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健保ニュース 2023年3月上旬号

健保連第217回定時総会
宮永会長 健保組合の存在価値を向上
制度改革への活動成果に謝意

健保連は2月16日、東京・港区のベルサール汐留で第217回定時総会を開いた。冒頭あいさつした宮永俊一会長は、現役世代の負担軽減や世代間・内の負担バランス見直しなど、昨年末の医療保険制度改革が持続可能な社会保障制度の構築をめざす内容となったことに、「皆さんと思いを1つにして取り組んできた活動の成果」と謝意を表明。一方、▽拠出金や医療費の増加▽かかりつけ医の制度・環境整備▽負担と給付の見直しにかかる介護保険制度改革─など、「今後の課題も多く残されている」と指摘し、取り組みを進めていくための協力を求めた。健保組合の強みである保険者機能の成果を示すため、医療の質向上や医療費適正化に資する医療DXの取り組みを推進し、さらなる存在価値の向上を図っていくと強調。全世代型社会保障構築に向けたスタート年にあたり、「健保組合が世の中の変化に対応し、課題を解消しながら様々な取り組みを推し進めていく必要がある」との考えを示した。(宮永会長の発言要旨は次のとおり。)




総会の開催にあたり、一言あいさつ申し上げる。
 この冬はかつてないほど強い寒波に見舞われた。社会生活や経済活動に影響を受けた皆さんに心からお見舞い申し上げる。

そうしたなか、議員の皆さんにおかれては、年度末を控え大変お忙しいなかお集まりいただき、厚くお礼申し上げる。

本日は来賓として、公務ご多忙のなか、伊佐進一厚生労働副大臣にご臨席いただいており、後ほど、ごあいさつをいただくことになっている。

新型コロナウイルスの感染がわが国で広がり始めてから3年余りが過ぎた。この間、社会・経済活動に大きな影響を及ぼしてきた。

ようやく第8波も収まりつつあるなか、先月27日に政府は新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけについて、「5月8日に5類に移行する」ことを正式に決定した。

各健保組合におかれても、事業主とともにコロナ対応に当たられ、加入者の健康保持に苦労も多かったことと思う。

これからは、ウィズコロナにおける日常の社会生活や経済活動の活発化に向けて、加入者と企業を支える健保組合として、健康増進の取り組みを前に進めていく必要がある。

次に、世界を見ても、コロナ禍以外の問題もあり、そのなかで混迷した状況が続いている。特に、ロシアによるウクライナ侵攻は1年が過ぎ、未だその出口が見えない状況にある。わが国の安全保障のあり方についても、国会で様々な論議がなされている。

また、昨年からの世界的なインフレや利上げにより、エネルギーなど輸入品の価格上昇や、半導体などの供給にも支障が生じ、この影響も受け、一時は極端な円安状態となった。

現在の日本経済はこれまで長く続いてきたデフレの状態から物価高騰という局面に移行してきている。

政府は、物価上昇を上回る賃上げの実現をめざすことで、経済の好循環への転換を図る取り組みを進めている。

このように今までとは大きく異なる社会・経済の状況下で、われわれは持続可能で一定の成長を続けられる日本へ転換していかなければならない。

われわれが直接関係する社会保障政策に関して、政府は高齢者人口がピークを迎える2040年頃を視野に入れ、「全世代型社会保障」を構築していくための議論を進め、昨年末に「子ども・子育て支援の充実」、「医療・介護制度改革」、「働き方に中立な社会保障制度構築」の3本を柱とする取りまとめを行った。

また、来年の令和6年4月が、診療報酬と介護報酬の同時改定のタイミングであることに加え、新たな医療計画、医療費適正化計画、介護保険計画、さらには、特定健診・特定保健指導計画、データヘルス計画のスタートの年となる。

このことを含め「全世代型社会保障の構築」の動きのなかで、それぞれの計画の見直しの検討が昨年進められてきた。

健保連としては、「現役世代の負担軽減」「皆保険制度の維持・発展」を実現すべく、本部内の関係する委員会で議論・検討を行い、政府の審議会等では積極的に意見を申し上げてきた。

特に、皆さんには国会議員の先生に対する要請活動の協力をいただき、「国民皆保険制度を守る国会議員連盟」の先生を中心に積極的に実情を伝え、われわれの取り組みに強力な支援をいただいた。

