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健保ニュース 2023年5月下旬号

2040年の医療保険制度
多様な働き方に対応した制度を
健保連の調査研究報告書

健保連は17日、2040年の社会情勢を想定し、医療保険制度や健保組合のあり方などをまとめた報告書(医療保険制度の将来構想の検討のための調査研究Ⅰ)を発表した。報告書では、将来の人口変動による医療ニーズの変化に対応するため、プライマリ・ケア(かかりつけ医)機能を起点に医療・介護サービスの一体的な提供を提案したほか、増高する医療費に対し、フォーミュラリの制度化や費用対効果を踏まえた薬価制度への転換を求めている。また今後、これまでと異なる多様な働き方の労働者を包摂するため、被用者保険の適用拡大を推進するとともに、フリーランスなどが加入する新たな制度の創設を提案した。今後、健保連では報告書の内容をもとに、政策提言の取りまとめに向け検討を進める方針だ。

少子高齢化がピーク
「多死社会」が到来

健康保険法制定100年にあたり、健保連では令和3年から医療保障総合政策調査・研究基金事業として「医療保険制度の将来構想の検討のための調査研究Ⅰ(制度の変遷と将来構想の検討)」を開始した。調査研究にあたって、健保連の医療保障総合政策調査会の委員7名と有識者5名で構成する検討委員会を設置し、3年から5年にかけ9回にわたり検討を重ねてきた。

検討する前提として、2040年に想定される医療・医療保険制度を取り巻く社会情勢の変化を予測した。少子高齢化がピークとなり「多死社会」が到来し、医療ニーズの変化、その支え手となる人材の確保、医療の高度化や革新的な薬剤の登場などで、医療費はますます増大し、医療保険制度は深刻な財政危機に陥る可能性が高いと指摘。

就労環境については、生産年齢人口が大幅に減少し、労働力不足が深刻化する一方、健康寿命が延伸し元気な高齢者が増加し、社会参加や就業意欲が向上することで高齢者の就業率が上昇するなど就労者のイメージが変わると予想した。また女性の就労と共働き世帯が増加することで、被用者保険の被扶養者数は減少するとともに、非正規労働者の増加と働き方の多様化が進むと見込んだ。

さらに医療分野におけるデジタル環境が整備され、個人の医療・健康情報の活用が進展するとともに、医療現場では、デジタルトランスフォーメーション(DX)により生産性の向上と人材不足が改善されると予測した。健保組合でもマイナンバーの基盤を活用することで、加入者との双方向の迅速なコミュニケーションが可能になると見通している。

こうした2040年の社会情勢の変化に照らし、①医療ニーズの変化、医療費の増加にどのように対応するか②多様な働き方の包摂と制度の持続性をどう確保するか③その時、健保組合に求められる役割はなにか-の3つの視点から医療保険制度と健保組合の将来像を検討した。

かかりつけ医起点に
医療介護の一体的提供

「①医療ニーズの変化、医療費の増加にどのように対応するか」では、高齢化が進んだ2040年の医療ニーズに対応するため、プライマリ・ケア(かかりつけ医)機能を起点に、医療と介護を途切れることなく一体的に提供することとし、具体的には、地域包括ケアシステムを充実・発展させ、医療と介護の質の向上を図るほか、介護保険制度の第2号被保険者の範囲を段階的に74歳に引き上げることも提案した。

さらに、かかりつけ医を中心に病院、専門医、在宅医療、介護などで構成する地域連携グループを構築し、診療やケアを行う。かかりつけ医が保険者と患者の医療データを共有するとともに、アウトカムデータを蓄積し、医療の質の向上も図る。

増加する医療費への対応としては、フォーミュラリの制度化や、費用対効果を踏まえた薬価制度への転換を提言した。さらに選定療養のあり方を見直すなど、保険外併用療養費制度の活用を進めるとともに、都道府県別の医療費適正化努力を反映した医療費の調整などに、国と都道府県が連携し取り組むよう求めている。

一定の被扶養者は
保険料の賦課も

「②多様な働き方の包摂と制度の持続性をどう確保するか」では、増加する高齢者や女性の労働者のほか、フリーランス、ギグワーカーなど多様な働き方をする労働者を被用者保険が包摂し、被保険者としてふさわしい給付を保障する必要があるとの考えを示した。そのため、被用者保険の適用拡大を推進するとともに、新たな被用者類型の制度の創設などを提案した。

また多様な労働者への被用者保険への適用拡大を推進することにより、これまで被扶養者だった者が被保険者に移行すると見込まれる。これにより、世帯単位から個人単位での加入が進むため、ある一定の被扶養者は家族被保険者として保険料を賦課する。この応益的負担によって、権利と義務の関係が明確になり、保険給付や保健サービスなどの受益が確保される。就労する高齢者については、現役世代と同じ被用者保険に加入し保険料負担、自己負担割合、保険給付などについても、原則現役世代と同一とする。

このほか、制度の持続性の確保を図る観点から、「健保組合・協会けんぽは、加入者の多様化に対応した保険者機能を発揮するとともに、加入者数が減少する国保はセーフティーネットとしての役割を強化する」、「公費負担のあり方の見直しを進め、税の役割を強化し、それによって、社会連帯の強化を図る」、「金融資産を加味した自己負担割合・所得区分の設定を行うなど、マイナンバーを活用した所得・資産の把握を進め、負担と給付の公平性を確保する」などの政策をあげている。

健保組合は最適化の
サービスの提供を

「③その時、健保組合に求められる役割はなにか」では、健保組合は、高齢者や女性の労働者の増加など、働き方の多様化を踏まえた加入者の健康保持・増進の役割を果たすとの考えにもとづき、「情報プラットフォームの構築」、「ビッグデータの活用」に取り組むことで、加入者に個別最適化されたサービスの提供をめざす。

さらに加入者の利便性向上に加え、健保組合と加入者の迅速な双方向のコミュニケーションを図る観点から、マイナポータルを通じた各種申請の受付、情報提供、ヘルスリテラシーの向上などにも取り組みつつ、データ連携による事業主とのコラボヘルスを展開し、企業が実施する健康経営への支援強化を求めた。このほか、かかりつけ医などと特別な契約を行い、質が保証された保険診療・保健サービスや各種情報の提供を加入者に行うこととしている。

こうした新たな役割を担うため健保組合は、体制を強化するとともに、現行の適用・給付業務の標準化・効率化と事務の共同化を進め、業務を保健事業へシフトさせ、保険者機能をさらに強化する。人材面では、組合業務へのDX導入のため、デジタル技術に精通した人材を確保し、育成する。

このほか、新たな合併の選択肢、設立認可基準の見直しと存続基準の設定等についての検討を進めていくことをあげた。

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