること等により、現場従事者の処遇改善の課題に対応しつつ診療報酬本体をマイナス改定とすることが適当とした。

また、▽診療所・病院・調剤の区分ごとに経営状況や課題が異なることを踏まえたメリハリをつけた改定とする▽現役世代の保険料負担の軽減による手取り所得を確保する▽高齢化等に伴う事業者の収益増等(全体として年+2~3%)が現場の従事者の処遇改善につながる構造を構築する─との考えを示した。

10対1急性期入院基本料
廃止し回復期へ転換を

令和6年度の診療報酬改定に向けては、▽診療所▽病院▽調剤報酬▽薬価改定▽経営情報の見える化▽医療DX─の改革の方向性を提言した。

「診療所」については、財務局を活用した機動的調査から、収益は過去2年間で12%増加する一方、費用は6.5%増加し、経常利益率は3.0%から8.8%へと急増したとし、この間、利益剰余金は約2割増加(看護師等の現場従事者の+3%の賃上げに必要な経費の約14年分に相当)している状況を示した。

そのうえで、改革の方向性として、診療所の報酬単価の引き下げのほか、診療行為のコストによりきめ細かく対応する観点から、地域別の報酬体系を検討するよう提言。

診療所の不足地域と過剰地域で異なる1点当たり単価を設定し、報酬面からも過剰地域から不足地域への医療資源のシフトを促す必要があるとした。

他方、4年度診療報酬改定で導入したリフィル処方箋について、積極的な取り組みを行う保険者を各種インセンティブ措置で評価するほか、薬剤師がリフィル処方箋への切り替えを処方医に提案することを評価する仕組みや、薬剤師の判断でOTC類似薬をリフィルに切り替えることを認めるよう明記。

さらに、リフィル処方箋による適正化効果(改定率換算で▲0.1%)が未達成であることを踏まえ、処方箋料の時限的引き下げなど、「年末の診療報酬改定で未達成分を差し引く調整措置を講じる必要がある」との考えを示した。

「病院」は、病床機能報告と診療報酬の関係として、最も報酬が高い「急性期一般入院料1」(看護配置7対1が要件)に偏り、看護配置が比較的小さい病床でも「急性期」に分類されている例が多いと指摘した。

病床の役割分担を適切に進めるため、「7対1」の看護配置に依存した報酬体系から、患者の重症度、救急受入れ、手術といった「実績」をより反映した体系に転換していくべきと提言。そのうえで、「10対1」といった看護配置を要件とする急性期入院料は廃止し、回復期への転換を促す対応を訴えた。

「調剤」は、処方箋の集中率が高い薬局でも、集中率が低く小規模な薬局と同様に「調剤基本料1」が算定されているとして、「経営の実態も踏まえながら、処方箋の集中率が高い薬局等における調剤基本料1の適用範囲などを見直す」と明記。

また、「調剤基本料1」の薬局を対象とした地域支援体制加算1・2の要件について、▽処方箋の集中率が高い薬局の後発品調剤割合要件の見直し▽残薬への対応や減薬の提案にかかる実績の必須化─など、地域医療に貢献する薬局を重点的に支援する観点から抜本的に見直すとする改革の方向性を示した。

新創加算・累積額控除等
毎年薬価改定を完全実施

「薬価改定」は、薬剤使用量の増加や新規医薬品の保険収載により薬剤費総額が拡大傾向にある状況を踏まえ、イノベーションの適切な評価とともに、長期収載品等の自己負担のあり方を見直す必要があるとした。

他方、令和5年度の毎年薬価改定では、新薬創出等加算や不採算品再算定で臨時・特例的な対応を行う一方、新薬創出等加算の累積額控除および長期収載品に関する薬価算定ルールは適用されなかったと指摘。

毎年薬価改定が行われるなか、2年に1度しか適用されないルールがあるのは説明が困難として、7年度の薬価改定では「既収載品の算定ルールについて、すべて適用すべき」と明記し、毎年薬価改定の「完全実施」の必要性を訴えた。

このほか、「経営情報の見える化」は、医療機関・事業者のデータ収集を今後の処遇等に関わる施策を検討するための前提とした。医療機関の経営情報データベースで職種別の給与・人数の提出を義務化すべきと明記。診療報酬の加算の算定に当たって、職種別給与等の提出を要件化する必要があるとした。

「医療DX」は、マイナ保険証の利用促進へ、既に講じている医療機関、薬局に対する支援・インセンティブ措置とあわせ、患者の窓口負担の軽減策を検討するほか、医療機関のマイナ保険証利用率にも着目した評価を設定する方向性を示した。

