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健保ニュース 2023年9月中旬号

岡山連合会が倉敷市で時局講演会
自民党橋本氏 医療DX推進へ協力要請

健保連岡山連合会(八木智ベネッセグループ健保組合理事長)と健保連本部は2日、倉敷市内で時局講演会を共催し、岡山県および近隣地区から健保組合関係者33人が集まった。

講演会には自民党「国民皆保険を守る国会議員連盟」副幹事長の橋本岳衆院議員が参加し、「国民皆保険を守るため 改革の方向性と健保組合・健保連の役割」と題して講演。

橋本氏は、先の通常国会で成立した改正健康保険法等について、わが国が直面している少子化が進むなかで、国民皆保険制度の持続性を高めていくものだと評価した。

また、マイナンバーカードと健康保険証の一体化については、質の高い医療の実現と医療機関や保険者における効率的な医療システムの実現という目的のため、一体化を推進し来年秋に保険証の廃止を実現するとの考えを改めて示した。

時局講演会は、健保連の渉外活動に関する健保組合関係者の理解を深め、支援を求めることを目的に企画された。今回の岡山県を皮切りに、10月にかけて約10都道府県で開催する予定となっている。

橋本氏は、はじめに医療保険制度の財政構造を取り上げ、主に健保組合と協会けんぽで市町村国保の前期高齢者の医療費にかかる負担調整を行い、さらに後期高齢者の医療費については、健保組合と協会けんぽに市町村国保も加えて支えていると解説。全世代にわたり医療保険制度をカバーする仕組みだが、年齢が高くなれば医療費も高くなるため、若い世代が高齢者を支えるという構造ではあるものの、高齢者医療制度が発足して15年が過ぎ、健保組合をはじめ現役世代にとっては大変過重な負担になっていると指摘した。

そのうえで、先の通常国会で成立した改正健康保険法等の内容を取り上げ、①出産育児一時金の引き上げなどを柱にしたこども・子育て支援の拡充②後期高齢者の医療費を後期高齢者と現役世代で公平に支え合うための高齢者医療制度の見直し③都道府県ごとの医療費適正化計画の充実などを目的とした医療保険制度の基盤強化④かかりつけ医の役割を法定化し、医療・介護の経営情報の報告の義務化などを盛り込んだ医療・介護の連携機能および提供体制の基盤強化─をそれぞれ解説した。

このなかで①については、出産育児一時金の引き上げにかかる費用を、すべて若い世代に負担させるのは不均衡ではないかという観点から、後期高齢者医療制度にもその費用の一部を支援する仕組みを導入することになったと経緯を説明。高齢者も若い世代の出産費用を支えるという考え方は、若い人が高齢者を支えるという、これまでの社会保障の概念を変える画期的な取り組みだと述べた。

さらに今後、年末までに決定する少子化対策の財源については、若い世代に負担させたのでは意味がないとの立場から、高齢者に対し若い世代を支えるということに理解を求めていかなければならないと強調。出産費用については見える化に向けた検討を進め、その後に出産費用の保険適用についての議論も進めていくとの考えを示した。

②については、少子化が進む一方で、医療費が増えるなか、後期高齢者医療費への支援金の伸びと、後期高齢者の保険料の伸びの差が大きく広がっている現状を問題視しており、今回、支援金の伸びと同じように後期高齢者の保険料負担を増やすという仕組みを導入したと説明。合わせて、後期高齢者の年間の保険料負担の上限も引き上げる措置を導入したと解説した。

医療の質の維持と向上を
健保組合に期待

また橋本氏は、後期高齢者の負担の見直しと合わせて、導入されることになった前期高齢者の給付費に対する納付金への報酬水準による調整については、報酬の高い健保組合は負担が増えることになるが、様々な形で財政支援をするということに加え、これまでに問題があると指摘されてきた前期高齢者納付金の計算式については、単年度でなく複数年(3年)の平均で算定することとなったと説明し、健保組合に理解を求めた。

こうした内容を柱にした今回の制度改正は、わが国が直面している少子化の進展のなかで、国民皆保険制度の持続性を高めていくものと評価した。

マイナンバーカードと健康保険証の一体化については、本人の受診履歴にもとづく質の高い医療の実現と、医療機関や保険者における効率的な医療システムの実現という目的のため、一体化を推進し来年秋に保険証の廃止を実現するとの考えを改めて示した。

