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健保ニュース 2023年5月合併号

診療報酬改定時期の後ろ倒し等
中医協が次期改定論議に着手
松本理事 薬価は4月施行で対応を

中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)は4月26日、令和6年度の次期診療報酬改定に向けた第1ラウンドの議論を開始した。この日、議論に着手した「医療DX」は、「診療報酬改定DX」の対応方針に盛り込まれた改定の施行時期後ろ倒し等を論点に検討を進めた。健保連の松本真人理事は、「施行時期後ろ倒しは保険者の通常業務にも影響する」と言及し、丁寧な議論を要請。そのうえで、「4月に薬価改定を施行しなければ薬価制度の根幹を揺るがすことになる」と問題提起し、薬価のシステム改修は4月施行で対応するよう訴えた。

中医協総会は4月26日、保健・医療や介護関係者の業務・システム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進してより良質な医療やケアを受けられるようにする「医療DX」をテーマに、令和6年度の次期診療報酬改定の議論に着手した。

この日の会合では、厚生労働省が、▽医療DX推進の取り組み▽全国医療情報プラットフォーム▽電子カルテ情報の標準化▽診療報酬改定DX▽電子処方箋▽サイバーセキュリティ▽これまでの診療報酬上のDXにかかる評価─について説明。

政府は、「医療DX」に関する施策を推進するため、岸田文雄首相を本部長とする「医療DX推進本部」を設置し、今春に工程表を策定する方針を示している。

医療全般にわたる情報を共有する「全国医療情報プラットフォーム」は、対象とする情報が課題となる。

「電子カルテ情報の標準化」は、医療現場における有用性等の観点を踏まえ、3文書(診療情報提供書、退院時サマリー、健診結果報告書)、6情報(傷病名、アレルギー、感染症、薬剤禁忌、検査、処方)にかかる情報の共有にあたっての厚労省標準規格を決定し、まずは診療情報提供書・退院時サマリーに関して交換・共有の仕組みに取り組むこととしている。

「診療報酬改定DX」は、工程表にもとづき、▽共通算定モジュールの開発・運用▽標準様式のアプリ化とデータ連携▽共通算定マスタ・コードの整備と電子点数表の改善▽診療報酬改定施行時期の後ろ倒し等─を対応の柱として6年度から段階的な実現をめざす。

「電子処方箋」は、今年の1月26日から電子処方箋管理サービスの運用を開始し、4月16日時点で、3045施設(病院9、医科診療所224、歯科診療所9、薬局2803)で稼働中。4万9419施設(病院1175、医科診療所1万8919、歯科診療所1万890、薬局1万8435)が事前の導入手続き(利用申請)を行っている。

「医療DX」について、厚労省は、▽全国医療情報プラットフォームの構築や電子カルテ情報の標準化で、3文書6情報を医療の質向上のために活用すること▽診療報酬改定の施行時期後ろ倒しによる財政影響や改定結果の検証期間▽医療DXの取り組みを診療報酬で評価すること─などを論点として提示した。

3文書6情報を医療の質向上のために活用することについて、健保連の松本真人理事は、「メリットを最大化するため、最終的には全国の医師、医療機関が対象となる」との認識を示し、「その際に、かかりつけ医が連携の主要な役割を果たすハブになる」と主張。

かかりつけ医が日頃の診療で把握している患者の状態や情報を整理し、3文書6情報として、プラットフォームに入力・登録する必要があるとした。

これに対し、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「3文書6情報は、有用であるが、小規模な医療機関であるほど非常にハードルは高くなる」と指摘したうえで、「医療機関の負担が大きくなり、肝心の医療提供に支障が生じることは本末転倒だ」と強調した。

診療報酬改定の施行時期後ろ倒しについては、診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)が「薬価改定や薬価調査の時期や期間等にも影響する」と述べ、改定のあり方も含め慎重に検討を進めていくべきとの考えを示した。

松本理事は、「診療報酬改定の施行時期後ろ倒しは、医療機関やベンダーだけでなく、基幹業務システムの改修対応や予算編成対応など保険者の通常業務にも影響してくる」と言及し、丁寧な議論を要請。

そのうえで、「毎年9月に薬価調査を実施して翌年度に薬価改定を行うサイクルを前提とすれば、4月に薬価改定を施行しなければ薬価制度の根幹を揺るがすことになりかねない」と問題提起し、薬価のシステム改修は4月施行で対応するよう訴えた。

このほか、松本理事は、医療DXの取り組みを診療報酬で評価することについて、「医療資源や保険財政に限界があることを踏まえ、診療報酬だけでなく、補助金等の財源のあり方も含め、慎重に議論を進めていくべき」と指摘した。

長島委員は、「医療DXの普及や進歩により、医療従事者の業務負担を軽減する効果や、情報共有で地域医療連携が円滑化し、個々の医療機関の負担が軽減する効果が期待できる」と述べたうえで、「今後も医療DXを適切に評価していくべき」との見解を示した。

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