介護制度の持続性確保へ
利用者負担を原則2割に

令和6年度の介護報酬改定に向けては、介護費用の総額が高齢化等の要因で毎年増加するなか、必要な介護サービスを提供しつつ、国民負担を軽減する観点から、合理化・適正化を進めていく必要があるとした。

そのうえで、▽担い手確保等の課題に対応しつつ、給付の適正化や保険制度の持続性確保のための改革を実施▽高齢化等に伴う事業者の収益増等が処遇改善につながる構造を構築▽全体としてメリハリをつけた改定とし、現役世代の保険料負担を最大限抑制─する方向性を示した。

介護保険給付費の伸びや保険料の負担増を極力抑える観点から、5年度経営実態調査の結果も踏まえつつ、収支差率の良好なサービスは報酬水準の適正化・効率化を徹底して図るべきと提言。

介護事業者の事務負担の軽減や利用者への分かりやすさの観点から、整理統合を図りつつ、質の高い介護サービスの推進に向け、自立度や要介護度の維持・改善など、アウトカム指標を重視した真に有効な加算へ重点化すべきとの考えを示した。

他方、制度の持続性確保の観点から、後期高齢者医療制度における2割負担の導入(所得上位30%)を踏まえ、現行で所得上位20%の介護保険料の利用者負担(2割負担)の拡大について、ただちに結論を出す必要があると明記。

さらに、利用者負担を原則2割とすることや、現役世代並み所得(3割)等の判断基準を見直すことも検討していくべきとの方向性を盛り込んだ。

このほか、介護老人保健施設・介護医療院・介護療養病床の多床室は、室料相当分が介護保険給付の基本サービス費に含まれたままとなっていると指摘。

居宅と施設の公平性を確保し、どの施設でも公平な居住費(室料+光熱水費)を求めていく観点から、給付対象の室料相当額について、基本サービス費などから除外する見直しを次期計画期間から行うべきとした。

改革工程のとりまとめへ
保険給付範囲見直し提言

改革工程のとりまとめに向けた取り組みとしては、①保険給付の効率的な提供②保険給付範囲のあり方の見直し③高齢化・人口減少下での負担の公平化─について提言した。

このうち、①は、かかりつけ医機能が発揮される制度整備に当たって、医療サービスの質の向上につながるようにすることが重要と強調。生活習慣病は医療機関によって診療密度等が大きく異なる等の指摘があることも踏まえ、診療実績に関する情報提供の強化を検討していく必要があるとした。

また、地域医療構想の実現の必要性、進捗の遅さを踏まえれば、2025年以降の確実な目標を見据えて、各医療機関で地域医療構想と整合的な対応を行うよう求めるなど、知事の権限強化に向けた法制的対応が必要と訴えた。

②は、▽高額な医薬品について費用対効果を見て保険対象とするか判断する▽医薬品の有用性が低いものは自己負担を増やす、あるいは、薬剤費の一定額までは自己負担とする─対応を採るべきとの考えを示した。

さらに、市販品と医療用医薬品とのバランス、リスクに応じた自己負担の観点等を踏まえ、OTC類似薬に関する薬剤の自己負担のあり方も検討すべきと明記。その際、保険外併用療養費制度の柔軟な活用・拡大を検討する対応も盛り込んだ。

③は、後期高齢者の患者負担は「現役並み」の所得水準を基準に、それ以上の所得があれば現役と同様、3割負担を求めているが、実際の判定基準は、一定の仮定を置いた世帯収入要件もあわせて設けていることから、「現役並み」以上の課税所得があっても必ずしも「現役並み」と評価されない仕組みとなっていると問題提起。

「現役並み所得者」の割合が実効負担率に影響することも踏まえ、「現役並み所得」の判定基準について、現役世代との公平性を図り、世帯収入要件の見直しを行うべきとした。

他方、年齢ではなく能力に応じた負担という考え方にもとづき、昨年10月に導入された一定所得以上の後期高齢者に対する2割負担をさらに進め、原則2割負担に見直すことを今後の課題に位置づけた。

このほか、高齢者の負担能力の判断に際し、預貯金等の金融資産は勘案されていないとして、医療保険・介護保険における負担のあり方全般についてマイナンバーを活用し、金融資産の保有状況も勘案して、負担能力を判定するための具体的な制度設計の検討を進めていくべきとの方向性を示した。

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