その一方で、資格情報の誤登録や登録までのタイムラグといった問題に対しては、資格取得届出の記載上の問題があり、それが起因し、事務作業に支障をきたしているとの見方を示す一方で、登録データの正確性と迅速化を確保するために、新規データの正確な登録の徹底や登録済みデータの点検を要請した。

橋本氏は講演の最後に、健保組合は国民皆保険の中心的な役割を担っていることに敬意を表すとともに、今後も加入者の健康を守りリスクをカバーする役割を果たすよう依頼した。公費の投入が他の制度と比べて少ないうえ、高齢者も支援していると評価。そのうえで、今後は医療の質の維持と向上といった観点での取り組みを期待した。

橋本氏と質疑応答
健保組合の窮状へ理解求める

開会あいさつに立った健保連岡山連合会の八木智会長は、少子高齢化に伴う高齢者拠出金の負担増で財政が苦しいことに加え、マイナンバーを巡るデータの点検作業や国への報告による業務量の増加、さらに、将来的には令和6年10月からの短時間労働者にかかる社会保険の適用拡大、出産費用の保険適用など、健保組合を取り巻く厳しい環境について訴えた。そのようななか、健康保険制度が国を支えるプラットフォームとして広く認知され、健保組合に求められる役割に理解が広がっていることを踏まえ、業務が効率化できるような仕組みの検討や、結果のフィードバックを求めた。

そのうえで、橋本氏に対し「この講演会で健保組合の現場の声を集め、国政に生かしていただきたい」と要望するとともに、「われわれ健保組合も、健保業務に一層邁進する」との決意を表明した。

橋本氏の講演後、実施された質疑応答では、ベネッセグループ健保組合の佐藤誠治常務理事が発言。橋本氏が講演の中で、加入者の健康を守り、リスクをカバーする役割を健保組合に要望したのに対し、「それはまさに、健保組合本来の業務だ」と同調。そのうえで、健保組合が高齢者医療への過重な拠出金負担に苦しみ、健保組合数もピーク時の1800余りから1400弱まで減少している現状を指摘し、国民皆保険制度を将来にわたり健全に維持するため、健保組合の窮状への問題認識と、その対応についての見解を質問した。

橋本氏は健保組合全体の財政構造について、高齢者医療への拠出金が支出の約半分を占めている現状に、「解散を検討する健保組合があってもおかしくない」との認識を示すとともに、その対応として、①ミクロでは健保組合での給付費の適正化、②マクロでは国民皆保険制度の価値や構造を国民にきちんと理解していただくこと─が重要であると指摘したうえで、②については、橋本氏自身も取り組んでいくとの意向を示した。

また、倉紡健保組合の小幡啓二常務理事は、「健保組合は医療DXの推進に賛成の立場であり、マイナンバーカードと健康保険証の一体化についても、医療・健康情報を活用し、患者・国民がより良い医療サービスを受けられる機会となることから、推進すべきだ」と発言。その一方で、来秋に予定される紙の健康保険証の廃止に向けて、健保組合に多大な負担が課せられている状況に理解を求めた。特に、資格確認書は▽医療情報の活用にもとづくより良い医療サービスの提供につながらない懸念があり、マイナ保険証の普及までの暫定的な取り組みとすべき▽資格確認書の交付にかかる財政支援が必要─と訴えた。

さらに、マイナ保険証の普及に向けて、そのメリットを正しく国民に伝えるため、国から医療関係者、経済界など、幅広い関係者に対して協力を求めていくべきと述べた。

これに対し、橋本氏は小幡常務理事の意見に理解を示し、「オンライン資格確認システムの整備を進め、患者が医療機関でマイナ保険証を使用できるようにしなければならない」と言及。「来秋に予定される健康保険証の廃止に向けて、健保組合に業務負荷がかかり申し訳ないが、医療DXの推進のためには必要な工程だ」とデータの点検、登録作業などへの理解を求めた。

閉会のあいさつに立った健保連の佐野雅宏副会長は、「現在の厚生労働行政は、橋本氏をはじめ、岡山県選出の議員が中心となり支えている」と謝意を表したうえで、「今後、健保組合・健保連が現役世代の負担軽減をめざして活動を強化するにあたり、様々な支援をお願いしたい」と要望した。

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