その結果、昨年末に全世代型社会保障構築会議をはじめ、関係する審議会などで「取りまとめ」が行われ、これを踏まえたハイレベルの話し合いを経て、5年度の予算案が閣議決定された。間もなく、国会に法案が上程され、審議が始まる。

内容については、「現役世代の負担軽減」、「世代間・世代内の負担バランスの見直し」、「負担能力に応じた見直し」の観点から、持続可能な社会保障制度の構築をめざす内容となった。

具体的には、出産育児一時金の増額とともに、高齢者にも負担してもらう形となったことや、後期高齢者の保険料負担率も見直すことになった。また、被用者保険者間の格差是正ということから、6年度から前期高齢者納付金の一部に報酬に応じた調整が導入される。

これにより、健保組合への支援として、高齢者医療運営円滑化等補助金の拡充に加え、財政支援の制度化もなされることとなった。

改めて、皆さんと思いを1つにして取り組んできたことの成果であると、この場を借りて感謝申し上げる。

また、本日来賓でお越しいただいている厚生労働省には、われわれの厳しい状況を理解いただき、多大なる尽力を賜ったことに心より感謝を申し上げる。

このように様々な努力と尽力をいただいているが、未だにわれわれ健保組合の厳しい状況は続いており、多くの課題が残っている。

目の前の5年度をみても、拠出金の増加、また、コロナをはじめとした医療費の増加が予想され、大変厳しい財政状況となることが見込まれている。

また、昨年11月に「かかりつけ医」の制度・環境の整備について健保連としての議論の整理を発表したが、医療提供体制の改革に関しては、「必要な時に必要な医療を受けられるフリーアクセス」という考えのもと、地域の医療機関が連携して、「かかりつけ医機能の発揮」を促していくとの方向性が示され、受診者である患者・国民の目線で歩み出したところだ。

「最終的なゴールではない」との認識のもと、さらなる取り組みを進めていかなければならない。

介護保険制度改革については、一定以上の所得のある利用者負担の見直しなど負担と給付の見直しにかかる結論には未だ至っていない状況にある。

持続可能な社会保障制度の構築と現役世代の負担軽減の観点から、低所得者には配慮しつつ、より踏み込んだ見直しを行っていくように求めていかなければならない。

このように、今後の課題も多く残されているので、引き続き、皆さんの協力を賜るよう、何卒宜しくお願い申し上げる。

また、健保組合に関して言えば、医療DXの動きが加速してきている。
 オンライン資格確認の導入については、昨年8月に「この4月から原則義務化」が決定された。しかし、残念ながら、機器の設置遅れのため、経過措置がとられることとなった。

また、先月26日より電子処方箋が全国でスタートした。われわれ健保組合にとっては、医療の質の向上と医療費適正化につながることから大きな期待感を持っていたが、全国でたった150か所ほどでしか利用できないという極めて残念な形でのスタートとなった。

これらは、医療DXの基盤につながるものでもあるため、引き続き、しっかりとした対応を求めていきたい。

さらに、政府は来年秋にマイナンバーカードと保険証の一体化を行い、保険証を廃止するという方針を打ち出した。

健保連としても、この施策のメリットを認識しつつ、各健保組合にとって期待と、一方で不安の多い施策でもあることから、皆さんと情報共有しながら対応を進めていく。

6年からは、新たな特定健診・特定保健指導計画やデータヘルス計画も始まり、アウトカムという取り組みの観点が加わることになる。

われわれ健保組合の強みである保険者機能の成果も示していかなければならない。
 医療DX化は保健事業の取り組みや健保事務の効率化に貢献するだけでなく、医療の質の向上や医療費適正化の推進のためにも、積極的に進めていかなければならない。

当面、過渡期ということで課題もあろうかと思うが、しっかりと加入者や事業主の皆さんにそのメリットを伝え、実際にメリットを実感していただき、この取り組みを着実に広げていくことで、健保組合としての本来の存在価値のさらなる向上を図っていく。

今年は、健保連が発足して80年という節目の年でもあり、全世代型の社会保障の構築に向けたスタートの年でもある。

われわれ健保組合が世の中の変化にしっかり対応し、課題を解消しながら、様々な取り組みを推し進めていかなければならない。

皆さんとともに将来につながる皆保険制度を作っていくため、私も先頭に立ってこの取り組みを進めていく。

本日は、5年度の事業計画や予算案を中心に審議いただく。議員各位の活発な審議をお願いして、私の冒頭のあいさつとする。

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