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健保ニュース 2023年2月中旬号

革新的医薬品の迅速な導入へ
有識者検討会 長期収載品のあり方を議論

厚生労働省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」(座長・遠藤久夫学習院大学経済学部教授)は1月26日、会合を開き、革新的医薬品の迅速な導入について議論した。

この日の会合では、厚労省が産業構造やビジネスモデルを起因とする課題として、先発企業が長期収載品(後発医薬品のある先発医薬品)で収益を得る構造から脱却し、新薬の研究開発への再投資を促進するための方策を論点として提示した。

先発企業は、特許期間中における新薬の売上で研究開発投資を回収し、再投資することで新たな革新的新薬の創出を行うとともに、後発品上市後、自らは市場から撤退し、後発品企業に安定供給等の役割を譲ることがめざすべき産業構造として、中医協で議論されてきた。

これに対し、現状では、取引終了および薬剤費における長期収載品の割合は20%弱に低下しつつあるも、未だに薬剤費約10.1兆円のうち1.8兆円を占めている。

さらに、長期収載品を扱う全企業(120社)のうち、売上全体に対する長期収載品の売上比率が50%を超える企業は25社で、2割を超す。

また、新薬創出等加算品目を取り扱う企業(97社)を見ると、売上全体に対する長期収載品の売上比率が50%を超える企業(10社)も1割存在する。

長期収載品を国際比較すると、数量シェアは、▽アメリカ(4%)▽ドイツ(10%)▽イギリス(19%)▽フランス(22%)▽日本(29%)─、金額シェアは、▽イギリス(38%)▽ドイツ(41%)▽フランス(44%)▽日本(59%)▽アメリカ(60%)─で、いずれも日本が高い傾向にある。

他方、後発品の数量シェアの現状をみると、目標の80%に近づきつつあるものの、近年の伸びは鈍化。金額シェアも2015年(28%)から2021年(41%)にかけ上昇傾向にあるものの、さらなる改善の余地がある。

厚労省は、長期収載品からのビジネスモデル転換を促す取り組みについて、長期収載品が一定程度のシェアを占めていることや、近年の後発品への置換えに要する期間が短くなっていることを踏まえ、長期収載品から後発品への置換えをどのように進めていくかを論点として提示。

併せて、患者の選択で長期収載品が使用されているもの等があるなかで、長期収載品の医療上の必要性の分析と課題整理を論点とした。

菅原琢磨構成員(法政大学経済学部教授)は、「他国に比べ長期収載品の数量・金額シェアが高い現状をどう考えるか」と問題提起し、「長期収載品だけに頼る状況がどの程度継続しているのか、新薬メーカーがピーク時売り上げでどの程度投資を回収できているかが見えると解決の糸口となる」と指摘した。

坂巻弘之構成員(神奈川県立保健福祉大学大学院教授)は、「長期収載品に依存せず、常に新薬を創出し利益を得て、次の新薬の開発に投資していくというビジネスモデルに転換できない会社は撤退しても仕方ない」と言及した。

香取照幸構成員(上智大学総合人間学部社会福祉学科教授)は、「後発品の使用促進策をこのまま続けるのかを考えるべき段階にある」と主張したうえで、「数量シェアを80%以上とする目標を達成するために設定してきた診療報酬上の各種加算には役割を終えたものもある」と問題提起し、見直しも視野に入れた対応を求めた。

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